Introduction:「桜を見る会」では ”四面楚歌” の感ある安倍首相。
その流れを受けるように週明け25日の新聞各紙は、報道機関が行う各種世論調査で安倍政権への支持率が軒並み下がったことを伝えています。
20日には桂太郎を抜き、通算在任日数で憲政史上最長となった安倍首相ですが、と同時にその迷走ぶりも日々混迷を深めているかのように見えます。
今回はそのような安倍首相に関する「3つの疑問」について考えてみたいと思います。
安倍首相は衆院解散をするか?
このニュースサイトでは、10月から11月にかけて衆議院が解散され、政権交代が起こると大胆に予想させていただきましたが、どうやらその通りにはならない模様です。
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『2019年「政権交代」は山本太郎と共産党によって起こされる』
ただし、現在の野党が警戒しているのが、実は「1月衆議院解散」ではないかという見方もあります。
1966年12月、自民党の相次ぐ不祥事をめぐり、当時の佐藤栄作首相は衆議院を解散しました。俗に言う「黒い霧解散」です。
この黒い霧解散は、自民党を中心とした6つに及ぶ不祥事、すなわち「黒い霧事件」と呼ばれる事件が発端となりましたが、そのうち半数の「公私混同お国入り事件」「公私混同官費旅行」「深谷駅急行停車事件」はまさに ”政治の私物化” を象徴するかのような事件で、現在取り沙汰されている安倍首相らによる「桜を見る会」疑惑と、政治の私物化という意味において符合しております。
◆ 出典記事 ◆
『「桜」攻防、国会の焦点に 野党、1月解散警戒も』
~2019.11.17 jiji.com~
10月4日に開会された臨時国会では、安倍首相が最も重視する「日米貿易協定」が参議院に審議されています。
自民党は国会の延長はしないとしていますが、それでは審議日数の30日を満たしておらず一歩間違えれば廃案になりかねないリスクもあるため、間違いなく国会は延長されるだろうと思われます。
安倍首相は国会を延長し、今国会で日米貿易協定の承認を確実にしたいと熱望しています。
とはいえ、国会を延長すればその分「桜を見る会」疑惑追及がますます厳しくなるといったように、かつての黒い霧解散のように ”桜疑惑隠し” を狙った1月の衆議院解散の可能性は十分にあり得ると言えるでしょう。
安倍首相の総裁4選はあるか?
このニュースサイトでは、仮にアメリカのトランプ大統領が来年の大統領選で再選されたとしたら、安倍首相もそれにつられるように自民党総裁4選目を狙いにゆくだろうと予想しています。
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『弾劾公聴会でも罷免されないトランプ大統領。日本への影響は?』
この安倍首相の総裁4選については、自民党の鴨下一郎元環境相が毎日新聞のインタビューでも言及しています。
それは、アメリカのトランプ大統領と安倍首相の良好な関係は日米の貴重な ”インフラ” でもあるので、トランプが再選されれば安倍首相も続投して4選を目指すべきだとする発言に明確に表れています。
この記事の冒頭、《米国のトランプ大統領の登場や英国の欧州連合(EU)離脱「ブレグジット」など世界のトレンドを見ても、それに先駆けて右寄りの政権を作ったのは外交的にも経済的にも成功だった。》といったように、鴨下氏はいささか倒錯した見方をしているのは否めませんし、この記事全体には安倍首相をヨイショし、それを忖度する姿勢が滲み出ています。
◆ 出典記事 ◆
『トランプ氏再選なら安倍首相も4選を』
~2019.11.22 毎日新聞 政治プレミア~
しかし、鴨下氏が本当に言いたかったのは別の事のようです。
つまり、安倍首相の政策による格差が懸念されるのであれば、安倍政治から漏れ落ちた人々に光を当てるリーダーが出現するであろうと言っているのです。
その候補者として、鴨下氏は石破茂、菅義偉、岸田文雄、そして小泉進次郎らの名前を挙げています。
ちなみに、鴨下一郎氏は自民党の「石破派」に属しています。
安倍首相はいつまで続けるか?
ここに自民党の石破茂元幹事長の重要な発言を紹介します。
11月18日の朝日新聞によれば、石破氏は出演したフジテレビの番組の中で安倍首相の後継をめぐる自民党の総裁選について、「党員をないがしろにすると、必ず報いを受ける」とし、岸田文雄氏への ”禅譲論” に反対、あくまで党員・党友の投票による選挙を行うべきとの考えを示しました。
◆ 出典記事 ◆
『ポスト安倍選び「党員投票で」 石破氏がクギ 岸田氏への「禅譲」論』
~2019.11.18 朝日新聞DIGITAL~
つまり、安倍首相の自民党総裁の任期は2021年9月までですが、党則によれば「総裁が任期中に欠けた場合」で「特に緊急を要する時」は党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶことが可能になっています。
そして、安倍首相は任期途中で退陣し、規則に従って総裁選を国会議員だけの投票で選ぶことで岸田氏への禅譲を図るという見方が囁かれているというのです。
石破氏はこれに対し「途中で辞め、緊急事態だから党員投票をスキップしようというのはおかしくないか」とジャブを打ってきたわけです。
このことから何が分かるでしょうか?
それは、安倍首相は自民党総裁の4選は諦め、2021年9月の自民党総裁選の前に辞任するということ。そして、後継者として岸田文雄・自民党政調会長に首相の座を禅譲するだろうということです。
こんなことが起きるのでしょうか?
もし、起きるとしたら時期はいつでしょうか?
この問いに対する答えは、11月20日の日本経済新聞の中に見い出すことができるかもしれません。
◆ 出典記事 ◆
『首相、通算在任日数トップに 見えぬ「ポスト安倍」』
~2019.11.20 日本経済新聞~
安倍首相は11月20日をもって桂太郎を抜き、首相在任の通算日数で憲政史上最長の記録を更新しています。
ただし、ここで注意して欲しいのは「連続在任記録」では、未だ佐藤栄作の「2798日」が最長記録ということ。安倍首相がこの記録を抜くには、今年の8月24日まで政権を続ける必要があります。
つまり、逆の言い方をすれば安倍首相は、現在取り沙汰されている「桜を見る会」疑惑がどのように紛糾しようとも今は辞任しないだろうということです。
そして、東京オリンピックが終了した8月24日、歴代首相連続在任最長記録を更新して晴れて辞任することになるでしょう。
安倍首相は、首相としてのレガシーが欲しくて仕方がないようです。
それが憲法改正への飽くなき挑戦となって表れているのですが、どうやらそれは難しくなってきた。よって、おそらく誰も破れはしないであろう連続在任記録を更新することで、安倍首相はレガシーとして納得するものと思われます。
そのような形で次の首相を岸田氏に禅譲することで、首相退任後の権力を振るうことも可能になります(田中角栄や中曽根康弘がそうしたようにです)
こうしてみると、安倍首相の戦略はしたたかです。
世間は「桜を見る会」疑惑で持ちきりですが、仮に安倍首相を引きずりおろすには決定的な証拠を提示するか、世論調査で支持率が4割を割り込むといったことがない限り、極めて困難と言わざるを得ません。
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