Introduction:5月27日の土曜日。日本はトランプ大統領一色に染まってしまった感があります。羽田空港にメラニア夫人と共に降り立った時から、その後のゴルフ、相撲観戦、そして夜の六本木の炉端焼きまで、トランプ大統領の一挙手一投足に日本中が釘付けとなりました。
しかし、我々日本人はトランプ歓迎ムードに浮かれている場合でしょうか?
日本は極めて厳しい結果となるであろう日米貿易交渉を抱えているのは周知の事実ですし、トランプ氏は安倍首相とのゴルフのラウンドの最中、安全保障についても意見交換したことを語っていることから、今後日本は更なる武器購入をアメリカから迫られるかもしれません。
日本のメディアは肝心なところを追及する姿勢を見せませんが、あたかもそんな体たらくを見透かしたように、米ワシントンポスト紙が「トランプ&安倍」の関係を皮肉交じりに書いています。
トランプを喜ばせるためだったら天皇すらも利用する
冒頭の画像は、5月24日の米ワシントンポスト紙HPですが、いきなりタイトルから皮肉満載である点がポイントです。ここには、こう書かれています。
From the emperor to sumo wrestling, Abe harnesses Japan’s traditions to impress Trump .
これを日本語に訳すと、
「トランプを喜ばせるためだったら、安倍は天皇陛下から相撲まで、日本の伝統を利用する」
ということになります。
安倍首相も馬鹿にされたものです。
ポスト紙の記事はさらに続きます。記事本文の冒頭から次のような言葉を浴びせかけます。
Perhaps no world leader has been as assiduous in flattering President Trump’s ego as Shinzo Abe. But Japan’s prime minister may have just outdone himself, pressing the country’s time-honored traditions into service for the American president’s upcoming trip.
It’s a strategy that raises eyebrows here, even as it receives a degree of sympathy. Japan’s leader is viewed as doing what needs to be done to maintain his country’s most important foreign alliance and keep a mercurial president in check.
【日本語訳】
およそ世界中の指導者の中で、安倍晋三ほどトランプ大統領のエゴイズムに熱心に媚びる者もいないだろう。だが、この日本の首相は、来たるアメリカ大統領の旅行をもてなそうとするあまり、これまでの彼以上に、日本の古い伝統文化をまさに押しつぶそうとしているのかもしれない。
ある程度共感を得たとしても、ここで驚かせることは戦略なのである。日本の指導者は、彼の国の最も重要な同盟関係を維持し、移り気な大統領を押さえるために、必要なことをしていると見なされている。
日本人の中でもよく揶揄されれるのですが、このワシントンポスト紙に描かれている安倍首相の姿は、まるで『ドラえもん』に登場する ”スネ夫” そのものです(それが気に入らなければ、王様に対する下僕、とでも言っておきましょうか)
ガキ大将でいじめっ子の ”ジャイアン” (=トランプ)に媚びへつらい、そのことで天皇陛下をないがしろにし、さらには日本の伝統文化さえも破壊してしまう安倍首相。それが、日本のために日米同盟を維持する ”戦略” であると信じて疑わないのです。
このような外交姿勢を、社会学者の宮台真司氏は「対米ケツ舐め外交」といって切り捨てました。
トランプ大統領に秘密を暴露された安倍首相
トランプ大統領という人は、(多くの人がそう感じているように)大統領には向かない性格なのかもしれません。なぜなら、外国との密約や秘密外交について、言わずにはいられないからです。
トランプ大統領は日本ヘ向かう機内で、早速次のようなツイートを投稿しています。
【日本語訳】
日本との貿易交渉において素晴らしい進展が見られた。 農業と牛肉は大いに関係している。多くのことは彼らの7月の選挙まで待つことになるが、そこで私は大きな数値を期待している!
当ニュースサイトの5月24日の記事、『トランプ大統領 来日の目的は観光旅行?』でも触れました。そこでは、日米貿易交渉と夏の参院選を巡ってトランプ大統領と安倍首相との間に密約が交わされたことを指摘しています。今回のトランプ・ツイートはそれを裏付けた格好となりました。
日本とアメリカはご存知のように、日米貿易交渉を抱えている最中にありますが、どうやら安倍首相はトランプ大統領と密約を交わしたようです。
『トランプ大統領 来日の目的は観光旅行?』
「参院選があるから、合意するのは待ってくれ」(つまりは、「国賓で来日する時は貿易交渉の件は封印して」くれと言う意味)
「その代わり、大統領選まではどうにかする」と、安倍首相はトランプ大統領に泣きついた模様です。
また、5月26日の日本経済新聞(電子版)が、トランプ大統領が投稿したツイートと、安倍首相との間で交わした密約について報道しています。
『「参院選終わるまで待つ」 日米貿易交渉でトランプ氏 米記者に意向』
2019年5月26日 日本経済新聞(電子版)
トランプ米大統領は26日朝、日本との貿易交渉について「参院選が終わるまで妥結を迫らずに待つ」と米メディアの記者に電話で語った。保守系FOXニュースのジョン・ロバーツ記者がツイッターで明らかにしたもので、参院選への影響を避けたい安倍晋三首相に配慮し、貿易交渉の合意を急がない意向を示した格好だ。
これに関連し、トランプ氏はツイッターに「(貿易交渉の)多くのことは日本の参院選が終わるまで待つことになる。そこでは大きな数を期待している!」と投稿。「日本との交渉では大きな進展がある。農業や牛肉はとりわけそうだ」とも表明した。
米国は貿易交渉の焦点である農産品の関税引き下げを求めている。しかし日本は参院選前に農家の不安を高める展開は避けたい立場で、こうした意向は米側にも伝えていた。参院選は7月が有力視されている。
日本経済新聞の記事にもあるように、7月には確実に参議院選挙が実施されます。安倍首相がトランプ大統領にそのように語りましたし、2019年の改選組が任期満了となるのが7月28日だからです。
そんなことよりも問題なのは、日本のメディアの報道姿勢です。
上記の日本経済新聞の論調はあくまで淡々と事実関係を並べるだけで、安倍首相に詰め寄り、批判する姿勢というものがまるで感じられません。
安倍首相は「貿易はトランプ大統領の要求に従う。ただ、参議院があるので発表は今は待ってくれ」と言っているのです。このことにより、日本の農業や自動車業界は大打撃を受けることは必然なのにも関わらず、安倍首相はアメリカに従属するしか能がないのです。
私たち日本国民が知らないところで、安倍首相はなにを仕出かしているのか? 安倍政権で、日本の国益は果たして担保できるのか?
メディアがここを突っ込まずして、いったいどこを突っ込むのか?という話です。
トランプ大統領のツイートについては、国民民主党の代表、玉木雄一郎氏が反応していますが、果たしてどこまで追求できるかは未知数です。
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