Introduction:2018年の11月から12月にかけて、内閣府は日本と欧米の若者を対象にした意識調査を行いました。
その中で明らかになったのは、どうやら日本の若者は「内向き」になっているようだ、ということ。
今回はその実態に迫ります。
若者に聞きます。「あなたは留学したいですか?」
対象となったのは日本を始め、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの計7か国、13歳から29歳の男女です。
この中で、「あなたは海外に留学したいですか?」の質問に対して「したい」と答えたのは、1位が65.7%の韓国、2位が65%のアメリカでした。
ドイツ、スウェーデンは50%前後でしたが、日本は「32.3%」で最下位という結果が出ました。
ちなみに、人口 1,000人あたりの「海外への留学者実数」については、次の通りです。海外へ留学する日本人の数が、いかに少ないかが見て取れます。
順位 | 国名 | 人数 |
1位 | ルクセンブルク | 17人 |
2位 | アイスランド | 9人 |
17位 | 韓国 | 2.3人 |
21位 | スウェーデン | 1.8人 |
: | : | : |
53位 | 日本 | 0.3人 |
では、海外へ留学する日本人の数について、ここ最近の推移を見てみましょう。
OECDの統計資料によれば、1980年代は約15,000人前後で推移していましたが、その後は上昇傾向に転じ、2005年にピークを迎えます。この時の留学者数は約83,000人。
ただ、その後は数が徐々に減ってゆき、最近では約55,000人といったように、ピーク時に比べ約3万人減ったことが分かります。
また、多くの日本人が海外旅行することで知られていますが、実際の統計資料を見てみると、2000年が約1,780万人で2018年になっても約1,890万人といったように、実は横ばい状態が続いております。
映画でも邦画が主流となっている
ハリウッドから配給される特撮ものや大仕掛けの映画は、世界的な人気がありますし、日本でも多くの作品が上映されていることから、洋画が邦画を圧倒しているのかと言えば、実は全くそうではありませんでした。
1年間に公開される映画の数については、戦後から邦画が洋画を上回っていましたが、1987年において邦画が286本に対し、洋画が351本といったように、ここで初めて戦後以来の逆転現象が起こります。
さらに、1989年では邦画255本、洋画は522本となり、洋画が邦画を圧倒します。
しかし、最近では再び邦画が盛り返しており、2006年になって邦画が417本、洋画は邦画に負けて404本です。以来、邦画優勢が続いています。
ちなみに興行収入においても、2006年以降、邦画が洋画を上回っています。
パラダイス鎖国
2008年1月のダボス会議において「Japan: A Forgotten Power?(日本は忘れられた大国なのか)」というセッションが開かれ、国際的に日本の内向き志向が問題視されています。
海部美知『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)
高度経済成長から貿易摩擦の時代を経て、日本はいつの間にか、世界から見て存在感のない国になってしまっています。
国内を見れば、生活便利さや物の豊富さでは日本は先進国でもトップクラスの豊かさを誇り、外国へのあこがれも昔ほど持たなくなりました。そういった日本の様子を著者は「パラダイス鎖国」と呼んでいます。
日本は生活の便利さや物資面において、世界トップクラスの先進国ですし、安全で住みやすいため外国人にも評判です。そんな国から外に出てゆく必要もないと考えている若者には、日本が ”パラダイス” に映っているのかもしれません。
ちなみに、冒頭で紹介した調査対象となった13歳から29歳の若者たちは、いづれも平成の生まれ、つまり ”失われた30年” 世代となります。
そういった、停滞した時代に生まれたが故に、外国人とやり合ってゆくことへの不安があるのかもしれません。