なぜ朝日新聞は保守派に嫌われるのか?~吉村大阪府知事の往来自粛要請から考える

国内社会

Introduction:なぜ、朝日新聞は保守派から嫌われるのか?
ちなみに、雑誌『正論』の元編集長である上島嘉郎(かみじま よしろう)氏は、「反日」について、次のように述べています。

『私の考える反日とは何かと申し上げると、それは事実に基づかない、あるいは歪曲や捏造をもって日本人と日本国の名誉を貶める、国益を損なう言動を続ける──これが私の考える「反日」です』

さて、この発言で名指しこそされないものの、「反日」であると集中砲火を浴びているのは、上島氏の属性を考慮すれば『朝日新聞』であることに異論はないはずです。

今回はなぜ朝日新聞は「反日」なのかというよりも、なぜ朝日新聞は保守系の論客からかくも嫌われるのかについて、吉村大阪府知事の往来自粛要請から考えてみたいと思います。

朝日新聞には親ソ派・親中派が混じっている?

私は先ほど、朝日は戦後、親ソ派、親中派が入り混じりながら歴史を織りなしたと申し上げましたが、この「国民と共に立たん」という宣言を書いたのは後に論説主幹となって朝日の左翼論調を主導した森恭三という人物です。森さんは、中国のあの文化大革命を毛沢東思想による「道徳的人間改造」の試みだと賞賛、「毛沢東万歳」という立場を明らかにしたばかりか、自らを共産主義者だと明言してはばからなかった人です。

上島嘉郎『反日メディアの正体』(経営科学出版)

上に紹介する上島嘉郎氏は朝日新聞を蛇蝎のごとく嫌っており、朝日は「反日」であり、朝日には悲しいことに愛すべき、守るべき「日本」がないとまで言い切っています。

しかし、実際の朝日新聞がそこまでの「反日メディア」なのかと言えば、もちろん、そんなことはないと考えますが、それでもここまで嫌われる理由は確かに存在します。

実は、先日このことを裏付ける顕著な事例がありましたので、今回紹介しましょう。大阪府の吉村知事による「大阪-兵庫 間の往来自粛要請」の記事に、それを見ることができるのです。

大阪府知事による「大阪-兵庫 往来自粛要請」

3月19日、大阪府の吉村洋文知事は「大阪-兵庫」間で新型コロナウイルスの感染拡大が急増する懸念があるとして、20日からの3連休は両府県間の不要不急の往来を自粛するよう住民に呼びかけました。

そして、これに呼応するかのように兵庫県の井戸敏三知事も同日、連休明けの24日までを目途に不要不急の往来や会合を自粛するように呼び掛けています。

確かに、大阪府や兵庫県については新型コロナウイルスの感染者数がそれぞれ120名、95名といったように関西地区では群を抜いており、それが今回の呼びかけに至ったのものと考えられますが、その他にも統計的な根拠はありました。

これについては、3月20日の読売新聞が詳しい記事を掲載しています。
記事によれば、国から派遣された専門家らによる試算があるとのこと。つまり、状況をこのまま放置すれば──

  • 19日までの間に患者が「78人」増加する。
  • 次の7日間(20~27日)に患者が「586人」となる。
  • 次の7日間(28~ 3日)に患者が「3,374人」となる。

 試算では、2週間後に重症者も227人に上るとされ、吉村知事は「この数字になれば、軽症者は病院で対応できなくなる」と、感染者数を抑制する必要性を強調した。
 兵庫県の井戸知事も「ウイルスに県境があるわけじゃない。往来をやめたから防げるかという意見もあるが、やれることをしっかりやっていく」と、大阪府と足並みをそろえる考えを強調した。

2020.3.20 読売新聞 朝刊32面【社会】

専門家資料を ”誤読” した吉村知事

この「大阪-兵庫」の往来自粛の呼びかけについては、吉村知事が Twitter に1枚のペーパーを公表しています。本来は非公開の資料ですが、事態の重大さに鑑みて吉村知事が敢えて公開に踏み切ったもです。

このペーパーは厚生労働省に関わっている専門家、北海道大学西浦教授らが作成した資料であることが分かります。ただ、資料の後半部分が欠けておりましたので、あらためて ▲ 上に掲載しました。
赤い線が引かれている箇所には、次のように書かれています

大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける。        

これを読めばお分かりのように、厚労省の専門家は何も「大阪-兵庫」間の往来を自粛せよと言っているのではなく、大阪も兵庫も、府内外や県内外の不要不急の往来を自粛するようにと、広範囲に渡った注意喚起を呼び掛けているのです。

つまり、吉村知事はこの資料を誤読していたのです。

朝日新聞の ”変化球” は保守派に嫌われる

ただし、吉村知事が専門家資料を誤読した云々については本質的な問題ではありません。重要なのは「この数字になれば、軽症者は病院で対応できなくなる」といった吉村知事の発言であり、この状況認識に誤りはないということです。よって、今回の吉村知事による要請は模範的でなないものの、かといって落第のレベルでもないと考えられます。

それを踏まえ、朝日新聞は上記の読売新聞と同じ3月20日に、興味深い記事を掲載しています。

『突然の往来自粛要請』と題された記事は、19日の夕方、ニュース番組に出演していた吉村知事が突然、往来自粛を要請したこと。この要請については、兵庫県の井戸知事と事前の打ち合わせなどはなかったことを伝えています。

政治の舞台裏を知る意味では興味深い記事ですが──
『そもそも電車が動いているのに、人の往来制限なんて意味ないのでは』
『そんなこと言うんやとびっくりした』
といったように、否定的な市民の意見を中心に記事は構成されています。

もっとも、そのこと自体は問題ないにせよ、極めつけは──
『大阪なんて道一本でつながっているやん。往来をとめることなんてできひんのちゃう? あー、あほらし』
との市民の声です。

Photo by : 2020.3.20 朝日新聞30面【社会】

実は、これこそが朝日新聞が得意とする ”変化球記事” なのです。
『あー、あほらし』といった市民の声を敢えて紹介することで、吉村知事を嘲笑しているわけです。

では何を嘲笑しているのかと言えば、専門家資料の誤読に対してでしょう。
朝日新聞にしてみれば──
<専門家らによる資料は大阪府と兵庫県に対し、内外の不要不急の往来の自粛を呼びかけるものであり、それを大阪-兵庫間に限定するのはいかがなものであろうか>
──と素直に書けば良いところを、誤読するなんてあほらしいとばかりに吉村知事への嘲笑記事に仕立て上げているわけです。

何も ”親ソ派、親中派が入り混じりながら歴史を織りなしている” から朝日新聞が嫌われているのではありません。

今回の朝日新聞の記事に見られるように、状況をすべて分かっていながら敢えて変化球記事を書くといった朝日のメンタリティーこそが、保守派から忌み嫌われる最大の要因だと思われるのです。

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