白坂和哉デイウォッチ

今度は小池都知事が賭けに出た!~簡素化してもやりたい東京五輪という賭博場

Introduction:東京都知事の小池百合子氏は、私たちが想像する以上に恐ろしい女性なのかもしれません。

東京五輪については、元々は2年延期でもよかったところを安倍首相が1年延期に決定しました。これをして森喜朗氏は「首相は ”賭け” に出た」と評しました。

今回、小池都知事が東京五輪でやろうとしているのは、それ以上にリスキーで自身の野望と執念にまみれた ”賭け” なのかもしれません。

突如として ”簡素化” が言われるようになった東京五輪。一晩明けたらすっかり政局の場と化していました。

東京五輪の賭けに負けた安倍首相

本来、2020年の夏に開催されるはずであった東京五輪については、新型コロナ禍により3月24日に延期が確定しました。ただ、安倍首相は五輪の完全な形での開催にこだわりつつも、2年延期が賢明であると思われるにも関わらず敢えて「1年延期」に決定しました。

これを見た東京五輪大会組織委員会会長の森喜朗氏は、安倍首相を評して「首相は賭けに出た──」と語ったわけです。

安倍首相は「首相任期中の五輪開催」を絶対に手放したくなかった。なぜなら、東京五輪こそが安倍首相にとって唯一の成果、レガシーであり、東京五輪を花道に首相を勇退することを描いていたからです。

逆な言い方をすれば、安倍首相は東京五輪以外に取り立てての実績はありません。拉致問題は結局、解決の目途どころか金正恩との首脳会談もままならず、北方領土問題についてはあれほどプーチン大統領と会談しておきながら、二島返還どころか1ミリも帰ってくる気配がありません。中国との関係は悪化し、さらに日韓関係においては戦後最悪です。

そんな安倍首相にとって、7年以上も首相を務め在任記録も打ち立てておきながら、実績と呼べるものはかろうじて東京五輪ぐらいしか残されていなかった。長期政権を誇っておきながら、哀れな首相でもあります。

実際、安倍首相によるこの賭けはあまりに無謀なものでした。1年経てばコロナも終息するだろう。その間、新型コロナの治療薬やワクチンもどうにか目途がつくだろう、といった希望的観測に因るものだったからです。

ところが、実際にふたを開けてみれば、日本では確かに収束の傾向は確認できるものの、世界はまだまだ予断を許さない状況が続いています。ワクチンの開発は遥か先のことで、治療薬として米国製のレムデシビルは日本で認可されたものの、安倍首相一押しのアビガンは認可の目途すら立っていません。

週刊フライデーに止めを刺された安倍首相

そんな中、『週刊フライデー』(6月12日号)のスクープ記事が安倍首相の賭けに止めを刺しました。
『来年開催の東京五輪が「すでに中止決定」の衝撃情報』と題された記事には、アメリカ政府との繋がりをバックに世界展開している大手旅行会社の極秘レポートを入手したと書かれており、そこには「東京五輪は中止が決定している」との一文があったというのです。

このレポートでは、中止の根拠として次の4つを挙げています。

つまり、東京五輪をめぐっての安倍首相の賭けは、完全に「負け」と出たわけです。

東京五輪をめぐり暗躍する3人

Photo by :2020.06.04 讀賣新聞

東京五輪の開催が絶望視される中で、6月4日の讀賣新聞が大スクープを放ちました。

一面トップの大見出しには「五輪 簡素化を検討」と書かれています。
つまり、2021年に延期になった東京五輪について、開催方式の「簡素化」を選択肢の一つとして検討していることが、複数の政府、組織委員会関係者からの取材で分かったというのです。

当初、この記事は首相官邸が讀賣新聞に書かせた ”観測気球” であると思われました。簡素化してまでも東京五輪を開催しても構わないか、世論の風向きを文字通り観測するための記事ということです。

つまり、安倍首相はあれほど「完全な形での開催」を謳っておきながら、自身のレガシー欲しさに新型コロナのリスクを顧みず、五輪を簡素化してまで行いたいと思っている。明らかにこれまでの主張と矛盾しています。

しかし、この安倍首相の観測気球と思われた記事も、その後の各紙の後追い報道を見ると、どうやら様子が違うことに気づきます。

例えば、朝日新聞の報道によれば、大会組織委員会は簡素化のために開閉会式の演出変更や参列選手の絞り込み、聖火リレーの日数削減といったようにかなり具体的な検討をしており、その数たるや約100項目、IOCの検討分と合わせると約250項目にも及んでいるのです。

観測気球どころか戦闘機だった!

さらに、ここで重要なキーパーソンとして浮上しているのが、「小池百合子」東京都知事です。

小池都知事は6月4日、記者団に対して「国や大会組織委員会と連携し、簡素化や合理化を進める」との考え示し、合わせて「国民の共感、理解が必要だ」と述べました。また、同日には大会組織委員会の森喜朗会長とも会談しており、東京五輪の簡素化を検討する方向で一致したというのです。

さらには、菅官房長官です。
菅官房長官は4日午前の定例記者会見の席上、簡素化について「政府と大会組織委員会との間で何らかの方針を決定したわけではない」としつつも「引き続き検討状況を注視する」と述べ、あわせて「アスリートや観客にとっても安心、安全の大会にすることも極めて大事」とも語っています。

回りくどい言い回しですが、この菅話法を解読すると菅官房長官は明らかに東京五輪の簡素化に前向きであることが分かります。

そして、この6月4日の一連の動向を見ると、「小池百合子」-「森喜朗」-「菅義偉」というラインが繋がっていることが分かります。
つまり、4日の讀賣新聞の記事は首相官邸(安倍首相)の ”観測気球” ではなく、「小池・森・菅」ラインが具体的に進める ”戦闘機” だったのです。

そして、ここで最も重要なことは「安倍首相の声がまるで聞こえてこない」ということ。もしかしたら、東京五輪の簡素化について、安倍首相は内容は知らされているものの、実質的に主導的な立場にない ”蚊帳の外” 状態かもしれません。とすれば、「小池・森・菅」が放った戦闘機の照準は、安倍首相に向けられているのではないか?

ポスト安倍を狙う小池都知事

今年の3月、東京五輪のマラソン開催地が札幌に変更された際、これに激怒した小池都知事は「そんなに涼しいところがよければ、いっそ北方領土でやったらどうだ!?」と発言、物議を醸しました。

東京五輪に対し並々ならぬ執念をうかがわせる発言でしたが、小池都知事がこうも五輪にこだわる理由は何でしょうか?
それは、端的に申せば、国政に返り咲き首相の座を狙うための足掛かりにしたいからではないでしょうか?

もはや安倍首相を見限った森喜朗、菅官房長官らと共に東京五輪の簡素化開催に向けて主導的な立場を維持する。現在も小池都知事は新型コロナ絡みで頻繁にメディアに登場し、それが都知事選に向けた選挙活動だとも揶揄されていますが、彼女はもっと先を見据えて行動していると考えられます。

新型コロナ対策を行いつつある程度結果を出しながら、来年の簡素化した東京五輪も自身の主導の下で成功に導く。その勢いで国政に復帰しポスト安倍を狙っているのではないでしょうか?

問題は安倍首相がどのような行動に出るかに掛かっています。
現在行われている通常国会は6月17日が会期末ですが、その後、河井夫妻が公職選挙法違反の疑いで逮捕されるのではといった噂がまことしやかに囁かれています。

◆ 出典記事 ◆
 『河井案里氏立件へ 公選法違反 克行氏と共謀容疑 検察』

 ~2020.06.05 毎日新聞~

河井夫妻が立件されるようなことになれば首相の責任問題は言うに及ばず、桜疑惑、森遠加計疑惑が再燃しかねません。
安倍首相が自らの身を守り、合わせて小池都知事の野望も打ち砕くには、まさに今夏の衆議院解散しか残された手立てがないように思われます。

小池都知事の勢いがこれから増してゆくのか?
あるいは今夏に大きな政治の動きがあるのか?
──この夏にすべてが分かるかもしれません。

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