Introduction:3月22日早朝、クロアチアでは約140年ぶりとなる大地震が発生し、半壊した建物の瓦礫で車両が破壊されるなど、首都ザクレブの市民は一時パニックに陥りました。
クロアチアでは現在、250名以上の新型コロナウイルスの感染者が確認されおり、外出の制限も要請されていた中での惨事でした。
もし、同様なことが地震大国である日本で起きたならどうでしょう?
クルーズ船での感染も含め1700名以上もの感染者を出している中で、日本人は果たして冷静に行動することができるでしょうか?
そして、原発の安全性は保たれるでしょうか?
実は、クロアチアの地震で危機に晒された原発がある模様です。
クロアチアで140年ぶりの大地震
3月22日の早朝6時24分、震源地に近いクロアチアの首都ザクレブでは、マグニチュード「5.5」の地震が発生。続く30分後にはマグニチュード「5.0」の地震といったように、立て続けに2度の大地震に見舞われ、22日だけでも合わせて5回もの揺れが生じました。そして、その後も余震は続き、23日の月曜日中に観測された地震は実に「74回」に達しています。
この140年ぶりとなった大地震では、ザクレブの複数の建物が半壊し、冒頭の画像にもあるように多くの車両が崩れ落ちた瓦礫によって破壊され、また数か所の地区で停電が見られます。
この地震では合計27名のが負傷し、22日に瓦礫の下敷きとなり重傷を負った15歳の少女の死亡が発表されていますが、全体としての被害は幸いにして限定的と思われます。
ただし、問題は人々の心理状態です。
クロアチアでは新型コロナウイルスの感染者が 3/24 時点で361名、1名の死者が確認されています。国内では不要不急の外出は控える要請が出ていた中での大地震です。政府はこれまでの方針を一転し「人々が密集しないように非難」を呼びかけましたが、この相反する政府方針に対し市民は一時パニック状態に陥りました。
日本については、東日本大震災の際、避難の模様や避難所での整然とした人々の立ち振る舞いに世界から賞賛の声が上がりましたが、世界中で新型コロナウイルスが拡散される中、日本で大地震が起きた場合、果たして日本人は冷静に行動することができるでしょうか?
メルトダウンが懸念された老朽原発
クロアチアで起こった大地震の被害はこれだけには留まっておりません。実は、クロアチアの首都ザクレブ近郊にある原子力発電所が、一時メルトダウンの可能性を指摘されていたことが分かりました。
問題となった原発は、クロアチアの隣国であるスロベニアの「クルスコ原子力発電所」──この原発はザクレブからわずか50㎞に位置しており、現在 ”ヨーロッパで最も手入れの行き届いていない原発” の一つと見なされていることから、地震の影響が懸念されました。
クルスコ原子力発電所はスロベニアのエネルギー企業「 Gen Energija 社」とクロアチアの国営電力企業「 Hrvatska Elektroprivreda 社」との50対50の合弁事業によって建設された、スロベニアでは唯一の原発です。
この原発は、加圧水型原子炉として1975年に建設が開始され、商業運転が始まったのは1983年のこと。1機の原子炉でスロベニアの総電力量の40%を担っている、言わば電力エネルギーの要です。また、総電力の20%はクロアチアへ送電されています。
上述したように ”ヨーロッパで最も手入れの行き届いていない原発” と揶揄されているクルスコ原子力発電所は、当初は2023年に閉鎖される予定でしたが、結局2043年まで ”寿命” を延長することが昨年決定されました。
この辺の強引な原発の運用については日本と大差ないことが分かりますが、さらに驚くべきは、スロベニアのマルジャン・サレック首相はエネルギー需要の増加に対応するためとして、クルスコ原子力発電所に第2原子炉を建設する計画を表明していることです。
今回、クロアチアを襲った地震後の総点検により、クルスコ原子力発電所ではメルトダウンなどの被害がなかったことが分かりましたが、潜在的なリスクは世界中に存在していることをあらためて気づかせてくれました。
それは、世界的なパンデミックの最中に、地震被害、原発事故といったように複合的に災害や事故が折り重なった場合、私たちはどのように行動すべきかという点についてです。そして、そのリスクが最も高いのは、私たちが暮らすこの「日本」なのです。