Introduction:まず最初に申し上げたいのは、日本で新型コロナの影響が小さくて済んだのは単なる「偶然」だったということです。
これは政府の広告塔・機関紙と揶揄されている讀賣新聞ですら認めています。
安倍首相は25日の記者会見の席上、「わずか1カ月半で流行を収束させた。日本モデルの力を示した」と言って胸を張りましたが、すべてが後手後手の対応で足を引っ張っていたのは、他ならぬ安倍首相でした。
とかく上滑りで私たちの心に響くことがなく、宣伝めいた仰々しい安倍首相の言葉こそ、悪質な ”印象操作” ではないでしょうか?
讀賣のコラムには笑ってしまった
5月26日の讀賣新聞 朝刊一面に掲載された編集局次長、滝田恭子氏によるコラムに、筆者は思わず吹きだしてしまいました。タイトルは『偶然頼みから脱したい』
日本におけるコロナ対策の実態を、この一行で言い表している意味において実に秀逸なコラムですが、内容においても深く頷くに十分なものでした。
つまり、厳しい都市封鎖を行った欧米各国に比べ、なぜ日本では死亡者が人口当たりで数十分の一に留まったのか?「重症化を防いだのは医療水準の高さか、マスクや手洗いなどの生活習慣か。日本人に多い遺伝子のタイプがウイルスに強いのか。あるいは偶然の産物か」──滝田編集局次長は素直に首をかしげているのです。
確かに、日本の被害が比較的軽微だった要因については、分からないことばかりです。
医療水準は高いのですが、度重なる ”合理化” のせいで医療体制が緊急事態仕様になっておらず、医療崩壊を恐れた政府が意図的にPCR検査を避けてきた実態がありました。
また、マスクについては他国手比べ、恒常的に使用している人が多いのは事実ですし、きれい好きな日本国民は手もよく洗い、家に入るときは靴も脱ぎます。とはいえ、それがコロナに対してどんな利点があるのか科学的に証明するのは少し難しい。ましてや日本人特有の遺伝子タイプに至っては、後年の研究者に任せるしかありません。
要するに、滝田氏の指摘するように ”偶然の産物” であった可能性も否定できないのです。
ところが安倍首相は、25日の記者会見で「わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。正に、日本モデルの力を示したと思います」などと言っているのです。讀賣の編集局次長ですら「原因がわからん…」と認めているのに、安倍首相は一体何を指して ”日本モデル” と言っているのでしょうか?
安倍首相の言っていることは皆目見当もつきませんし、もしかしたら日本でのコロナの状況をきちんと理解していないのかもしれません。だから、収束できたことを科学的根拠もない中で ”なんとなく曖昧に” 日本モデルと呼んで自画自賛し、一人ほくそ笑んでいるのかもしれません。
もっとも、意識して「偶然であること」を指しているのなら話は別です。鎌倉時代の2度にわたる「元寇」の際、”偶然” にも神風が吹いて日本は難を免れたことを指して、「偶然こそが日本モデル」だとするのであれば、安倍首相はなかなかの歴史通でもあります。
安倍首相は中身のない空虚な存在だ
安倍首相の記者会見は「言葉が薄っぺら」「原稿の棒読み」「気持ちが伝わらない」などと散々酷評されています。しかも、30年近い政治家のキャリアを誇り、首相としての在任期間においても頂点を極めておきながら、安倍首相はとにかく活舌が悪く、喋りが下手くそです。
会社の新人ですら3年も経てば立派な語り手に成長しますが、安倍首相に至ってはこれまで数千回もの演説をこなしておきながら、これほどまでに成長しない人間も珍しい。安倍首相の喋りが会社の新人以下なのは、一重に原稿の中身をきちんと理解していない(理解できない)ためだと思われます。
もし、原稿が頭に入らないというのであれば、プロンプターを使っても一向に構いません(実際に使ってますが…)
それよりも大切なのは、人間として、政治家として、首相として「伝えたい何か」を持っているのか? ということに尽きます。
──おそらく安倍首相にはこれがないのです。「伝えたい何か」などまるで持たない、中身のない空虚な存在なのかもしれません。
安倍首相は、新型コロナの深刻さについて、実はまるで実感がないのかもしれません。だから、ライターの書いた原稿も理解できず理解しようともせず、それでも「何か格好いいことを言いたい!」「何か凄いことを言いたい!」「自分を良く見せたい!」という思いばかりが空回りし、結果、仰々しく中身のない、掛け声ばかりの会見になってしまうのでしょう。
2次補正予算は安倍首相による「印象操作」である
安倍首相は ”中身のない空虚な存在” との仮説を立ててみましたが、それを裏打ちするのが25日の記者会見であったとも言えます。この会見では、新型コロナウイルスに対する「緊急事態宣言の解除」を発信し、合わせて今後の補正予算についても内容が発表されました。
この2次補正予算「200兆円」については安倍首相曰く、GDPの4割に上る ”空前絶後” の規模で、”世界最大の対策” と銘打っています。しかし、実際は1次補正予算と合わせた額が200兆円であって、それらはあくまで ”事業規模” の予算でしかなく、肝心の真水部分は1次補正予算と合わせても50兆円にも満たないのではないかと、一部では囁かれています。
少し具体的な話をすれば、例えば「特別家賃支援給付金」はどうでしょう?
これは、店舗の家賃負担を軽減するため、最大600万円の給付金を新たに創設するというものです。
個人経営の小規模な飲食店、居酒屋などは新型コロナの影響をもろに受け、存続が危ぶまれているのは皆が知る通りです。そんな中で600万もの支援金が給付されれば大変ありがたいと誰もがそう思いますが、現実はそんなに甘くはない。
この制度の問題点は、「中小企業」と「個人事業主」との間で差別化が図られていることです。つまり、中小企業であれば最大600万円貰えますが、個人事業主であれば最大でも半額の300万円しか貰えないのです。
中小企業 | 個人事業主 | |
店舗1つ | 月額50万円 (6カ月300万円) | 月額25万円 (6カ月150万円) |
店舗複数 | 月額100万円 (6カ月600万円) | 月額50万円 (6カ月300万円) |
「特別家賃支援給付金」制度については、上の表を見れば一目瞭然です。
最大600万円などと謳っておきながら店舗が1つの場合は、中小企業の場合だと「50万円 × 6カ月」の300万円に留まりますし、個人事業主に至ってはその半額「25万円 × 6カ月」の150万円しか貰えません。
その制度の他にも、一人親世帯に「最大5万円」を支給であるとか、医療従事者には「最大20万円」を支給するなど、額が少なくて噴飯ものですが、実際の支給額についてはこれも調べる必要があるでしょう。
このように、安倍首相の言葉には必ず ”裏” があるので注意が必要です。
「最大…」という言い回しに、カラクリが潜んでいます。確かに、最大○○円支給されるケースもあるのですが、条件によってはその半額、酷い場合は4分の1しか貰えないケースもあるのです。
──これを「印象操作」と言わずして、何と形容したら良いのでしょうか?
政治ジャーナリストの野上忠興(のがみ ただおき)氏は、安倍首相の持つコンプレックス、例えば ”勉強しなかったことによる学歴コンプレックス” などから、その裏返しとして過剰なまでに自身を大きく見せようとするタイプではないかと分析しています。
その一つの現れが、今回の2次補正予算に見られる「空前絶後」「世界最大の対策」といった北朝鮮ばりの仰々しい飾り言葉だったりするわけです。
今どき「空前絶後」なんて言葉はお笑い芸人でも使いませんし、安倍首相が放った対策は、もちろん世界最大ではありません。
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