白坂和哉デイウォッチ

『GO TO トラベル』は21世紀のインパール作戦だ!/ #GO TO インパール

Introduction:これはまるで戦時中に3万人もの日本兵が亡くなった不毛な消耗戦『インパール作戦』そのもじゃないですか!?

このご時世、一体どれほどの人がリスクを冒してまで「旅行」なんぞに行くというのでしょうか?

安倍政権は7月10日、観光支援策『GO TO トラベル』の前倒しを発表し、説明に立った赤羽国土交通相は「夏休みが始まる前にキャンペーンを始めて欲しい」との旅行業界の声に応えたといいます。

これは、さながら21世紀の『インパール作戦』──この日本で、また悲劇が繰り返されようとしています。

「インパール作戦」とは何か?

「インパール作戦」とは、第二次世界大戦中の1944年、ビルマ戦線において帝国陸軍により策定された、日本史上屈指の悲劇的な消耗戦です。曖昧な意思決定のもと、著しく合理性と実効性を欠いたこの作戦により、これに参加した3万人以上の日本兵が命を落とし「史上最悪の作戦」とも呼ばれています。

インパール作戦で行軍する日本兵
Photo by :文春オンライン『「愚将」牟田口廉也 “不適材不適所”を生んだ組織の病とは何か?』

1944年3月に決行されたインパール作戦では、ビルマ(現在のミャンマー)を出発した部隊は幅600mもの「チンドウィン川」を渡河し、2000m級の山々が連なる「アラカン山系」を超え、ビルマからインドにまたがるイギリスの拠点「インパール」を攻略することを想定していました。

道もない山岳地帯とジャングル、そして大河を渡る工程は実に約470㎞。現地の雨季を避けるため(降水量は世界一と言われています)、それをわずか3週間で踏破し、敵基地を陥落させなくてはなりませんでした。兵士たちは3週間分だけの食料を与えられ、それ以外の補給は一切なかったのです。

これを指揮していたのは、後に悪名を刻むことになる牟田口廉也(むたぐち れんや)中将です。彼の元には作戦の中止を求める他の部隊長らの声が相次ぎ届けられましたが、彼はこれを無視します。そして、苦戦の原因は現場の指揮官にあるとして、師団長を次々に更迭。部下の異論を封殺するのです。ところが同時に、指揮官の意向を忖度する官僚的士官も台頭するなど、戦局はまさに修羅場と化していきます。

当初3週間の想定が、実際の戦闘は4カ月にも及びました。しかし、果たしてこれらは戦闘と呼べるものだったのか?
確かに、途中イギリス軍の大規模攻撃もありましたが、雨季で降りしきる豪雨の中、亡くなった3万以上に及ぶ日本兵の多くは、飢えと病気によるものだったことが後になって分かります。まさに不毛な消耗戦でした。

まさに21世紀の「インパール作戦」

7月11日の全国の感染状況
Photo by :NHKニュース7(2020年7月11日)

「インパール作戦」は当時の戦争の縮図そのものです。
そして、これは同時に現代日本の縮図そのものであることにも気づきます。

無能な指揮官(安倍首相)のもと、彼を忖度する者が何ら有効性のない政策を策定し、それを推し進め(官僚や赤羽大臣)、国民は新型コロナ渦中のなか無謀ともいえる「旅行」に駆り立てられる(GO TO トラベル)

今回の『GO TO トラベル』など、まさに21世紀の「インパール作戦」そのものではないでしょうか?

東京では連日100人以上、さらに200人以上のコロナの感染者が判明しており、他の都市部でも同様に感染者の増加傾向が見られます。
(上の写真)

確かに、新型コロナの影響により、全国各地では大小のホテルや旅館の倒産が相次ぐなど、観光業が苦境に立たされていることは分かります。しかし、だからといって一体どれほどの人が、この状況の中で「旅行」に行きたいと思うでしょうか?

安倍政権は7月10日、『GO TO キャンペーン』の前倒しの実施を発表しました。説明に立った赤羽国土交通相は「夏休みが始まる前にキャンペーンを始めて欲しい」といった旅行業界の声に応えたと言いますが、これが経済対策になるとは到底思えません。このキャンペーンは7月22日から始まるといいます。

ちなみに『GO TO トラベル』とは、『GO TO キャンペーン』の中で観光分野の支援策です。国内旅行を対象とし、旅行代金35%の割引に土産物店などで使える15%分のクーポン券とを合わせ、合計50%分を政府が支給するといった計画です。

この計画に費やされる予算は1兆3500億円。そのうち事務委託費が2300億円とも言われ、九州熊本を中心とした豪雨被害を尻目に前倒しの実施を決行。本来はコロナ対策、災害復興に使うべき予算と考えますが、一度走ったら止まらなくなるのは、まさに ”インパール” そのもの。

さらには、クーポン券の発行が22日の開始に間に合わず、旅行代金35%割引が先行して実施される予定であるとか──もう既に ”インパール” の臭いがプンプン漂っているのです。

赤羽一嘉 国土交通大臣はとんだ食わせ者

『GO TO トラベル』で新たに登場した赤羽一嘉(あかば かずよし)国土交通大臣ですが、これがとんだ ”食わせ者” のようです。

「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」が3月13日に成立し、翌14日には安倍首相が記者会見を開き「現状は依然として警戒を緩めることはできない」として、国民に対し ”三密” の徹底を要請しました。
ところが、その翌日の3月15日。こともあろうに昭恵夫人が大分県宇佐市にある「宇佐神社」へ観光旅行に行っていたことが明らかになり、日本中の怒りを買いました。

この当時に起きていたことを、おさらいしてみましょう。

このようにタレントがの志村けんさんが亡くなり、東京都では感染爆発の重大局面だとして外出の自粛も要請され、関西地方では県をまたぐ往来の自粛要請も出ておりました。

そんな最中の4月4日、東京都では過去最高の118人もの感染者が判明したのですが、当の赤羽国土交通相は何をしていたのかと言えば、「関西の奥座敷」と呼ばれる有馬温泉の高級旅館『銀水荘 兆楽』(神戸市北区)で、地元の ”観光業者” と会合をしていたというのです。赤羽国土交通相はその前日にも地元支援者と飲み会を行っており、これらは公務の出張として費用は公費で賄われています。

もちろん、この ”出張” については不要不急であるとして省内では止める声もありましたが、赤羽大臣はそれを無視して決行しています。

そんな赤羽国土交通相は、省内での評判がどうにも芳しくありません。平気で国交省幹部を休日出勤させたり、国会でも無責任発言をしたりで、省内では『アカバカ』と呼ばれているようです。

さて、この ”アカバカ” こと赤羽国土交通相。4月の時点から地元観光業者と『GO TO トラベル』をめぐり何やら話はしていた模様で、この辺を突けば怪しげな金の流れが見えてくるかもしれません。

「21世紀のインパール作戦」こと『GO TO トラベル』
これに乗せられる国民はごく一部でしょうが、キャンペーンの行方は「金のこと」も含め、けだし見物ではあります。

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