白坂和哉デイウォッチ

沖縄の感染者159人の衝撃!そして、『沖縄戦』

Introduction:8月9日、沖縄では「159人」もの新型コロナの感染者が確認され、大きな衝撃を私たちに与えました。

これを東京都に例えるならば、1000人以上もの感染者が判明したことになります。

これについては様々な原因が考えられますが、『GO TO トラベル』や米軍関係者による独立記念日にちなんだ ”乱痴気騒ぎ” が挙げられるでしょう。しかし、そもそも沖縄県という土地は昔も今も差別や犠牲の構造の中に追いやられている、ということが問題の本質となります。

戦後75年。日本は未だにこの問題を克服することができないでいます。

7月24日頃から感染が爆発した

出典:沖縄県HP「感染症関連情報」

8月9日、沖縄県ではこれまで最も多い「159人」が新型コロナに感染したことが分かりました。これまでは8月7日の100人が最高でしたが、わずか2日間で大きく記録を塗り替えたことになります。

これで沖縄県は新型コロナの感染者累計が1000人を超え、「1127人」となりました。また、沖縄米軍からは新たに4名の感染が報告され、これまでに確認された米軍関係者の感染は「314人」となっています。

この沖縄県の「159人」というのは極めて大きな数値と言わざるを得ません。

沖縄県の人口は「145万7千人」──これは、ちょうど東京都の「10分の1」の人口規模です。沖縄県と東京都の面積はほぼ同じで、沖縄〔約2280㎢〕東京〔約2190㎢〕となっていますが、人口密度では最も密集した沖縄県那覇市の〔約8050人〕に対し、東京23区は〔約15400人〕といったように倍の数値です。

つまり、沖縄県は同じ土地面積に東京都の10分の1の人口しかおらず、人口密度が最も高い地域であっても東京23区の半分であるにも関わらず、東京都の半分に迫る勢いで感染爆発が起きているということ(8/9 の東京都の感染者は331人)
仮にこれを東京都になぞらえば、1000人規模の感染者が東京都で判明したことになります。

上のグラフでも分かるように、沖縄県では7月24日頃から感染者が急増していることが分かります。さて、この時期に何が起きたのでしょうか?

沖縄県は『GO TO トラベル』の犠牲になった!

沖縄県は、悪名高い『GO TO トラベル』のあおりを食らった最たる地域になったのではないでしょうか?

安倍政権が『GO TO トラベル』の前倒しを騒ぎ出したのが7月10日のことです。この不毛なキャンペーンは、その実施基準や東京都を除外する・しないで揉めに揉めましたが、見切り発車の形で7月22日に開始されてしまいました。

◆ 関連記事 ◆
  『『GO TO トラベル』は21世紀のインパール作戦だ!/ #GO TO インパール』

新型コロナウイルスの潜伏期間は長くて14日間、平均期間は5~6日間であるとWHOは報告しています。

『GO TO トラベル』が俎上に載せられた7月においても、日本国内では東京都を中心にそれなり多くの感染者が報告されていましたが(7/11時点で東京都206人、全国378人)、この『GO TO トラベル』というフレーズが周知されたことで、人々の旅行マインドに火をつけてしまったことは否めません。

沖縄県では8月1日~15日まで、県独自の「緊急事態宣言」を発令し沖縄本島全域で不要不急の外出を自粛するよう要請しています。しかし、『GO TO トラベル』が騒がれてから7月末日までの間にそれなりの数の旅行者が訪れ、結果的に現在の感染爆発に至る原因となったのではないでしょうか?

クラスターを生み出した ”疑惑” のパーティー!

さらに、『GO TO トラベル』以上に、感染爆発の要因になったと考えられるイベントがあります。──それは、7月4日に行われたアメリカ独立記念日のパーティーです。

例えば、うるま市の公演で開かれたパーティーでは米軍関係者を初め700人以上が集まり、満員電車のように密集した中で肩を組み合い大騒ぎしている模様が報道されています。もちろん多くの日本人が参加しています。

◆ 出典記事 ◆
 『疑惑のパーティー 主催者直撃 米軍クラスターの“震源”か』

 ~2020.7.16 FNNプライムオンライン~

また、沖縄県北谷町美浜のとあるクラブでも同様のパーティーが開かれ、三密の中でマスクもせず、男女入り乱れての乱痴気騒ぎが行われていたことが分かっています。ここでも多くの日本人が参加しています。

◆ 出典記事 ◆
 『在日米軍、独立記念日に「コロナ拡散」乱痴気パーティ』

 ~2020.7.31 FLASH~

ここに紹介したのはあくまで氷山の一角です。一体全体、どれほどの数のパーティーが7月4日当日に企画されたのでしょうか? 考えただけでも眩暈がしてきそうです。

筆者は在日米軍絡みのこの手のパーティーに何度か参加したことがありますが、参加するのは兵士や軍属以外にも身内親類縁者、友人知人といったように多岐にわたっています。彼らは沖縄以外からもやって来ますし、一部はアメリカ本土からもやって来ます。もちろん、日本人に対しても広く門戸を開いています。

しかも、アメリカ本土からやってくる場合でも、日米地位協定により軍関係者であればフリーパスで日本に入国が可能です。名目はあくまで「軍関係者」という条件が付きますが、日本側が入国審査しているわけでもないので、アメリカからやって来る者は本当にフリーパスなのです。

つまり、世界で最も多くの新型コロナ感染者と死亡者を出しているアメリカから日本への入国は、事実上制限がないのです。実際問題、日本政府は日本国内に果たして何人のアメリカ人が存在しているのか、実は全く把握できていません。

そのような条件下で、7月4日は沖縄県の各地でパーティーが開かれたと考えられます。果たして何カ所なのか、あるいは何十カ所なのか見当もつきません。しかも、7月4日は土曜日でした。

差別の構造、そして『沖縄戦』

『ドキュメンタリー沖縄戦』の太田隆文 監督
Photo by :太田隆文のfacebook

沖縄県は太平洋戦争末期、上陸した米軍による文字通り地獄の地上戦が展開された土地です。

米軍約50万8千人、対する日本軍は約11万6千人。驚くべきは、その中に沖縄の14歳から70歳までの女性までもが徴用されていたことです。
全戦没者20万656人の内、沖縄県出身者は約61%の実に12万2282人にも上りました。つまり、3人に1人の沖縄県民が死んだことになります。──日本軍は本土を守るため、沖縄県を ”捨て石” にしました。

映画監督の太田隆文氏は「これは過去の終わった話ではない」といいます。
「沖縄住民の犠牲を知りながら、守ることなく捨て石にした旧日本軍がだぶって見える」と──
つまり、コロナ禍の中で困窮する自営業者に自粛しろと要請する一方で、十分な補償もせず、まともな対応を取れない現在の政権の姿とまるで同じではないかと、太田監督は怒りをあらわにしているのです。

新型コロナウイルスとの闘いは「戦争」に例えられてきました。この傾向は欧米において顕著に見られましたが、日本でも「コロナとの戦いは戦争と同じ」と口にする人はいます。

沖縄で確認されている感染爆発が、あるいはアメリカの独立記念日に端を発したパーティー(という名の ”乱痴気騒ぎ”)による可能性が高いとするならば、沖縄県における新型コロナとの戦いは、なるほど米軍が絡んだ「戦争」、これは沖縄での地上戦、すなわち『沖縄戦』の再来と言う他ありません。

戦後75年。沖縄は過去にも、そして現在においても日本本土の犠牲になるのでしょうか? これは明らかな差別の構造です。

『ドキュメンタリー沖縄戦』のHP
太田隆文 監督の Facebook
太田隆文 監督の Twitter

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