「参議院」って何? を生み出す背景
Photo & Video by : 毎日新聞
『 参院選 私が投票に行かない理由 』
先ずは、上に紹介した動画を虚心坦懐に見てください。
これは毎日新聞がYouTubeに投稿した動画、「参議院 私が投票に行かない理由」です。
参院選を目前に「7/21は何の日ですか?」というインタビューから始まりますが、冒頭に登場した30歳のネイリストの女性は、驚いたことに参院選どころか「参議院」の存在すら知らないと言うのです。
今回の参院選では、投票率が「48.8%」と低迷し、24年ぶりに50%を割り込んでしまいました。
――国政選挙でありながら、国民の半分も投票に行かないのが、この国の現実。
先ほどのネイリストの女性が参議院すら知らない点については、個人的な資質もあるとはいえ、「選挙に行っても何も変わらない」「選挙に出る人に期待できない」「私たちの声を聞き入れてくれるシステムになっていない」といった思いを、正直に告白してくれています。
彼女は夢なども持てず、結婚にもついても何の期待もしていないし、子供についても諦めています。全体に漂う絶望感はまさに現代に生きる私たちを体現しているようで、そういった面で彼女は現代人の典型とも言えるのではないでしょうか?
そして、「参議院をしらない」ことを恥ずかしいとも思わず、カメラの前で何の臆面もなく言えてしまう程に、政治に対する 失望感・不信感・無力感は根強く、そのような人間を数多く生み出しているだろうという点において、日本の ”衰退ぶり” を見ているような想いに捉われます。
左派ポピュリズムとしての「れいわ新選組」
今回の参院選は投票率が低かったとはいえ、組織票に秀でている公明党、共産党、そして自民党といった政党が躍進したわけではありません。
特にポイントとなるのは、自民党が前回と比較し10議席も減らし、単独過半数を失ってしまったことです。
では、どこに票が向かったかと言えば「れいわ新選組」そして「NHKから国民を守る党(N国)」と言えましょう。この2つの政治団体だけで300万以上の票を獲得し、共に政党要件を満たしました。
その一方で、当初の予想とは裏腹に、立憲民主党が思いのほか伸びなかったことから、政治に対するフラストレーションは「れいわ」と「N国」に向かったものと考えられます。
選挙前に発売された『Newsweek 日本版 2019.7.23号』には、ノンフィクションライター・石戸諭(いしど さとる)氏による「山本太郎現象とこぼれ落ちた人々」が掲載されました。
この記事では、れいわ新選組が主張する「反緊縮」「反TPP」「反グローバリズム」といった人権擁護的な政策に着目し、代表の山本太郎氏は一人の運動家から「左派ポピュリズム」を体現する政治家へと成長したと評価しています。
山本太郎氏の言うところの「政治は面白くないといけない」というスローガンは、永田町エリートが独占する既得権益への挑戦といった「物語」であり、立憲民主党が今回掲げた「令和デモクラシーの実現」といったイデオロギー的な主張とは全く異なるものとしています。
つまり、立憲民主党もエリート層やリベラル層に受けの良い言葉を並べ、結局のところ人々の胸に突き刺さることはなかったわけで、反面、「左派ポピュリズム」の典型的な主張を掲げたれいわ新選組は躍進したということです。
このことは、今後の政治を占う上で極めて重要です。
山本太郎氏率いるれいわ新選組が提示したのは、二項対立の図式です。つまり、これまで日本を牛耳ってきた「エリート層、富裕層」に対する、「持たざる者、不安を抱える者」たちです。
このような「こぼれ落ちた者」たちの代弁者として、今回、れいわ新選組が市民権を得たわけなのです。そして、今後益々日本が低迷し衰退してゆく中で、れいわ新選組は新しい政治の潮流を生み出すトップランナーとして、さらに成長を続けるものと思われます。