ロシア!ウクライナに侵攻! ~烏賀陽弘道『世界標準の戦争と平和』
日本の核武装に対するリスク警告
- 日本が核武装するとアメリカは安保条約を破棄する。究極の破壊力である核兵器を持つ国をアメリカ国民の税金で守ってやる必要はない。
- 日本の核武装はアメリカへの潜在的攻撃力とアメリカは見なす。日本経済の生命線であるシーレーン防衛についてもアメリカは手を引く。すると日本は海軍を増強しなければならなくなる。世界に伸びた日本の貿易路を自国で防衛するにはアメリカ並みの8〜10の空母を持つ艦隊が必要になる。
- 日本の核武装は核不拡散条約違反である。
- 同様に、第二次世界大戦後に構築された国際秩序の破壊、挑戦である。
- 自動的にアメリカの勢力圏からも離脱することになる。
- 国連レベルの経済制裁も免れない。ゆえに日本の国際的孤立化は免れない。
- 第二次世界大戦後、日本は中ソというランドパワーとアメリカというシーパワーの大国に挟まれたバッファーゾーンとして軍事的空白のまま置かれていた秩序が破壊される。
- ゆえに対中国で核武装したつもりが、自動的にロシアも敵に回す。2方面敵対という戦略上やってはならない必敗パターン再び。
- 日本の核武装はアメリカへの潜在的攻撃力とみなされるので、アメリカも日本に敵対的または警戒的になる。つまり日本は中ソ米国を敵に回すことになる。味方は誰もいない。三方面敵対かつ友好国なし、は外交的破滅である。1930年代の大日本帝国と同じパターン。
- ゆえに、日本の核武装は得るものより失うものがはるかに上回る。得るものがあるとしても、日本の政策当局者と世論の極論部分の虚栄心を満たす程度である。そんな馬鹿げたもののために戦後80年近くかけて築き上げた国際的信用を捨てるのは愚策の極みである。
- 〔捕捉1〕日本が核武装すると、IAEAの核査察体制からも脱退することになる。 すると福島第一原発事故の汚染水の海洋投棄や汚染土壌に関して、IAEAが安全を保障するというこれまでの仕組みは使えなくなる。
- 〔捕捉2〕虚栄心のために愚策を国家が取ることは、歴史上ないことはない。例えば「日中戦争に勝てない」と言えなくなった大日本帝国がよりによって石油供給国であるアメリカを攻撃して2正面戦争を始めたというのは歴史上類例のない愚策です。