Introduction:7月15日、北海道の札幌駅前で行われた安倍首相による街頭演説の会場で、「安倍やめろ!」と抗議の声を上げた人を、その場にいた警察官が取り押さえ会場から排除する、といった前代未聞の事件が起きました。
この他にも、「増税反対!」を叫んだ女性も警察官に抑えられ、その場を移動させられ、また、「年金問題」のプラカードを掲げようとした女性も警察官に囲まれ、やはり歩道の隅に追いやられてしまった。
北海道警は「トラブル防止と選挙妨害の可能性」などと説明していますが、彼らに正当性はありません。これは民主主義の根幹を揺るがすとんでもない事件です。日本はいつから特高警察が跋扈する専制国家になったのでしょうか?
これこそが『忖度』の典型事例だと言う他ありません。
この件については、首相官邸から「反対者を排除せよ」との具体的指示は出ていますまい。しかし、「最近は演説するにも、色々うるさくて困るよ。まあ、警備の方はヨロシク」といった会話は当然なされていただろうと考えられます。
そして、首相官邸の意向を『忖度』した北海道警が、今回の暴挙に出たものと確信しています。
一体、なぜ人は安倍首相を忖度するのでしょうか?
「内閣人事局」が官僚人事権を牛耳っている
日本の官僚については、「人事がすべて」とよく言われます。
というのも、民間企業と違って給料に対してのインセンティブが効かないために、他のライバルとの差別化は人事面でしかなくなるためです。
よって、彼らは誰よりも先に、少しでも上のポストを目指しますし、逆に人事権を手中にできれば官僚を自由に操ることが可能です。
「内閣人事局」は、縦割り行政の弊害をなくし、政治主導の行政運営を目的として、第2次安倍内閣発足後の2014年5月に設立されました。
これまでは、各省庁の幹部人事は官僚主導で行われてきましたが、これを内閣人事局に一元化し、官邸主導のもと審議官級以上、約600人もの人事を決定するに至りました。
このことで、安倍首相の意にそぐわない官僚を要職から外すことも可能となり、首相官邸の意向に即した、端的に言えば、安倍首相の覚えめでたき官僚たちを幹部に登用することができるようになったわけです。
このことが、官僚による安倍首相への「忖度」を醸成する土壌となっていることは、言うまでもありません。
メディアの人間が首相とメシを食べている
第2次政権発足以来、安倍首相は新聞・テレビの役員、論説委員、さらには記者クラブの現場記者も時には交え、そのようなメディア関係者や、政治評論家らと定期的に会食の席を設けていることは広く知られています。
讀賣新聞の渡辺恒雄氏などはその筆頭ですが、このような大手メディアの社長・会長クラスとの懇親も兼ねた会食(俗に言う「社長懇」)が慣例化し、記事で政権批判を書けば社長に迷惑が掛かると現場記者が「忖度」することで、メディアによる安倍首相への忖度が顕在化するようになりました。
また、会食に使われる費用についても、一部では ”割り勘” で行われているとはいえ、不透明な部分も数多く指摘されており、首相官邸は情報開示にも応じてはいません。
なぜ安倍首相を ”忖度” するのか?
この方向に研究を進めた私は、アリス・ミラーとアルノ・グリューンという二人の思想家に注目しました。彼ら二人の共通の問題は、ヒトラーとその追随者・支持者はなぜ生まれたのかということでした。彼らが独立に出した答えは、子どものころに彼らが受けた、「教育」や「しつけ」に名を借りた肉体的・精神的虐待だ、というものです
ヒトラーは、父親から受けた仕打ちを、全人類に向けて復讐したのであり、同じ仕打ちを受けて育った人々が、熱狂的に同調したのだと彼らは言います。
~ 安冨歩『原発危機と「東大話法」』(明石書店)~
『原発危機と「東大話法」』の筆者である安冨歩氏とは、2019年夏の参院選で「れいわ新選組」の比例代表で立候補した「やすとみ 歩」氏のことです。
安冨氏によれば、19世紀から20世紀に、ドイツでは徹底的に厳しく子供をしつける教育が流行していたようで、ヒトラーも肉体的な虐待とも受け取れるようなしつけを父親から受けていたようです。
そして、このような肉体的(精神的なものも含めて)虐待を受けると、他人に対して暴力を振るうことが ”真に愛すること” である、といった倒錯した信念が生まれ、似たような境遇で育ってきた者たちが集まり、傷を舐め合うことでファシズムが形成されたという仮説を立てています。
この考えは、安倍首相を考えるうえでも重要です。
安倍首相は、虐待こそされていませんが、精神的に全く満たされない幼少期を送ったのは、ほぼ間違いありません。
両親が不在であることが多く、乳母兼養育係の女性に育てられました。また、友達も少なく、乳母や家庭教師が遊び相手となりました。
(※自民党の平沢勝栄・衆議院議員なども大学時代に安倍首相の家庭教師を務め、よく遊びに連れていったと回想しています)
安倍首相は、両親が揃ってする食事などの団欒に、強く焦がれていたと当時を振り返っています。
そして、ヒトラーが父親から受けた仕打ちを全人類に対して復讐したように、安倍首相もまた、我々日本人に対して復讐しているのが現在の姿です。
第1次政権の ”トラウマ” が火をつけた
第1次安倍政権は、わずか1年で崩壊したことは、まだ我々の記憶に新しいでしょう。
あの時、安倍政権では閣僚の不祥事や失言が相次ぎ、そのことであらゆるメディアに叩かれ、結果として支持率が急落し、最後には、”完治しないため難病に指定されている” 持病の潰瘍性大腸炎が悪化、「腹が痛い」といって首相を辞任したわけです。
いわば、1億2千万の日本国民によって首相の座を引きづり降ろされたわけですが、このことは安倍首相にとって完全に ”トラウマ” になっているわけです。
少年時代、精神的に満たされずアダルトチルドレンとして育った安倍首相でしたが、それでもなお、現在は再び首相として返り咲いているわけです。
――「なぜ人は安倍首相を ”忖度” するのか?」
そんな安倍首相の片棒を担ぎ、忖度することで安倍首相のインナーサークルに入りこむ人間たちがいるからです。
彼らもまた、満たされない幼少期を過ごした同類の輩なのではないか?
そして、トラウマになるほど屈辱を合わせた日本国民に対して、共に復讐をしているのが、現在の日本の姿なのではないでしょうか?
コメント