2019年参院選はこう闘え! 「老後資金問題 & 年金問題」

国内政治

Introduction:今年の夏には参院選が控えていますが、7月4日公示、7月21日投開票の日程が最も有力とされています。

政府与党・自民党は「憲法改正」「日米同盟の深化」「消費税増税」「辺野古基地移転」「原発再稼働」など公約に掲げています。

消費税増税の問題はさておいたとしても、今回、選挙の争点にすべきは、やはり先般明るみになった「老後資金2000万円問題」でしょう。

これは取りも直さず、大きな視点では年金のあり方に関わる問題ですので、過去を掘り返しながらこの問題を考えたいと思います。

安倍首相! 「消えた年金」はどうなさいました?

現在世間を騒がしている「老後資金2000万円」問題については、資料を作成した有識者らは「本来はこの資料をもとに老後資金について議論を深めたかった…」とのことで、政府を批判してもいますが、なんだかこれも詭弁にしか聞こえません。

要するに、政府も有識者らも、年金制度は崩壊してしまったことを、もったいぶって別の角度から表現したに過ぎないのです。 その意味では、この「老後資金」問題は「年金問題」と言って差し支えありません。
そして、年金問題については、過去に明るみになった忌々しい「消えた年金」について掘り返してやる必要があります。

この「消えた年金」については、2012年12月9日の東京新聞に、 『未解明なお2222万件 「消えた年金」衆院選で埋没』 と題された、極めて重要な記事が掲載されました。

《保険料を納めたのに本人の記録に結びついていない五千九十五万件の存在が発覚したのは二〇〇七年。同年の参院選で当時の安倍政権は大敗を喫し、民主党はその勢いのまま〇九年衆院選で政権交代を果たした。

民主党政権は記録回復を「国家プロジェクト」と位置づけて作業に取り掛かったものの、今年九月時点で解明できたのは六割弱の二千八百七十三万件止まり。うち千六百六十六万件(千三百九万人分)が基礎年金番号に統合済み、千二百七万件は死亡者などの記録と判明した。ただ解明分の多くは国民の関心が高かった〇八年前後に集中、ここ数年はペースが鈍っている。》

~2012年12月9日 東京新聞 朝刊 『未解明なお2222万件 「消えた年金」衆院選で埋没』

旧社会保険庁の管理する年金データに、非常に多くの不備があることが明らかになり、そのずさんな管理体制が叫ばれだしたのが2007年5月頃でした。
同一人物であるのにも関わらず、統合されない散逸した個人情報は、いわゆる「宙に浮いた年金記録」として、その数実に5千万件を超える有様だったのです。

ここで一つ重要なことがあります。
この5千万件の「宙に浮いた年金」について、実は、当時の安倍首相(安倍第1次政権)は事前に知っていたというのです。

この件については、2007年6月23日の朝日新聞に、次のような記事が掲載されています。(途中、記事を省略しております)

安倍首相は22日(※2007.6.22)、5千万件「宙に浮いた年金」について、「昨年の暮れから今年の初めにかけて、そうした問題があると知った」と語り、約半年前には未統合記録の問題を認識していたことを明らかにした。

民主党の鳩山由紀夫幹事長は22日、記者団に「我々が厳しく追及していなければ、最後までこの事実を隠し通そうとしてきた。知っていながら隠し通そうとしてきた事実がこれで明らかになった。これは許せない犯罪行為だ」と首相の姿勢を批判した。
~2007年6月23日 朝日新聞 朝刊 「首相、半年前には認識 対応は5月、政府後手に」~

安倍首相! 年金問題は1年で決着がつきましたか?

「宙に浮いた年金」を特定の個人に統合するには、「名寄せ」の作業が不可欠となりますが、筆者はそのような個人情報統合の「名寄せ」に多少携わったことがあります。

名寄せの作業には、どうしても曖昧な部分が出てきてしまいますし、そのため人的判断が入り込む余地がとても大きいと言える作業です。

筆者が関わったのは、約150万件の個人情報を名寄せするものでした。
実際作業を行ってみて分かったことは、もちろん取り組み方にもよりますが、この150万件でさえ、名寄せ作業の完結に1年以上掛かっても不思議ではないということです。

ところが、当時の安倍首相は、このような名寄せ作業を1年でやってのけると言い張ったのです。これには驚きました。そして、こう思いました。
「この首相に年金問題は理解できないだろう」と。

2007年6月22日 朝日新聞 朝刊

年金「1年決着」については、当時民主党の福山議員と柳沢厚労相との間で滑稽なやり取りがありました。

このチラシを手に、福山哲郎氏(民主)は21日の参院厚生労働委員会で訴えた。「柳沢厚労相は1年間(で完了するの)は『統合』ではなく『突合』だと答弁した。国民をミスリードするようなことを書いちゃいけない。」柳沢氏は「(チラシの表現が)『名寄せ』『突合』ならありがたかった。同じ言葉遣いの方がよかった」と苦しい答弁を迫られた。
照合、突合、名寄せ、統合……。似たような言葉が飛び交う。用語の使い方も人によって様々。何が1年で終わるのか、わかりにくい状況だ。
~2007年6月22日 朝日新聞 朝刊『年金「1年決着」の疑問』~

ここに登場する柳沢厚労相とは、”女性は子供を産む機械” 発言で国民的非難を浴びた柳沢伯夫氏のことです。当時の安倍政権も、このような失言大臣で溢れておりました。

また、柳澤氏に代わり厚労相に就任した舛添要一氏もまた、問題がよく見えていない一人であるように思われました。
彼は社保庁で使われていたホスト・コンピュータが大変古いのに驚いたといいます。まるで最新のホスト・コンピュータに交換すれば、この問題は解決するとでも言わんばかりでした。

実際には、名寄せの作業はコンピューターの性能に依存するものではありません。
確かに、電算機器を最新化すれば、多少の作業効率化は期待できるでしょう。
しかし、既に述べた通り、この作業は人的判断・人的作業が多くを占めてしまい、システム化が困難なところが出てきてしまいます。新しいコンピュータを導入しても、1週間掛かるシステム的な突合せが、5日程に短縮できる程度の話ということです。

詐欺的だった年金の運用

筆者の手元に「ねんきん特別便」が届いたのは、2008年に入って間もなくのことでした。
つまり、筆者の年金記録に ”空白期間” があったわけです。
親が支払っていた20歳頃の記録、そして会社に入社した最初の1年、契約社員扱いで働いていた頃の記録です。もちろん、そのいずれの時期においても筆者(もしくは親)が年金を支払っていたことは間違いありません。

筆者は親から当時の年金手帳を取り寄せ、また会社からも年金手帳を預かり、社会保険庁・専用ダイヤルに電話をしました。親切な男性が対応してくれ、彼と会話を交わすうちに分かってきたのは、どうやら私の空白期間における個人情報は社保庁でも把握しているらしいということでした。

「基礎年金番号」が分かれば、照会は可能だと彼は言います。私が自分の番号を告げると、果たして空白期間と浮いた個人情報は見事に符合するではありませんか!

後日、新聞で知ったことなのですが、社保庁は浮いた個人情報が符合できると予想できた際にも、あえてそれを当事者本人には知らせていなかったらしいのです。

本人がそれを知らせてきた場合、当然浮いた情報は解消されるわけですが、何の申し出もなかった場合、永久にそれは浮いたままの情報となり、最終的には支給額が減額されてしまうことになるのです。

これは詐欺的とも言える、酷いやり方です。当時はこのようなことがまかり通っていましたが、現在はどうなのでしょうか?

このような姿勢が「特別便に未回答924万件」「持ち主の手掛かりなし962万人」といった悲惨な結果をもたらす土壌となったのではないかと思うのです。

そして、このことは第1次安倍内閣の支持率に致命的とも言える影響を与えました。2007年7月当時において、各紙の世論調査結果は軒並みダウン。
今回は2007年7月2日東京新聞の結果を紹介しますが、「支持率28%」で過去最低を記録しています。

ちなみに、安倍首相が ”腹イタ” で政権を投げ出すのは、この約2ヵ月後のことです。

2007年7月2日 東京新聞 朝刊

「消えた年金」という過去の問題と、「老後資金問題」をセットで争点化する

かつて、安倍首相は年金問題を1年で解決すると、大風呂敷をひろげて見せましたが、解決どころか自身が政権を投げ出す格好になりました。
その後、政権奪取した民主党・野田首相も東日本大震災の際、年内中に原発事故を収束させるとの空の約束手形を切りました。

政治の不作為は留まるところを知りません。そんな為政者のことを想像するたび、皆が不愉快な気分になっていることでしょう。
その意味で、今回の「老後資金問題」は私たちにとってタイミングが良いと言えます。

過去の「消えた年金」の問題と、「老後資金問題」の2つを争点とし、私たちは来る参院選で何らかの意思表示をする必要があります。

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