Introduction:知っている人は知っていますが、知らない人はまるで知らない事実。
それは、性風俗店であるかつての「トルコ風呂」が、「ソープランド」に名前を変えるきっかけを作ったのが、実は小池百合子氏なのです。
彼女の最大の特徴は ”清濁併せ呑む” こと。彼女は性風俗を決して否定はしていないのです。
この ”名誉男性” とも揶揄される小池氏は、新型コロナウイルス禍の中にあっても、したたかに渡り歩いています。
トルコ風呂改称運動に一肌脱いだ小池百合子
小池がいつものように竹村と複数の新聞をチェックしていたある日、朝日新聞の記事に、一人のトルコ人の記事が掲載されていた。名前はヌスレット・サンジャクリ。イスタンブールで開かれた日本語弁論大会の優勝者で、副賞として日本への往復航空券を獲得し、来日していた。弁論大会では、かつて東京大学の地震研究所に留学した際、「トルコから来た」と自己紹介しただけで笑いの対象になったという、苦い経験を語った。
木下英治『挑戦 小池百合子伝』(河出書房新社)〔P109~110〕
日本贔屓の国民が多いトルコから来た青年が、そんな憧れの国に留学しながら「トルコから来た」と語るだけで、なぜ笑いの対象となるのか。
そんな彼の思いを紹介する記事を一読して、小池は、彼と会ってみたいと思った。会って、謝りたかった。中東で暮らし、トルコの偉大な文化を知る小池としては、トルコの一青年の思いに応えずにはいられなかった。もし日本人が外国で「日本から来た」というだけで笑いの種にされたら、黙っていないだろう。本来なら、重大な外交問題に発展してもおかしくない。国家としての尊厳には、誠実に対処しなければならない。
すぐに朝日新聞の友人を通じてサンジャクリとコンタクトを取り、都内の喫茶店で会って話した。そのうちに、あることを思いついた。
<そうだ。「トルコ風呂」という呼び方を変えればいい!>
多種多様な風俗の中でも性的要素が極めて強く、実態として性交を含めたサービスを提供していることから ”風俗の王様” と称される個室付特殊浴場、通称「ソープランド」ですが、かつては「トルコ風呂」と呼ばれていました。
しかし、「トルコ」というのは歴とした実在する国ですし、そんな国の名を風俗の名前として冠するのは非常に問題があり、このことに胸を痛めていたのがトルコの青年ヌスレット・サンジャクリさん(当時30歳)でした。そのような中、1984年8月23日の朝日新聞夕刊がサンジャクリさんの心境を綴った記事を掲載します(写真上)
そして、この「トルコ風呂 改称運動」に一肌脱いだのが、あの小池百合子氏であることは今や知る人ぞ知る事実です。
当時の小池氏がどのような考えをもって「トルコ風呂」改称に取り組んだのかは、今となっては知る由もありません。ただ、このキャンペーンは小池氏なくては成功しなかったのは間違いなく、全ては小池氏のペースで進んでゆきました。
事を進めるにあたっては国会議員に陳情することを思いつき、新聞記者を通じて当時の厚生大臣、渡部恒三に陳情のアポイントメントを入れたこともさることながら、同時に記者クラブに連絡し、新聞やテレビに取材にくるよう呼びかけたのは慧眼と言う他ありません。
というのも、トルコ人青年がトルコ風呂の改称キャンペーンを起こし、中東の名門カイロ大学を ”首席” で卒業したとされるTVでお馴染みの才媛がこれに一役買い、二人揃って厚生大臣に陳情する姿はいかにもメディア受けしそうな ”絵柄” だったからです。
実際、全国的にテレビで放映されたのが功を奏したと見えて、その年の12月には名称が「ソープランド」に変更されることが業界団体(東京都特殊浴場協会)から発表されました。
小池百合子は「名誉男性」である
小池はこの一件からもわかるように、「トルコ風呂」という性風俗の存在そのものを批判したわけではなかった。彼女が問題視したのはトルコという国名を名称に使うことであって、そこにある売春そのものを否定したわけではない。逆に存在を肯定する側に立っていたからこそ、名称変更を思いついたのであろう。
石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋)〔P145~146〕
彼女は男の性欲への、性風俗への理解がある、話が分かる女だという印象を男性たちに与えることで男社会を生きてきた。
(中略)
彼女は男社会と対峙するのでなく寄り添い、男社会の中で「名誉男性」として扱われることを好んでいたのだった。だからこそ、彼女は次々と大物たちに目をかけられ、引き上げられていったのであろう。
小池氏は性風俗を決して否定するわけではなく、むしろ存在を肯定する側に立っていたというのは言い得て妙であり、まさに小池都知事は ”清濁併せ呑む” 政治家であることを物語る「トルコ風呂」のエピソードです。
このことは、現在進められている東京都内の新型コロナ対策にも垣間見られるように思われます。
東京都では、6月2日までの1週間に確認された新型コロナの感染者114人のうち、32人が ”夜の街の接待を伴う飲食業” に関係していると報道されました。さらに、その中の4割が新宿歌舞伎町での感染と見られ、小池都知事による「夜の街のホストクラブでの感染者が多い」といった趣旨の発言が波紋を広げています。
この、わざわざホストクラブを ”名指し” したことに対しては一部で批判が高まっているのは事実です。
しかし、ここでも小池都知事はホストクラブを含めた ”接待を伴う飲食店” については存在を否定しているわけではなく、つまり、あらためて休業を強く要請するわけではなく、「”夜の街” で働く人たちにはPCR検査を受けてもらう体制をつくる」などと言っているのです。
まさに、清濁併せ呑む ”名誉男性” ぶりを遺憾なく発揮しているわけです。
実際問題、夜の街のクラスターは都内全体からすれば大きな比重を占めているわけではありません。最大のクラスターはやはり福祉施設、介護施設、病院などに集中しています。
ただ、ホストクラブはこれまで休業要請をかいくぐった闇営業も多く、ゆえに感染者情報が上がってこないため放置することはできないこと。そして、今のところ全体としては小規模のクラスターに留まっているため小池都知事のPCR検査の ”やってる感” を演出するには格好の事例になっているものと考えられます。
都知事選前でもあります。小池都知事は狡猾な手法にて自己PRに余念がありません。”名誉男性” とは、したたかに男社会を泳いでわたる女性の姿です。
※今回紹介した 石井妙子『女帝 小池百合子』は、小池都知事の学歴詐称問題に極めて大きな波紋を広げる内容になっています。この件については、また別の記事で触れる予定です。