Introduction:このニュースサイトでは ”官邸官僚” の弊害について指摘しましたが(『「一水会」が安倍首相の側近政治を斬る!』)、私たちが想像する以上の速さで彼らの浸食は進んでいるようです。
9月11日に行われる内閣改造に向け、国家安全保障局(NSS)の局長に北村滋・内閣情報官が就任することが決まったと、複数のメディアが報じています。
さて、”官邸のアイヒマン” とも呼ばれる北村氏のNSS局長の就任により、日本は ”警察国家” へと急転直下、過酷な統制社会へと向かうのでしょうか?
最後は処刑されたアイヒマン
元々、アイヒマン(アドルフ・オットー・アイヒマン)とは、ヒトラー率いるナチス政権化の親衛隊(SS)将校で、アウシュビッツ強制収容所においてユダヤ人の大量移送・虐殺に関わった人間です。
第2次大戦後、彼はアルゼンチンで逃亡生活を送っていましたが、1960年にイスラエルの諜報特務庁(モサド)に拘束され、裁判にかけられました。これが数多くの映画にもなった、有名な「アイヒマン裁判」です。
この裁判に関わることになった哲学者のハンナ・アーレントは、当初アイヒマンをいかめしい鬼畜のような人間として想像していましたが、実際のアイヒマンは取るに足らない凡庸な小役人にしか見えませんでした。
「自分は上司の命令に従ったに過ぎない」ことを主張する、この不可解な存在に直面したアーレントは、人間の本性、すなわち「どこにでもいる平凡で思考停止した人間は、いかなる ”悪” にもなり得る」ことを悟り、「悪の凡庸さ」を世に問いましたが、そんなアーレントもユダヤ社会から痛烈な非難を浴びました。
アイヒマンには人道に対する罪や戦争犯罪の責任を問われ死刑判決が下り、1961年に絞首刑に処せられました。
山口敬之の準強姦疑惑をもみ消した人物
北村滋・内閣情報官は元々は警察庁出身で、同じ警察庁出身の杉田和博・内閣官房副長官と共に、官僚とメディアに対し睨みを利かせているのは広く知られています。
そんな北村氏を広く世に知らしめたのが、元TBSのジャーナリスト・山口敬之氏による、同じジャーナリスト・ 伊藤詩織さんに対する準強姦罪のもみ消しだったことは何とも皮肉なことです。
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ちなみに、映画『新聞記者』では、詩織さんと同じような性被害を受けた一般女性に対し、内閣情報調査室(内調)の職員が複数のTwitterアカウントを使い、彼女に対する誹謗中傷を展開するシーンが描かれています。
北村滋氏はサイバー・スパイ養成を画策している。
Video by:KyodoNews
「監視技術、米が日本に供与 スノーデン元職員が単独会見」
その他にも北村氏は、内閣情報官時代に不穏な動きを見せていたことが、2017年4月に公開されたエドワード・スノーデンによる『スノーデン・ファイル』で明らかになっています。――そこには次のように書かれています。
12年1月に防衛省防衛政策局長が訪米、横田基地のNSA日本代表部と協議を重ね、同年12月から防衛省情報本部・太刀洗通信所(福岡県筑前町)での日米共同通信諜報サイバー作戦「マラード」を実施。1時間に50万件の通信を収集開始 (13年2月、防衛省情報本部電波部作成のNSA向けスライド)。
「日本の通信諜報本部は、サイバー・ネットワーク防衛を支えるために諜報データの供給を開始する任務を与えられた。彼らはNSAに、そのような実務能力を育成するための支援を求めてきた。この原動力の源は内閣情報調査室で、サイバー分野で日本側を主導するよう任命されている」(13年1月29日付、北村滋・内閣情報官が12年9月10日にNSAを訪問したことを記載)
「日本の通信諜報本部はサイバー・ネットワーク防衛に諜報データを提供するための実務能力を育成する初期段階にある。この情報提供は、エックスキースコア(中 略)のようなNSAが以前に同本部に提供した通信諜報と通信諜報開発のシステムを使用して実施される。このサイバー業務に当たる同本部の要員は、新たな任務を実施するのに必要な、これらのシステムを使用する訓練を受けていない。この分野のNSAの専門家が支援する必要がある」(13年4月8日付、サイバー・スパイ養成のため日本へ講師の派遣を決定)
~スノーデン・ファイル徹底検証 ――日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたのか~
上記の資料『スノーデン・ファイル徹底検証 ――日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたのか』は、市民団体「ストップ!秘密保護法かながわ」主催の講演会において、元朝日新聞記者のジャーナリスト、小笠原みどり氏による講演をまとめたものです。
この資料によれば、北村滋氏がアメリカ国家安全保障局(NSA)を訪れ、サイバー・ネットワーク防衛に関する支援をアメリカに求めていたことが分かります。そして問題なのは、アメリカ側が「サイバー・スパイ養成のため日本へ講師の派遣を決定」していることです。
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北村氏のNSA訪問により何が話されたかは、おそらく ”特定秘密” の範疇なのでしょうが、彼が日本の国家安全保障局(NSS)の頂点になることは、むしろ国内の情報統制に何らかの影響を及ぼすことを危惧する声も上がっています。
外務省を無視し私的外交に邁進する!?
今回、北村滋氏が局長に就く国家安全保障局(NSS)とは、首相、 官房長官、外務大臣、防衛大臣で構成される「国家安全保障会議(日本版NSC)」の事務局を担い、日本の外交・安全保障の司令塔としての役割を果たします。
前任者であり初代事務局長の谷内正太郎(やち しょうたろう)氏は高齢を理由に離任したとされていますが、実際はそうではありません。
一昨年、安倍首相が二階俊博・自民党幹事長を中国に派遣した際、習近平主席宛に外務省が作成した親書を託しておりました。
それまで、日本は習近平が推進する「一帯一路」には乗り気ではありませんでしたが、習近平主席に手渡されたのは「日本は一帯一路に積極的に協力する」という内容に書き換えられたものでした。
書き換えをしたのは今井尚哉・首相秘書官です。
今井秘書官は外務省に一切の断りもなく、独断で内容を書き換えたのです(このことは今井氏本人も認めています)
このことに激怒したのが先ほどの谷内正太郎氏。谷内氏は今井氏に詰め寄りましたが、時既に遅しで、このことが谷内氏のNSS辞任へと繋がったと一部では囁かれています。
このように、北村滋氏も安倍首相のインナーサークルに入り、関係を益々深める一人となったようです。
今や今井秘書官のように安倍首相周辺の ”官邸官僚” は絶大な力を持つに至り、外務省の意向などまるで無視して、独自の外交に邁進しています。
今井尚哉・首相秘書官は、外務省と対立しながらロシアとの外交に力を入れていますが、北方領土問題はまるで進展していません。
今回の北村滋氏は朝鮮労働党幹部と極秘に接触するなど、北朝鮮外交で暗躍しているようですが、果たして拉致問題は進展するのでしょうか。
彼らの行う外交は独自外交というよりも”私的外交” のように見え、その動向は極めて危ういと言う他なく、著しく国益を毀損する予感に満ちています。