弾劾公聴会はトランプ大統領に影響を与えるか?
ウクライナ疑惑をめぐっては世界中の誰もが、さらにはアメリカ共和党の面々までもがトランプ大統領は「黒」であることは分かっています。しかし、これから展開されようとしていることは、事の善悪を判断することではありません。政治的な思惑により、着地点を決定するプロセスです。そこが天国であるか地獄であるかは、あまり問題ではありません。
11月13日から開かれるトランプ大統領の公聴会では、最も重要とされる次の3人のキーパーソンが登場し、トランプ大統領の疑惑について「黒」であることを証言します。そしてこの様子はライブ中継でアメリカ全土に放映されるわけです。
・ウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使
・マリー・ヨバノビッチ前駐ウクライナ大使
・ジョージ・ケント国務副次官補
こういった強力な面々の証言により、普通であればトランプ大統領は確実に崖っぷちに追い込まれるはずですが、今のところは何とも言えない状況です。
また、公聴会に登場するこの3人の外交官の証言内容は、既に事前の民主党による調査により一般公開されていますが、これをきちんと読む国民は少数派でしょう。そして、これらの証人は疑惑について、直接的にトランプ大統領と会話をしているわけではない、つまり、彼らの情報は2次的なものであるといった指摘もあります。
結局のところ、今回の公聴会はインパクトはあるものの、民主党の狙いとしては弾劾において最も重要とされる「世論」の盛り上がりなのかもしれません。無党派層の支持を失えば、トランプ大統領といえども次の大統領選も含め、窮地に追い込まれる可能性は高くなるからです。
ちなみに、アメリカの調査会社によれば、トランプ大統領に対する弾劾について、約40%ものアメリカ国民が支持しているようですが、それ以上の支持は伸び悩んでいます。
弾劾裁判から大統領罷免までのプロセス
13日からの公聴会で何か決定的な新事実が明らかにされ(その可能性は少ないのですが)アメリカの世論が盛り上がったとしても、余程でない限りトランプ大統領を罷免させることは困難かもしれません。
弾劾裁判では、次の2つのプロセスを経なければトランプ氏を罷免することはできないからです。
- 弾劾裁判の開廷
(下院の過半数の賛成が必要)
下院では民主党が過半数を占めているので問題なし。 - 罷免の判断
(上院の3分の2以上の賛成が必要)
上院では共和党が過半数を占めるため、罷免には10名以上の共和党の造反者が必要。
アメリカにおける弾劾裁判によって罷免された例は、過去に裁判官に対して成立したケースがあるものの、大統領が罷免された例はありません。
日本の憲法改正ほど高いハードルではないにせよ、アメリカ大統領を任期途中でクビにするのは現実的ではないと考えられます。
トランプ大統領再選により、安倍4選が実現してしまう!?
トランプ大統領は今年の7月、ウクライナのゼレンスキー大統領に電話をかけ、バイデン前副大統領と息子のハンター・バイデン氏の、ウクライナのガス企業ブリスマをめぐるスキャンダルについて、捜査するよう要請しました。
トランプ大統領は、ホワイトハウスでの両国首脳会談をダシにしてゼレンスキー大統領に迫ったわけですが、ゼレンスキー氏が断ったために会談は実現せず、トランプ大統領はさらにエスカレートし、要求に従わない場合、約4億ドルもの軍事支援を凍結すると伝えたわけです。
端的に言えば、自分の選挙活動のために国家間の軍事支援を留保してしまうといった、実にとんでもないことが進行していたわけですが、これは日本でも疑惑が日々深まっている安倍首相による ”桜を見る会” をめぐる問題と、”政治の私物化” という意味においては本質は全く同じということになります。
アメリカ大統領の場合、再選されるとレームダック(役立たず、死に体)に陥ると言われますが、トランプ大統領が2020年11月に再選されたとすると、むしろ彼の ”やりたい放題” が加速するのではないでしょうか。
そんな様子を安倍首相が指をくわえて見ているはずがありません。2021年9月の自民党総裁の任期までに念願の憲法改正が実現していれば話は別ですが、そうでない場合、安倍首相はきっと「4選目」を狙うに違いありません。
先の「祝賀御列の儀」パレードでは、自分も天皇であるかのように車の窓を開け、手を振ってしまう安倍首相のことです。”親分” のトランプが喜々としてやりたい放題している様を見て、安倍首相もまた首相の座にすがりつこうとするのは自明だと思われます。
自民党幹事長の二階俊博氏は、9月の改造内閣発足に際し安倍4選を容認する構えを見せ、11月には同党税調会長の甘利明氏が「世界情勢が退任を許さないとしたら」とした上で、安倍4選に含みを持たす発言をしています。
アメリカのトランプ政権が2025年1月まで続き、安倍自民総裁4選により、日本でも同様に安倍政権は2024年9月まで続いてしまう。
この両者による ”日米二人三脚” は、私たちが最も見たくないストーリーなのではないでしょうか?