Introduction:日本が議長国を務めたG20に際し、不公平で片務的だとして、アメリカ・トランプ大統領が表明した日米安保条約の破棄、見直しについては、日本の各方面で物議を醸し出しました。

菅官房長官は「全体としてみれば日双方の義務のバランスは取れており、片務的との指摘は当たらない」との談話を発表しましたが、日米安保についてのトランプ大統領の不満は、実は半年も前から安倍首相に伝えられていたことが、後になって分かりました。

安倍首相を始めとする日本政府は、長いことトランプ大統領の要請を無視していたわけですが、このままで済むとは到底思われません。

安倍首相はトランプ大統領の真意を完全に読み違えています。
トランプ大統領は日米安保に対し、実は「本気」なのです。

『トランプ自伝』に重要な記載がある

ドナルド・J・トランプ & トニー・シュウォーツ
『アメリカを変える男―― トランプ自伝』
(早川書房)

1987年。
41歳のトランプ氏は、ニューヨークを始めとする不動産取引で巨万の富を築いていました。
この時点での彼の資産は30億ドルに達し、マンハッタンに68階建て超高層ビル「トランプ・タワー」を建設し、4つのカジノを所有しています。

自他ともに認める、この情熱的な ”取引の天才” は同じ年の1987年、早々に自伝本を出版します。タイトルは ” The Art of Deal ”
日本では翌年1988年10月に、『アメリカを変える男―― トランプ自伝』として早川書房から出版されています。

自伝といってもこの本、端的に言うならば、トランプ氏がそれまで手掛けてきた事業を総花的に紹介することで大部分が占められる、いわば ”自慢話集” といった趣の書籍です。

ただし、 一番最後に書かれた、たった3ページの「訳者あとがき」の、それもまた一番最後の9行に、極めて重要なことが書かれていることを、このたび発見しました。

30年以上も前から日米安保に不満を抱いていた

昨年の九月、トランプは十万ドル近い金を投じてアメリカの主要新聞に広告を出し、レーガン政権の対外政策を批判した。こうした動きから、彼が政界への進出をねらっているのではないかと憶測する向きもある。トランプ自身は大統領選に出馬する意志は今のところないことを明らかにしている。

けれども、元モデルでチェコのスキー選手だった美しい妻イヴァナは言う。
「あと十年たってもドナルドはまだ五十一歳です。そう際限なくカジノを所有したりビルを建てたりするわけにいきませんから、いずれドナルドは他の分野に目を向けるでしょう。それは政治かもしれないし、何か別のものかもしれません。大統領選挙へ出馬することも絶対にないとは言いきれません」

いずれにしても、今年まだ四十二歳というこのエネルギーに満ちあふれた男が、現状のままにとどまっているとは思えない。トランプがニューヨークを、そしてアメリカをどのように変えていくか、まさに興味津々といったところだ。
~ ドナルド・J・トランプ & トニー・シュウォーツ
『アメリカを変える男―― トランプ自伝』 (早川書房) ~


上述した「訳者あとがき」で重要なポイントは2つあります。
 一つ目は、10万ドルの私財を投じて主要新聞に広告を出したこと。
 二つ目は、彼は大統領選に出馬する可能性があったこと。

今回、取り上げるのは一つ目のポイントです。
ただし、訳者あとがきには「新聞に広告を出した」としか記載がなく、それが具体的にはどのようなものであったのかは、皆目わかりませんでした。

しかし、この謎を解く記事が、7月2日の東京新聞に掲載されたのです。
それは、ジャーナリスト・木村太郎氏による「太郎の国際通信」です。
『32年前の意見広告』と題された記事では、トランプ氏がどのような内容で広告を出したのかを紹介しています。

見出し:米国の外交防衛政策には、さまつな、しかし基本的な問題を解決できない欠点がある
小見出し:自衛能力ある国々に対して米国が防衛を負担すべきか、ドナルド・トランプ公開書簡

「われわれのものでもない船が、われわれが必要としているわけでもない石油を、われわれの同盟国でありながらわれわれをたすけようともしない国々に運ぶのを、われわれがなぜ守らなければならないのか、世界はわれわれの政治家を笑っている」

この意見広告は1987年9月2日、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ボストン・グローブの三紙に掲載され、そのためにトランプ氏は 94,801ドル(当時の日本円にして約1,157万円)を自費で支払っています。

この記事は「長年日本および多くの国々は、合衆国をいいように利用してきた」で始まり、日本やサウジアラビアの ”安保タダ乗り” の事例が挙げられ、「これら同盟国にも自らの防衛責任を果たしてもらい、米国がお人よしと笑われるのを止めねばならない」で締めくくられています。

1987年当時、トランプ氏は大統領選に出馬することを真剣に考えていたようですが、最終的には断念した経緯があります。

それでも、選挙を控えた候補者がよく使う手口としての自伝本の出版や、意見広告の掲載といった動きは、大統領選については決してブラフではなく、トランプ氏が本気で志向していた様子を十分に感じ取ることができます。

また、日米安保については、その後もトランプ氏が事あるごとに言及していることから、単なる選挙を意識したパフォーマンスなどではなく、基本的な彼の主張であることは、もはや疑いようのない事実として立ち上がってきます。

つまり、日米安保の見直しについて、彼は「本気」なのです。

2019.07.02 東京新聞『太郎の国際通信』

トランプ大統領は日米安保に何を求めているのか?

ウィリアム・F・ハガティ 駐日米国大使
Photo by : 在日米国大使館・領事館

7月2日、ハガティ米駐日大使は、東京都内で行われた佐々江賢一郎・前駐米大使との公開対談で、トランプ大統領が日米安保についての不公平や片務性を語ったことについて「軍事支出をしない同盟国へのいら立ちを表明したと思う」と説明しました。

ハガティ氏の話を要約すると次のようになります。 

  • トランプ大統領は、日米安保は揺るぎないものであり、さらに強化したいと思っている。
  • 2000年以降、中国の軍事費は5倍以上となり、アメリカの軍事費も拡大していることから、中国への対応は重要である。
  • そのための日米の連携を深める手段としては、次の3点が挙げられる。
    1. 軍事支出への支援
    2. 既に進行中の高度な技術へのアクセス
    3. 米軍と自衛隊の相互運用性の向上

ハガティ氏が挙げた最後の3点については、具体的な説明が必要でしょう。

1.軍事支出への支援について

ご存知の通り、在日米軍に対して日本は多額の経費(俗にいう思いやり予算)を支出しています。
この要求は、在日米軍の駐留経費について、日本にさらなる負担を求めるものです。

2.既に進行中の高度な技術へのアクセスについて

日本では、アメリカからの兵器爆買いが問題となっております。例えば、1機あたり147億円もするF35を、100機以上も購入する、といった話です。
この要求は、日本にさらなる兵器の購入を求めるものです。

3.米軍と自衛隊の相互運用性の向上について

日本とアメリカとの間には、様々な ”密約” があることが現在では分かっています。
この要求については、次の二つの密約について触れているものと考えられます。
基地権密約:米軍は日本の基地を自由に使うことができる
指揮権密約:米軍は日本の軍隊を自由に使うことができる

つまり、日本の自衛隊と、それに付随する基地などのすべては、有事には米軍の指揮下・傘下に置かれることが密約によって取り決められているわけです。
その意味で、現在、安倍首相が進める憲法に自衛隊を書き込む、といった目論見もこの要求に絡んでいると思われます。
つまり、この要求はこれまで密約として認識されていた米軍の権利の、明文化を求めるものです。

【 結 論 】

トランプ大統領は日米安保について「不公平」「片務性」を口にしてきましたが、では安倍首相がそうする(可能性は高いのですが)、トランプ大統領の要求に従い、日米安保の見直しを図ったらどうなるのでしょうか?

書くまでもなく、答えは明白です。
消費税増税が実施されようとしている最中、老後の生活費が問題となっている最中にアメリカに金を献上し、アメリカからさらに武器を買わされ、そしてこれは極めて重要なことですが、自衛隊が米軍の ”下請け” になるということです。

アメリカは中国との経済戦争に邁進していますが、核を保有する大国同士は戦争は行いません。しかし、”代理戦争” であればその限りでありません。
――経済大国日本は、金を吸い取られた挙句、中国との代理戦争をやらされるかもしれません。

この記事を書いた人:白坂和哉主催者

投稿者プロフィール

ニュースサイト『白坂和哉 デイ ウォッチ』を主宰しています。
ご質問・お問い合わせについても承っております。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

主催者:白 坂 和 哉 -shirasaka kazuya-

主催者:白坂和哉

『白坂和哉 デイ ウォッチ』にようこそ。
このサイトを運営している
白坂和哉
(shirasaka kazuya)です。
 
「突き刺さるニュースサイト 」をモットーにしています。
最近のメディア、特に新聞はどれも同じようなことが書かれていると思いませんか?
それでも、怒り、憎しみ、タブー、そして、神々しいまでの慈悲といったように、人は複雑なマインドを持って生きております。
そんな貴方の胸に突き刺さるニュース、切り口の違うニュース、さらに深掘りしたニュースをお届けしたいと思っています。
ページ上部へ戻る