白坂和哉 デイ ウォッチ

G20開催 日中関係は ”かりそめの蜜月”

Introduction:6月28日から2日間の日程で「G20」(主要20カ国・地域首脳会議)が始まります。

1日目は世界経済や各国の貿易について、2日は環境問題やエネルギー問題についての話し合いが行われる予定です。

日本が初めて議長国を務める今回のG20。
「外交の安倍」の集大成とも言える会議を開催するに当たっては、会場となる大阪市周辺の小中高校は臨時休校にするなど、異様な厳戒態勢が敷かれる中、果てしてどのような成果を出せるのでしょうか。

現在完了形の日本、現在進行形の中国

安倍首相は27日夜、来日した中国の習近平 国家主席と会談し、来年の春ごろ(桜が咲く頃)に習氏を国賓として日本に招待することを提案。習近平は前向きに検討するとしました。

このことを受け、安倍首相は「日中関係は完全に正常な基軸に戻った」と表明し、一方、習近平は「中日関係は新しい歴史的スタートラインに立っている」と自身の考えを明らかにしました。

ちなみに、安倍首相はこの「完全」という言葉が大好きで、この言葉を使うとき、彼は必ず ”嘘をつく” ことはだけ忘れてはなりません。原発事故に対して、完全に制御されている(アンダーコントロール)発言などはその典型です。

よって、今回表明された日中関係についても、正常な状態になど戻ってはおりません。それは日中両首脳の言葉の捉え方からも明らかです。

安倍首相としては、日中関係がハッピーエンドで幕引きを図りたいのでしょうが、これは日本人の極めて悪い癖です。
従軍慰安婦問題にしても、徴用工の問題にしてもそうですが、事の真偽を掘り下げる以前にさっさと終わらせてしまいたいのです。

ところが、習近平率いる中国はそうはいきません。安倍首相が何と言おうとも、日中関係は現在進行形の問題として、今も ”ここに” 存在しているのです。
日中関係は何も解決しておりません。

安倍首相は東アジア戦略を考えているのか?

それでも習近平は、来春の国賓としての来日の可能性に、一定の含みを持たせています。日本の出方次第では来日しますよと、シグナルを送っています。

中国としても実質的な国営企業であるファーウェイの、アメリカによる世界的な包囲網に苦しんでいるのは確かで、できれば日本を取り込みたいと考えています。それが、今回の比較的柔軟な中国側の態度に現れています。

本来であれば、これは日本にとっての大きなチャンスになるはずです。
アメリカのトランプ大統領はG20開催前に、おそらく日本に揺さぶりをかけるのが目的だろうと考えられますが、日米同盟に不満を漏らしたのは周知の事実です。

そのような中、今後は習近平の中国とどのような関係を構築してゆくかは決定的に重要となります。
つまり、アメリカが日米同盟を盾に揺さぶりをかけてくるならば、日本は中国との関係を深めることで、アメリカに対して対抗することも十分可能ですし、普通の国家であればこのくらいの駆け引きは必須条件となります。

安倍首相は ”トランペット” だ!

ところが、日本はいつのまにか対米従属が国是となっており、特に安倍首相はまるでトランプ大統領の ”ペット” のように立ち振る舞っている始末です。そのような安倍首相を「トランペット」と呼称することにします。

日本はアメリカ側につく必要もなければ、中国につく必要もありません。
今や2大大国となった米中の狭間で、狡猾に立ち回れば良いのです。両国の怒りを買うでしょうが望むところです。場合によっては、イスラエルのような国を参考にすれば良いかもしれません。

その意味では、今回のG20は米中経済戦争が起こっている最中の、興味深い会合となっても不思議ではありません。もっとも、アメリカなどは中国への経済制裁を年末まで ”休戦” しようか、といった声も上がっていることもあり、事の帰趨は予想だにしません。

アメリカも中国も、流動的な国際政治のパワーバランスの中でしのぎを削っています。

G20の議長を務める安倍首相が、この渦の中でせめて溺れないよう、我々は見守るしかありません。

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