山本太郎『僕にもできた!国会議員』を読み解く ~安倍首相の戦略が見えてきた!

Introduction:「はっきり言って、売れてません。この本、売れてません(笑)」

11月16日の福島県郡山市。200人もの聴衆を前にして自虐的とも言えるコメントで笑いをとった山本太郎氏。

しかし、どうしてどうして、極めて興味深い、面白い本であるというのが率直な印象です。

様々な視点から読むことができますが、自民党の不毛な戦略が炙り出されたのは一つの成果でしょう。

山本太郎による「未来予想図」

2019年11月16日 福島県郡山市の駅前街頭で演説する山本太郎(撮影:白坂和哉)

2019年7月の参院選において、比例区のすべての候補者の中で最多となる「約99万票」を集めながら、惜しくも参議院を座を失ってしまった山本太郎。

しかし、今や彼は「政党」れいわ新選組の代表として、さらにパワーアップして全国を飛び回っています。喜々としたその姿は、まるで自分の現状を楽しんでいるかのようにも見えます。

そのような中で上梓されたのが、山本太郎による『僕にもできた!国会議員』(筑摩書房)です。この中で山本太郎は、参議院議員としてのこれまでの6年間を振り返り、また、山本太郎と関わった政治家や経済学者との語らいの中で、今後たどるべき日本の道筋をもさくしています。

この本は、山本太郎による過去の集大成と「未来予想図」です。

自民党の政策はあまりにも不毛だ

首都大学東京の教授、憲法学者・木村草太氏との対談「第6章 木村草太氏と憲法を語る」はとても充実しており、様々な見方ができるのでしょうか。

その中で木村氏は、日本がアメリカから武器を爆買いしていることに触れ、興味深い発言をしています。

「経済的に縮小しているというか、かつてほど勢いがなくなっている日本の局面の中で私が一番気になってるのは、それによって日本人の自尊心みたいなものが縮小していることです。強い武器を買うと自尊心を満足させられるので、多少不合理でも喜ばれてします

ここでは日本人の「自尊心」がポイントになっています。
木村氏に言わせれば、アベノミクスによって株価を高くする政策も自尊心をくすぐるといいます。逆に言えば、福祉や生活保護では日本人の縮小した自尊心は満足させられない。

このことに関連して、もう一冊の書籍を紹介します。
橘玲(たちばな あきら)氏の『上級国民/下級国民』(小学館親書)では、日本人の中に蔓延るナショナル・アイデンティティを誇示する人々、つまり、日本人であるという以外誇れるものがない人々が嫌韓・反中の「ネトウヨ」ということになります。

そして、ここでいう「ネトウヨ」も、『上級国民/下級国民』でいうところの「下級国民」に該当してしまうことをこの書籍では暗示しています。
また、橘氏は現代社会を「知識社会」であると定義し、この知識社会では人々が「知識」によって分断されると指摘しているのです。

このことを念頭におくと、アメリカで起こったトランプ現象についても、アメリカ社会は人種対立ではなく、新上流階級と新下流階級とに分断されていることから生じたということで説明がつきそうですし、ブレグジットに揺れるイギリスも同様の分断を抱えていることから起こったとも言えます。

ここで 『僕にもできた!国会議員』に話を戻すと、安倍政権が支持される理由や、安倍政権の政治戦略が露出してきます。

つまり、アベノミクスによって株価が上がったりGDPが増えたといっても、一部の富裕層にお金が還流していることが実態にも関わらず、自尊心が満足する人々がいる。
アメリカから戦闘機や武器を法外な値段で買うことによって、自尊心が満足してしまうような層が確実に増えつつあるということ。

逆に言えば、日本がそのような国家予算の無駄遣いをし、人々の生活がますます苦しくなることで社会の分断が進行すればするほど、自尊心を失った人々は安倍政権への支持を鮮明にするというパラドクスが生まれるわけです。
――これが安倍政権が支持される理由であり、安倍政権の戦略となっています。

山本太郎の政策は自民党と完全真逆である

こうして考えると、山本太郎の政策は自民党のそれと逆の方向、完全に真逆であることが分かります。

自民党の政策は国民を疲弊させ、社会を分断させることによって生み出される不毛な状況に立脚しています。
一方、山本太郎は疲弊し、分断された個々の(それは、もしかしたら自殺してしまうかもしれない)人々に向かって語りかけます。

安倍政権の政策によって人々は益々孤立し分断されてゆきますが、山本太郎はそのよう人々を糾合し、一人でも多くの人々を救うにはどうすれば良いかを考えている。

そのために掲げられたのが、「消費税の廃止」「最低賃金1500円」「奨学金徳政令」といった具体的な政策だと考えられます。その意味において、山本太郎を「左派ポピュリスト」と形容する向きもあるようですが、それなりに的を得ていると思われるのです。

※この場合の「左派ポピュリスト」とは、個々の柔軟で緩い繋がりにより、政治的なダイナミズムを生み出す者、として捉えています。

『僕にもできた!国会議員』(筑摩書房)
序 章 議員になってからを振り返る
第1章 山本太郎にもできた!
第2章 なぜ、小沢一郎氏と合流したのか? そしてなぜ、牛歩をしたのか?
第3章 山本太郎、今、改めて原発・被曝問題を語る
第4章 山本太郎、経済政策を語る
第5章 山本太郎が皆さんからの質問に答えます
第6章 木村草太氏と憲法を語る
第7章 山本太郎と愉快な仲間たち

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