白坂和哉デイウォッチ

記者会見を途中で打ち切り、さっさと帰宅した安倍首相 ~安倍首相にコロナ対策の意欲はあるのか?

2月29日に緊急記者会見を開いた安倍首相

Introduction:2月27日の安倍首相による「小中高の休校要請」を受け、人心の心が乱れたところに悪質なデマが拡散。日本全国の店からトイレットペーパーとティッシュペーパー買い占められるというパニックの萌芽が確認される中で行われた、29日の安倍首相による緊急記者会見は、実に残念なものでした。

もっとも、これは記者会見と呼べる代物ではありません。
この緊急事態においてもなお、安倍首相は事前に用意された文面を読み上げるだけで、これも事前に記者から提示された質問に答えるといったセレモニーを披露。そして、最後には本当の意味で質問の声を上げる記者を完全無視し、安倍首相は自宅へと帰宅したわけです。

これでは安倍首相の講演会だ

これは何も安倍首相に限らず、日本政府は「記者会見」というものがまるで分っていません。本来の記者会見とは、今回の場合でしたら初めに安倍首相による政府としての見解表明があり、その後記者らによる質問と、安倍首相の応答がそれなりの時間枠を確保した上で為されるはずです。

しかし、現実に展開されたのは、左右のプロンプターに映し出されるスピーチライターの書いた原稿を、もったいぶった姿で読み上げる安倍首相の姿であり、幹事社(※)から2問、自由質問2問、海外メディアの質問1問、合計たったの5問に答える安倍首相の姿です。

※幹事社:記者会見を取り仕切る新聞社やテレビ局のこと。1,2カ月程度の持ち回り制になっている。

安倍首相は下をチラチラと見ながら質問に答えていましたが、もちろんこれらの質問は事前に提出を受けていたものです。首相官邸はいかにも自由闊達に質疑応答がされているように演出しますが、実態は質問する記者とその順番までもが予め決められているのです。

これがいつもの安倍首相の記者会見の光景であり、この国家的な緊急事態に及んでもなお、安倍首相は相も変わらずシナリオありきの ”八百長” 会見に精を出しているわけなのです。

これではまるで安倍首相の講演会、記者会見を装う日本政府のプロパガンダでしかありません。そして、これを支えるのが首相官邸に唯々諾々として従うことしか能のない記者クラブの記者たちです。それが記者会見わずか35分、そのうち質疑応答15分というお粗末な結果となって現れました。今後この国が本当にコロナウイルスに打ち勝つことができるのか、甚だ疑問に感じるのは筆者だけではありますまい。

◆ 以下の記事では、安倍政権による八百長記者会見について、さらに深掘りしています。

◆ 関連記事 ◆
 『「記者会見」アメリカと日本はここまで違うのか!?~”幼児化” する安倍政権』

安倍首相は江川紹子氏の質問に答えよ

今回の会見で極めて悪質なのは、上記に記した5つの質問に答えるだけで安倍首相は言わば強引に記者会見を打ち切ってしまったことです。
その時「まだ聞きたいことがあります!」と何度も絶叫していた女性記者がいたことに視聴者の多くが気づかれたかと思います。

──ジャーナリストの江川紹子氏です。

下記に記した江川氏の ”聞きたかったこと” とは、まさに私たち国民が聞きたかったことに他なりません。

専門家会議で議論されなかった全国一斉の「小中高の休校要請」について──
・他の専門家に相談したのか?
・判断の根拠、エビデンスは何か?
・弊害やリスクの検討はどうやったのか?
・このことで期待される効果や獲得目標は何か?

これらの質問に対して、安倍首相はおそらく何一つ答えられないでしょう。思いつきで発進された愚策と揶揄される所以です。

安倍首相は「学校で子どもの集団感染を起こしてはならない」と言い「これは断腸の思いで、判断に時間をかけるいとまがなかった」などと言っています。
「集団感染を起こしてはならない」のは言うまでもないことですが、休校要請に至る経過を何一つ提示していないのです。

新型コロナ対策の予算を計上しなかった安倍首相

安倍首相はウイルスの急速な拡大阻止には「この1,2週間が瀬戸際!」であるとしきりに強調していますが、2月25日に政府の基本方針が出された頃から「1,2週間・・・」を言うようになりました。

そのくせ、第二弾の緊急対策は ”10日程度でまとめる方針” とは、一体何をか言わんやです。方針をまとめる間に事態はさらに進行し、最後には手がつけられなくなるのではないでしょうか?
まったくのところ、時間の感覚が狂っているのです。ここでも対応は後手後手です。

さらに、第二弾の緊急対策の財源として、2019年度予算の予備費2700億円を活用すると安倍首相は言いましたが、これに騙されてはいけません。
というのも、次年度2020年度の予算には、新型コロナウイルス対策の予算が全く計上されていないからです。2020年度は予算ゼロなのです。

各国が数千億円規模の対策予算を計上する中、さすがにこれでは問題があるとして共闘する野党は、2020年度の予算について新型コロナウイルス対策費を含んだ予算の組み換え案を共同提出しましたが、与党側はこれを拒否。対策費が1円も計上されぬまま2020年度予算案が2月28日の衆院本会議で可決されてしまいました。

繰り返しますが、2020年度予算に新型コロナウイルス対策費は1円もありません。

その反面、マイナンバーポイント還元費の「2,478億円」や、カジノ管理委員会運営費の「38億円」などはしっかりと予算に組み込まれています。

次年度予算が0円で、2019年度の予備費を使うということは、何か起こるたび ”五月雨式” にお金を使うといったことを意味しています。なぜなら、最大でも2700億円しかなく、現実には全額を対策費に充てられないからです。これで思い切った対策ができるなど、到底思われません。

記者会見を途中で打ち切り、さっさと帰宅した安倍首相! 翌日の公務はわずか2時間!

Photo by : JIJI.COM 「首相動静(2月29日)」

「まだ聞きたいことがあります!」と絶叫するジャーナリストの存在を完全無視するかのように、2月29日の安倍首相による緊急記者会見は言わば途中で打ち切られる格好となりました。

安倍首相が本気でコロナ封じ込めに取り組むと思っているならば、記者会見後は専門家たちと意見交換をしたり対策会議などが開催されてしかるべきでしょうし、そのように想像する国民も数多く存在したと思われます。

しかし、29日の首相動静を見てみると、安倍首相は記者会見後、なんと自宅へと直行しているのです! つまり、会見後は安倍首相は暇だったのです。

であれば、なぜ安倍首相はもっと時間をかけて記者たちの質問に答えなかったのでしょうか? 私たち国民も知りたいことが山積しています。

2月29日の緊急記者会見の翌日、安倍首相の公務はわずか2時間でしかなかった。
Photo by : JIJI.COM 「首相動静(3月1日)」

しかもです。これはもう笑うしかないのですが、安倍首相は緊急記者会見で事態をあれほど煽っておきながら、翌日3月1日の公務はわずか2時間程度でしかありません。緊急記者会見で国家的危機を共有したというのに、この緩さ、この緊張感のなさは何と形容したら良いのでしょうか?
──安倍首相は本当に日本を守る気があるのでしょうか?

安倍首相は会見の場で「政治は結果責任だ。私は責任から逃れるつもりはない」と ”大見得” を斬りました。

しかし現実は、森友加計問題や一連の閣僚の不祥事、そして最近の桜疑惑といったように、安倍首相は説明責任から逃げ回っています。
そして、今回の会見でも威勢の良い言葉と裏腹に、肝心の説明責任から逃れるといった、いつもの光景が展開されました。

──どうやら、新型コロナウイルス対策は安倍首相にはとても荷が重く、到底できそうにもありません。

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