Introduction:7月の初めに予測した通り、新型コロナの影響による歴史的な失業時代の到来は現実味を帯びつつあります。
そして、このことは特に地方において、既に兆候が現れ始めています。
実際、福島県では求人が「1.0」を割り込んでしまったことが報道されました。
しかし、これらの現象は何もコロナだけが悪者ではありません。見逃せないもう一つの要因も絡んでいます。
福島県の4地点で「1.0」倍切る
新型コロナウイルス感染拡大で、県内の雇用情勢は深刻さを増している。
2020年7月16日 福島民報 朝刊 ※太文字、アンダーラインは筆者による
五月の県内有効求人倍率(季節調整値)がバブル崩壊後の一九九二(平成四)年八月以来の大幅な下落となる中、県内ハローワーク管内別では福島(〇・九七倍)、白河(〇・九一倍)、須賀川(〇・九四倍)、会津若松(〇・八四倍)は一・〇倍を下回った。今後さらに厳しさを増すとの見方もあり、予断を許さない状況が続く。
◆ 関連記事 ◆
『『コロナ休業⇒コロナ失業』へ ~歴史的な失業時代が到来する』
7月16日の福島民報 朝刊の第一面は極めて衝撃的でした。
福島県内のハローワークは14の管轄区に分かれていますが、その中でも主要となる4つの管轄区(福島、白河、須賀川、会津若松)の有効求人倍率が「1.0」倍を切ってしまったというのです。
この1倍を下回るのは福島では「7年9か月ぶり」、白河では「6年11カ月ぶり」といいますから、今回の求人状況の悪化はいかに衝撃的であるかを如実に物語っています。つまり、福島県では東日本大震災以来の求人倍率の下落に見舞われたということ。そして、おそらくはこの傾向は今後も継続するものと思われます。
福島県における求人倍率については、注目すべきポイントがあります。
上のグラフは主だった管轄区の有効求人倍率の推移を表したものですが、「相双(そうそう)」地区の求人が群を抜いて突出しているのが分かります。
相双地区とは、福島県の沿岸部を含む「相馬地域」と「双葉地域」を合わせた地区です。
ここは東日本大震災で甚大な被害を受け、しかも「東京電力福島第一原発」を含む地区です。この地区では現在も災害復興事業が継続されており、建設土木分野を中心に高い求人が寄せられています。
ちなみに、福島県全体の有効求人倍率は、
2020年1月:1.44
2月:1.37
3月:1.36
4月:1.32
5月:1.23
──といったように減少傾向を示していますが、それでも「相双地区」の求人が下支えしているのは間違いありません。
つまり、仮に「相双地区」を除外して求人率を集計すれば、既に福島県内は「1.0」を切りそうな水準かもしれないということです。
山形県の求人も極めて厳しい状況
求人倍率の急激な下落は何も福島県に限ったことではなく、隣接する山形県も極めて厳しい状況に置かれています。
◆ 出典記事 ◆
『新規求人、0.47ポイント急下降 県内4月・全業種で控える動き』
~2020年5月30日 山形新聞~
山形県では新型コロナの影響で全業種で求人を控える動きが見られ、4月の新規求人倍率は「1.51倍」と前月比で「0.47ポイント」も急下降しました。しかも、「正社員」の求人については、今年の2月時点で既に1.0を切っている状況です。
地方の凋落はコロナのせいだけではない!
今回は東北地方、筆者の暮らす福島県とお隣の山形県の求人の状況を紹介しましたが、なにもこの2県に限らず、求人の低迷は全国レベルで進行しているものと思われます。
これも一重に新型コロナウイルスの影響によるものと考えられますが、忘れてはならない重要なターニングポイントが一つ存在します。
──それは2019年10月1日から施行された「消費税増税」です。
上に紹介した記事『日本経済を粉飾する安倍首相 ~GDP年率6.3%減でも「緩やかに回復」』は2020年2月22日に発信されたものですが、この時点で2019年10月~12月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動を除いた実質で前期比の「1.6%減」、この状態が1年続いた場合の年率換算は「6.3%減」にもなることを報告しています。
そして、このような状況をもたらしたのは言うまでもなく2019年10月1日から施行された「消費税増税」であり、それはすなわち「アベノミクスの失敗」を意味するものです。
つまり、日本は新型コロナが本格的に蔓延する以前から、アベノミクスの大失敗により経済がどん底の状態にあったということ。そして、その後の新型コロナの影響により経済がさらに低迷し、地方の求人の下落に始まる歴史的失業時代に突入したというわけです。
老舗百貨店「中合」の閉店は新型コロナが原因ではない!
福島県の県庁所在地は「福島市」です。
ちなみに、福島市にはかつて福島駅前に5店舗もの百貨店がひしめいておりましたが、2020年7月現在は143年もの歴史を誇る老舗の『中合』百貨店ただ1店舗のみとなっております。
しかし、この『中合』ですら、2020年8月末日をもって閉店することが既に決まっているのです。これで県庁所在地の福島市から百貨店がなくなってしまうのですが、こうなってしまった原因は一体どこにあるのでしょう?
閉店に際し、5月26日の記者会見に臨んだ『中合』の社長、黒崎浩一氏はここで極めて重要な発言をしています。
◆ 出典記事 ◆
『福島の老舗百貨店閉店へ 中合、146年の歴史に幕』
~2020年5月26日 産経フォト~
黒崎社長は「百貨店を取り巻く環境は厳しくなっている」とした上で、閉店に際しては「新型コロナウイルスの影響は直接にはない」と、否定しています。
つまり、2019年10月に施行された消費税増税が収益に大きく響いたというのです。
地方都市では求人が軒並み下落している状況です。
その原因が新型コロナウイルスにあることは当然肯定しつつも、安倍政権によるアベノミクスの失敗、そして、その後の消費税増税にその根源を見いだせることは、いくら強調してもし過ぎることはない厳然たる事実なのではないでしょうか?
コメント