日本が北朝鮮交渉から弾かれる日 ~孤立するニッポン

政治

Introduction:安倍首相が議長を務めたG20サミットが29日に閉幕しましたが、どれ程の成果があったのか総括する前に、G20の余韻は跡形もなく吹き飛ばされました。

言うまでもなく、30日に「米朝首脳会談」が電撃的に行われたからです。
今や世界の耳目はトランプ大統領と金正恩委員長に集まり、安倍首相が議長を務めたG20など、まるで遠い昔の出来事となりました。

この米中首脳会談により、安倍首相の外交政策は完全に輪郭を失ったと言わざるを得ません。
安倍政権は今、どこに向かっているのでしょうか?

安倍首相の想定がすべて台無しになったG20

実は、G20はG7の後に行われるのが慣例となっていました。しかし、今回は議長を務める安倍首相が慣例を変更し、G7の前にG20を実施しました。
これは一にも二にも来る参院選を見据えたもので、G20でなんとか実績を残し、「外交の安倍」をアピールすることで、参院選を優位に進めたいという安倍首相の目論見がありました。

そのために、安倍首相は世界中が注視しているイラン問題や、米中経済戦争に対しての論争を見送り、首脳宣言についても「自由、公平、差別のない貿易と投資環境の実現に向け努力」といった、玉虫色の文言を採用することで自身の実績としたわけです。

つまり、いつものようなアメリカに対する配慮、対米従属路線を踏襲した綺麗な国際セレモニーで幕引きを図る計画でした。

ところが、トランプ大統領が口にしていた「日米安保」の片務性や改正について、実は半年も前から安倍首相に伝えられていたことが分かり、これまでの「トランプ大統領からそのような話はなかった」とする政府の説明が、実は嘘だったことが露呈します。

安倍首相、とどめを刺される

そしてクライマックスはG20の後にやってきました。
安倍首相も、日本の外務省筋もまるで知らされていない中で、トランプ大統領と金正恩 朝鮮労働党委員長 との電撃的な米朝会談が行われたのです。そして、その場にはG20で安倍首相が会談すら拒否した韓国の文在寅大統領も仲介役として居合わせたことで、安倍首相は完全にとどめを刺された格好になりました。

今やG20のことなど誰も口にしません。そして、「トランプ大統領との蜜月」や「外交の安倍」というのは、実はすべて日本政府のでっち上げだったということが異様なまでに露出しています。

ある意味、トランプ大統領は正直者だ


~ 2019.6.25 Bloomberg by Jennifer Jacobs ~
” Trump Muses Privately About Ending Postwar Japan Defense Pact ”

アメリカのブルームバーグ通信が6月25日に発信した記事 ”Trump Muses Privately About Ending Postwar Japan Defense Pact” (トランプは戦後の日米防衛協定の終結について思いをめぐらしている)は、日本のメディアでも大きく取り上げられました。

この記事によれば、トランプ大統領は側近との私的な会話の中で、日米安保条約の離脱を表明したとか。ただ、もう少し詳しく見てみると、彼自身は離脱までは求めてはおらず、それでも日米安保の「片務性」「不公正」を問題にしているようです。

そして、G20(主要20カ国・地域首脳会議)開催前の6月24日には、次のようなツイートをトランプ大統領が行っていることも分かっています。

中国は91%の石油をホルムズ海峡経由で得ており、日本は62%、他国も同様だ。なぜ米国は他国のために長いこと無報酬で航路を守っているのか?危険な航路を航行する船を持つこれらの国々は、自分たちで船を守るべきなのだ。アメリカは世界最大のエネルギー生産国となったので、我々はもうそこにいる必要すらない。アメリカのイランに対する要求は極めてシンプルだ。
――核兵器を持つな。これ以上テロリストを支援するな。

このような日米安保に関する不満は、何も今に始まったわけではありません。
トランプ氏が大統領選への立候補を表明した2015年から言い続けてきたことで、さらには約30年前には資材10万ドルを投入し、 日本やサウジアラビアの防衛に金を使うことに反対する意見広告まで出している程です。

日本の政府としては、米軍基地のために土地を提供し、なおかつ思いやり予算に象徴される多額の駐留費を負担していることから、日米安保に片務性はないとの見方を堅持していますが、トランプ大統領にそのようなロジックは通用しません。

トランプ大統領に言わせれば、上記のホルムズ海峡のタンカーの事例にも見られるように、米軍がホルムズ海峡まで出張った場合、ひとたび紛争が起これば米兵は死ぬかもしれない。だから、日本も同様に兵士を出せと、シンプルな理屈で攻め立てているわけです。

トランプ大統領を封じ込める

今回のトランプ大統領の発言は、考えようによっては日本にとって大いなるチャンスとも言えます。

日米安保条約は、具体的な細則を「日米地位協定」で取り決めていますが、日本を締め付ける要因として、最近になってこれがようやく一般にも認識されてきました。

よって、トランプ大統領の要求にしたがって日米安保に見直しをかけるのであれば、必然的に日米地位協定にも手が入ることになります。これはアメリカにとっては避けて通りたいはずです。だから「――それでもいいのですか?」とトランプ大統領に質問することから日本の戦略は始まります。

東アジアの和平プロセス

アメリカと北朝鮮は、一時期戦争寸前にまでなったと言われていますが、実際蓋を開けてみると、和平的なプロセスが進行中であることが分かります。

トランプ大統領の呼びかけによる、6月30日の電撃的な米朝会談は明らかに次の大統領選を視野に入れたものであることは明白で、であればなおのことトランプ大統領は戦争はまったく望んでいないと考えられます。

また、北朝鮮にしても金一族(ロイヤルファミリー)の身の保証と、経済制裁の解除と援助を最優先にしており、戦争は指向していないと思われます。よって、北朝鮮との交渉次第では早急な非核化は困難であるにせよ、現状維持を図ることは可能なのではないでしょうか。

このような状況下で日本が選択すべき道は、まさに東アジアの和平プロセスに乗り遅れないことになります。

日本は六カ国協議から外される?

――トランプ大統領が南北非武装地帯(DMZ)に赴き、韓国の文在寅 大統領の仲介のもと、北朝鮮の金正恩 朝鮮労働党委員長と電撃会談を行った。

――中国とロシアはそれに先立ち、習近平 国家主席、プーチン大統領が金正恩と会談を行っていることから、彼らは金正恩の後ろ盾になっているといった ”演出” に余念がない。

こうしてみると、日本だけが妙に浮いています。

ここで注意しなければならないのは、30日に行われた米朝会談に絡んでいない国は、 六カ国協議の該当国(日・米・韓・北・中・露)の中で、実は「日本」だけといった状態になっていることです。

本当に絡んでいるか極めて微妙な中国、ロシアもそれぞれ声明を出し、北朝鮮の和平プロセスに積極的なのです(少なくとも、そのように見せかけています)

その中で日本の安倍首相は、7月に行われる参院選において「憲法改正」を争点とすることを既に表明しています。つまり、憲法9条に自衛隊を明記することを強く望んでいる。

このことが、「 米・韓・北・中・露 」から、日本がどのように見られているか、安倍政権は真剣に考える必要があるでしょう。

トランプ大統領はスピード感のある政治を旨としております。
彼は北朝鮮の意向もくみ取ることで、最悪の場合、日本は六カ国協議からはじき出されてしまう可能性すら浮上していると考えられます。

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