働き方改革に新提案 一日6時間労働でサラリーマンの生産性はあがる

ビジネス

Introduction:私たちが知っている日本は、もうどこにも存在しません。
 日本は既に中国に追い抜かれ、かろうじて世界3位の経済大国の地位に留まっていますが、どうしたことか競争力においては世界30位まで転落している有様です。

 日本のトップランナー企業トヨタの社長、 豊田章男氏は終身雇用を維持することの困難さを表明し、同じく経団連の中西宏明会長も、終身雇用は制度疲労しているとの見方を示しています。

 つまり時代の大きな変化に日本の企業が対応し切れておらず、来るべき未来に明るい展望が見いだせない、端的に言って、日本企業は緩やかに、しかし確実に腐敗が進行しているのかもしれません。

 このような事態を招いた原因の一つに、日本企業の ”生産性の低さ” が挙げられます。そして、そのことで不毛な残業を余儀なくされ、消耗しているサラリーマンを数多く見かけます。
 
 これからの日本は一体どこへむかうのでしょうか?
 処方箋はあるのでしょうか?

一日3時間労働で経済的問題がなくなる

 経済学者のケインズは、1930年に『孫の世代の経済的可能性』というエッセイを発表しました。そのなかで彼は、100年後の経済について「100年以内で経済的な問題は解決する」と予測しています。

 つまり、100年以内に全世界の人々が生きていく上での富が満たされ、衣食住などの問題も解決し、労働時間は多くとも一日3時間、週15時間程度になるだろうといった予測です。

 結果はどうだったかと言えば、1人当たりの実質所得はケインズの予測に一致しました。人口はケインズ予測の2.5倍となったのですが、その分「生産性」も2.5倍になったからです。

 ただ、週15時間労働の方は言うまでもなく外れています。このことについては、より多く働いて、より多く収入を得たいといった、人間の欲望が理由だろうと考えられています。

一日4時間労働が理想的 

 これも少し古い調査報告ですが、1950年代にイリノイ工科大学の科学者が行った調査では、週に35時間働く労働者は、週20時間働く労働者と比べて生産性が半分に落ちていることが分かったというのです。

 これは心理学の「集中力の分配」といった概念でも説明がつきます。簡単に言えば、一日だらだらと仕事をするよりも、タイムリミットを設けて作業をする方が生産性は高まるということです。

 これをさらに具体化すると、これまで一日掛かっていた仕事を、彼女とのデートが入ったために半日で仕上げなくてはならない。

 そういった時は猛烈に集中して頑張るので、本当に半日で仕事を仕上げることができた。――皆さんも一度ならずと経験があるかと思います。

夕方4時半になれば帰ってもいい会社

 かなり昔の事例を紹介してきましたが、現代に目を転じてみると5月29日、日本経済新聞に衝撃的な記事が掲載されております。

 『「退社4時半」の衝撃 味の素、意識改革を徹底』と題された記事では、「株式会社 味の素」の取り組みを紹介しています。

 結論から申し上げると、味の素では定時の終了時刻を「4時30分」にしたそうです。

 これまで味の素では残業削減に取り組んできましたが、30分程度の削減では効果がみられず、社員の生活も変わることはありませんでした。
 もちろん、「ノー残業」をいくら上層部が叫んでも、社員の習慣は早々変わるものでもありません。

 だから、あっと驚くような ”仕掛け” が必要だろうということで、終了時刻をこれまでの「5時20分」から「4時30分」に変更したとのこと。

 驚くべきは、この制度を利用して大学院に通い、今年の春に晴れて終了した強者も現れているということです。

 アミノサイエンス事業部に所属する塩谷美咲(29)さんは、2017年にグロービス経営大学院に入学、2年間で30科目履修したそうです。

一日6時間労働が主流となる社会

 紹介した味の素の取り組みは衝撃的には違いありませんが、就業開始が「朝8時15分」であることがミソです。つまり、一日の労働時間は「7時間15分」なわけです。

 これまで味の素は、労働時間をさらに7時間までに短縮する試みをしてきましたが、今年になって断念しています。

 このように、日本企業は労働時間という観点で言えば、旧態依然の状態から脱していないのが現状ですが、何か打開策はあるのでしょうか?

 5月22日、「TOKYO MXテレビ」朝のニュース番組『モーニングCROSS』に出演した社会学者、 西田亮介氏が企業の雇用制度について興味深い提言をしています。

「日本の労働生産性の低さは以前から言われているが、労働時間を減らすと追加コストをかけなくても労働生産性は上がる。見かけ上の残業時間もなくなるので、時間あたりの取り分も増える」とし「ある種、妥協策として、標準労働時間を6時間、週30時間制を導入すると面白いのでは」

一日6時間労働を実現する仕組みづくり

 筆者もサラリーマン時代、過剰残業に消耗する日々を過ごしました一人です。ただ、職場には月に一度、強制的に定時退社する日が設けられていて、その日は全館一斉に定時退社しておりました。よほどのトラブルや緊急事態が起きない限り、文字通り全館一斉の退社です。

 この場合、残業が必要になった場合は、定型の書類にその旨を記載し、自分の上司ではなく、建物ビルの館長に提出しなければならないといった「仕組み」がありました。他者の上役に必要書類を提供するわけですか、効果は絶大でした。
 やればできるのです。

 一日6時間労働を実現するには、当然何らかの仕組みが必要となります。
 一つの考え方として、残業代を支払うのは8時間以上残業した場合とするわけにはいかないでしょうか?

 形式的には一日8時間労働するとし、制度としては6時間働いたら退社することにする。空白の2時間については働いても残業代はでない。
 もし、6時間働いた後、3時間残業したら残業代は1時間分しか出ない、といった仕組みです。

 こんな理不尽な?仕組みであれば、残業するのは馬鹿馬鹿しく、6時間労働したら皆帰るのではないでしょうか。

 この仕組みは激しい「違和感」を伴うでしょうし、当然、様々な批判が沸き上がるでしょう。
 しかし、物事はこの「違和感」なくして変えることはできません。違和感を克服した先に、変わった状態が出現するのです。

 まるで違和感を感じることなく、旧態依然のやりかたで、漫然と残業をしているのが現在の日本人の姿なのではないでしょうか。

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