Introduction:ひと頃は新型コロナウイルスへの特効薬として期待を集めた「アビガン」ですが、同時に深刻な副作用を抱えるリスクの高い薬でもあります。
その一方で、米製薬会社による「レムデシビル」は、異例の速さで日本でも承認されました。
この「レムデシビル」、確かに効果は期待できるかもしれません。少なくとも「アビガン」よりは良い数値を出しています。しかし、レムデシビルといった治療薬は、日本ではなかなか手に入らないでしょう。
アメリカの感染状況があまりにも尋常ではないためですし、このような状況では、もちろん来年のオリンピック開催も不可能でしょう。
”安倍印” の国策薬
ひと頃は新型コロナウイルスへの特効薬として期待を集めた「アビガン」
元々は新型インフルエンザのパンデミックに備え、医療従事者への服用を想定して承認された薬で、病院からの持ち出しは禁止されているなど、厳重な管理の下で初めて使用が認められる薬です。また、厚労省が認めなければ製造も販売もできません。ですので一般患者への使用は全く想定されていませんでした。
というのも、アビガンには深刻な副作用があるためです。
それが「催奇形性」です。つまり、妊婦が服用すると奇形の赤ん坊が生まれる可能性があるということ。この催奇形性という副作用については動物実験でも顕著に表れ、マウスやウサギはもちろんのこと、サルにまで奇形の胎児が認められたといいます。
実は、この副作用は女性だけでなく、男性にも影響します。アビガンを男性が服用すると精液にも影響が出るため、男女共ども服用後は最低1週間は避妊しなければならないのです。
アビガンは ”アベ友” 優遇措置か?
このように、アビガンは極めてリスクが高いにも関わらず、新型コロナへの特効薬として安倍首相はアビガンに肩入れしてきました。
薬品開発のため、設備の整備などを請け負う経済産業省の内部に ”チーム・アビガン” までつくり、4月には緊急経済対策費の名目で139億円もの予算がアビガンのために組まれました。
なぜ、安倍首相はハイリスクの「アビガン」を優遇してきたのか?
──実は、関係者の間ではアビガンは ”安倍印の国策薬” として知られており、開発製造元の「富士フィルム富山化学」を傘下にする富士フィルムの会長、藤森重隆氏は安倍首相を囲む財界人の会『四季の会』のメンバー。つまり、”アベ友” の一人なのです。
したがって、これもいつものことですが、安倍首相のインナーサークルの人間が開発に絡んでいるが故に、安倍首相はこれまで「アビガン」を優遇し、富士フィルムに便宜を図っていたのかもしれません。
アビガンの効果は確認できなかった!
とはいえ、科学の世界は政治と違って厳密かつ厳格。そこに嘘や偽り、恣意的な ”えこひいき” など存在しません。
これを見事に証明したのが、藤田医科大学で行われたアビガンの新型コロナ治療薬としての検証結果です。残念ながら、アビガンは「新型コロナへの有効性は確認できなかった」と結論づけられました。
アビガンは「新型コロナ発症の初期段階で効果がある」と期待されていたことから、藤田医科大学の特定臨床研究では、軽症患者や無症状の患者を対象として検証が行われました。
アビガンを服用しなかった患者33人と、服用した36人の患者を比較したところ、ウイルスの消失や減少、発熱が収まるといった傾向が多少見られましたが、有意差(偶然ではなく、ある程度高い水準の変化)は見られなかったといいます。
藤田医科大学での検証はひとまず終了し、今後は富士フィルムが検証を行っていくようですが、作業は遅れている模様です。結果として安倍首相は面子を失い、アビガンは新型コロナ特効薬の座から陥落した格好になっています。
レムデシビルは異例のスピードで承認!
アビガンとは反対に、世界の注目を浴びているのが米製薬大手ギリアド・サイエンシズが開発した「レムデシビル」ではないでしょうか。
ギリアド社による7月10日の発表によれば、レムデシビルを投与したコロナ感染者312人と、同じく感染者818人(彼らは通常の治療を受けている)を比較したところ、14日目に投与した患者の74.4%が回復。一方、投与しなかった患者の回復は59.0%に留まったといいます。
また、死亡率についても、投与された側は7.6%といったように、投与されなかった患者の12.5%よりも低い数値が確認されたわけです。
レムデシビルは元々重症の新型コロナに対する効果が期待されており、実はアメリカ食品医薬品局(FDA)は5月1日、レムデシビルを新型コロナの重症患者に限り、投与することを既に認めています。
日本については5月4日にレムデシビルの申請が提出され、「特例承認」を適用し5月7日の未明に承認されました。とはいえ、いくら特例であっても3日で承認というのはあまりに異例のスピードだと言われています。
レムデシビルは日本で手に入らない?
いずれにせよ、レムデシビルは日本で初めての新型コロナウイルス治療薬として承認されたわけで、5月から日本の医療機関でも使用できることになっています。
しかし、私たちの耳にレムデシビルのことがあまり聞こえてこないのは、アメリカでのコロナの感染状況があまりに壮絶だからではないでしょうか?
上のグラフはアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表する、アメリカでの日々の新規感染者数を表したものですが、毎日6万人単位で最高記録を更新している惨状がありありと記録されています。例えば最近の新規感染者は次の通りです。
- 7月11日:62,918人
- 7月10日:66,281人
- 7月 9日:59,260人
- 7月 8日:64,771人
- 7月 7日:50,304人
つまり、いくらレムデシビルが新型コロナに効果があると確認されたとはいえ、これほどまでに感染が広がってしまえばアメリカでの流通も間に合わず、日本ではなかなか一般には浸透しないのではと予想されます。この日々6万人規模の感染トレンドは当面はつづくと思われ、そうなったからにはアメリカ製の楽品は、やはりアメリカが優先的に流通されるはずなのです。
このニュースサイトでは、アビガンやレムデシビルのような治療薬が開発され、それが日本のイニシアティブのもとに世界中で流通されるような状況が生まれれば、あるいは来年2021年の東京オリンピック開催も可能ではないかと、一つの希望的観測を記事にしたことがあります。
しかし、治療薬の開発もまだまだこれからですし、ワクチンなどはいつになるかも分かりません。そしてアメリカ一国の未曽有の感染状況を見ただけでも、到底来年のオリンピックなどは絵空事に過ぎないことが分かります。
安倍政権や小池都知事などは未だにオリンピックにこだわっているようですが、いい加減に現実を見据え、目を覚ますべきと考えます。