白坂和哉デイウォッチ

中東沖に自衛隊 ~隊員を犠牲にする安倍首相の黒い戦略

Introduction:10月18日、突如として舞い込んできたのが、政府が自衛隊を中東海域に派遣するというニュースです。

どうやら、安倍首相が同日に国家安全保障会議(NSC)を開き、中東情勢の悪化を理由に、自衛隊派遣の検討を関係閣僚に指示したとか・・・

日本中が台風19号の被害から全く立ち直っていない最中の、”寝耳に水” のような話ですが、安倍首相の意図するところは何なのでしょうか?

いつもの ”やってる感” 外交に見えなくもないが・・・

安倍首相お得意の ”やってる感” 満載の外交が、ここでも展開されようとしています。

本質的には子供がやる ”戦争ごっこ” と何ら変わらず、自分は大した奴だと周りに誇示したい、つまり、海外の優秀かつ手ごわい各国首脳らに直に接し、自分も彼ら同様一角の人物なのだといきり立っている、そのような極めて強い承認欲求が見て取れます。

そして、なにか大変なことが起こったら頼れる ”ボス”、アメリカ(ジャイアン)に泣きつくことも可能なわけですから、安倍首相はなかなか良い立ち位置をキープしていると言えるでしょう。

「被災からの復興はまさにこれからというのに、安倍首相は一体何を考えているのか?」そのような怒りが、台風15号や台風19号の被災者でなくとも、日本中から聞こえてきそうです。

また、安倍首相は(台風15号の際は行わなかった)被災地の視察を今回は行いましたが、見ていてわかったのが、首相はこういう事が嫌で嫌でしょうがないのだろうなということです。そういった気持ちが顔にも現れてしまっているのですから如何ともし難いのです。

一見すると目的不明な ”フワフワ” した自衛隊の中東派遣だが・・・

そんな折にぶち上げたのが、冒頭で触れた自衛隊の中東派遣です。

これは端的に言えば、ジブチに派遣されている自衛隊員に任せれば済むだけの話です。というのも、派遣候補先である「バブルマンデブ海峡」の目と鼻の先に、自衛隊のジブチの海外拠点があるからです(ここで自衛隊は海賊の掃討を行っています)

しかし、安倍首相的にはジブチの自衛隊ではダメで、どうしても新たに日本から自衛隊を派遣したいようなのです。

そして、派遣の候補先となるのは「バブルマンデブ海峡」以外にも「アラビア海」「オマーン湾」といったように3か所もあり、アメリカが主導する有志連合に参加するのでもなく、さらに、このことは決定事項でもなく年内にも決定したいといった、目的不明のどうしようもない ”フワフワ感” といったら、もはや笑うしかありません。

このことを受け、「日本はエネルギーを中東に依存しており、日本政府は航行の安全に貢献する義務がある。また、米国主導の有志連合に参加しなかったことで、米国とイランの『橋渡し役』の立場も維持できる」といった論調で、相も変わらず日本のメディアはもっともらしく、バカ丁寧に、仰々しく書いていますが、ここまでくるとお笑いどころか ”哀れ” と言うしかありません。

日本のメディアは、はっきりと言ってやればいいのです。

中東の航行の安全確保に務めたいのならば、ペルシャ湾やホルムズ海峡に挑んでゆくのが絶対条件であり、それができないのはひとえに安倍首相の外交が全く機能していないためだと。

トランプに従属するしか能がなく、イランからも軽んじられている安倍首相が米国とイランの ”橋渡し役” などになれるはずもなく、いずれは外交的に行き詰まり、米国とイランとの間で ”また裂き状態” になるだろうと。

佐藤正久の ”駆けつけ警護” 発言にヒントがある!

イラクに派遣された陸上自衛隊の指揮官だった佐藤正久氏は、当時現場では、事実上の「駆けつけ警護」を行う考えだったことをJNNの取材に対して明かしました。

「自衛隊とオランダ軍が近くの地域で活動していたら、何らかの対応をやらなかったら、自衛隊に対する批判というものは、ものすごく出ると思います」(元イラク先遣隊長 佐藤正久・参院議員)

佐藤氏は、もしオランダ軍が攻撃を受ければ、「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだったといいます。

「巻き込まれない限りは正当防衛・緊急避難の状況は作れませんから。目の前で苦しんでいる仲間がいる。普通に考えて手をさしのべるべきだという時は(警護に)行ったと思うんですけどね。その代わり、日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれてやろうと」(元イラク先遣隊長 佐藤正久・参院議員)
~2007年8月10日 TBSニュース~

これは2007年当時、国内で話題になった自民党の佐藤正久 参議院議員によるものですが、「ヒゲの隊長」の愛称でイラクに派遣された時の心境を語ったものです。

彼の発言を好意的に受け取れば、仲間を助けるために敢えて戦闘状態に巻き込まれようとした事になりますし、否定的に捉えれば、敢えて巻き込まれて戦争状態をつくりだすつもりだった、という事になります。

外国軍であっても、戦闘することで仲間を助けたいとする佐藤氏の心情は理解できますが、当時の日本の法に従えば完全にアウトです。
しかし、現在であれば「安全保障関連法」が成立していることから、佐藤氏の言う ”駆けつけ警護” も可能になりました。

佐藤氏の発言で最も注目すべきは「情報収集」という言葉です。
佐藤氏は「情報収集の目的で現場に駆けつけ・・・」と言っていますが、情報収集であればセーフであるとの認識でいた何よりの証左となります。

そして、今回の安倍首相による ”フワフワ” 自衛隊派遣の最も重要なポイントもまた「情報収集」なのです。

中東海域を彷徨い有事の際には自衛隊員を人間の盾にする!

もう一度、報道に目を通していただきたいのですが、そこでは今回の自衛隊の中東海域への派遣について、政府は防衛省設置法の「調査・研究」を派遣の根拠にすると、明確に謳っています。

理由は簡単です。
調査・研究」を派遣目的とすることにより、国会での承認を必要とせず、自衛隊を可及的速やかに海外へ派遣できるからです。

安倍首相は、相変わらずこのような事を画策しているのです。そして、国会を無視しようとする態度も相変わらずです。

防衛省設置法による調査・研究の派遣においては他国の船舶の護衛はできません。おそらく、政府は自衛隊艦船の単独での任務行動を想定しているものと思われます。

そして、任務ともつかない任務を与えられ、中東海域を回遊する(彷徨う)自衛隊艦船が他国によって攻撃されることを、実は安倍首相は望んでいるのではないかと、筆者は疑っています。

仮に自衛隊員に死傷者が出ようものなら日本の世論は反戦の方向へと沸騰しますが、と同時に反撃できない自衛隊のもどかしさも合わせて吹き出すでしょう。
そんな時、安倍首相はこう言うに違いありません。

「だからこそ、憲法改正が必要なのだ」と。

安倍首相が自民党の総裁を3年で退くとすれば、「2021年9月末」がデッドラインとなります。途中オリンピックなども大イベントがあり、また、参議院が改憲議席3分の2を割っていることによる多数派工作の時間も考慮すると、憲法改正に向け安倍首相に残された時間はごく僅かです。

今、安倍首相はなりふり構わず「憲法改正」へと向かっているように思われます。

台風被害などまるで眼中になく、あわよくば自衛隊員を ”人間の盾” として犠牲にしてまでも、憲法改正に異様なまでに執念を燃やしている安倍首相は、もはやまともな判断ができない状態なのかもしれません。

モバイルバージョンを終了