Introduction:安倍首相に ”忖度” したであろう警察が、安倍首相をヤジった男性を排除した事件は大きな話題となりました。
その男性、札幌市の大杉雅栄さんは今、警察を相手に立ち上がりました。彼は職権乱用のかどで警察官を刑事告訴したのです。
彼は言います。
「主権者にはヤジを言う権利があることを確認するための訴訟と告訴だ」と。
私たちはこの闘いから目を背けてはなりません。私たちの言論の自由がかかっています!
主権者にヤジを言う権利はあるのか!?
今年7月の参院選中、札幌市の街頭で「安倍辞めろ!」とヤジを飛ばしたことで排除された男性が、12月3日、警察官の行為は特別公務員職権乱用罪などにあたるとして、関係した警察官を札幌地裁に刑事告訴しました。
◆ 出典記事 ◆
『 首相にヤジで排除された男性、警察官を刑事告訴 「黙っていれば言論萎縮進む」 』
~2019.12.3 毎日新聞~
訴えを起こしたのは、北海道札幌市に住むソーシャルワーカー、大杉雅栄(おおすぎ まさえ)さん(31)
大杉さんは、実力を伴った排除で表現の自由を妨げられ、肉体的・精神的苦痛を被ったとして、管理者の北海道に330万円の支払いを求める訴訟を札幌地裁に起こしたのです。
大杉さんは「黙っていれば、言論の萎縮が進んでしまう」とし、「主権者にはヤジを言う権利があることを確認するための訴訟と告訴だ」と訴えました。
法的根拠を示せない北海道警察
Video by :HTBニュース
『”総理ヤジ”排除された本人が議会へ…道警の答弁は』
北海道警察による「ヤジ排除問題」は、北海道議会の一般質問でも取り上げられました。
共産党の菊池葉子・道議が「強制排除の法的根拠を示せないのはなぜか? 本当に根拠はあるのか?」と再三にわたり質問したにも関わらず、北海道警察の山岸直人・本部長は「告発状が札幌地検に提出されているため、事実確認を継続している」と、逃げの一点張りを通しました。
この問題については、12月3日の北海道議会一般質問で再び取り上げられました。
共産党の宮川潤・道議が「5カ月たってもいまだに道民に対して説明もない。期限を切って速やかに報告すべきだ」と指摘。鈴木直道知事も「事態を真摯に受け止め、道警は速やかに公表してほしい」と答弁しましたが、北海道警察の山岸直人・本部長は相も変わらず「告発状が札幌地検に提出されている状況で事実確認中。説明できる段階になれば、道議会で説明する」との答えに終始したのです。
北海道警察は明らかに ”やり過ぎた”
これは極めて重要な問題です。政治家の街頭演説でヤジっただけで排除されるとは、まるで一党独裁の中国や、専制国家の北朝鮮を彷彿とさせます。
全くのところ、安倍首相への ”忖度” ほど恐ろしいものはないと痛感せずにはいられません。
そして、日頃から中国や北朝鮮をあれほど忌み嫌っている言論人が、安倍首相のことになると自説を曲げてまで安倍擁護に回るとは実に無様な限りです。以下に紹介する門田隆将なる人物も、そのような言論人の一人です。
門田氏は「公選法で演説の妨害は禁じられている」とツイートしていますが、これは正確ではありません。
問題は「どのような事をしたら公選法で禁じられている演説の妨害に該当するのか?」ということなのです。
おそらく、門田氏は知っているはずです。なのに敢えてこのようなツイートをするということは、法を盾に取った悪意あるミスリードと言う他ありません。これでは言論人としの信憑性に関わるでしょう。
結論から言えば、今回の大杉雅栄さんによるヤジは、まったく法に触れてはいないのです。
どのようなヤジが違法なのか?
実は、この問題については大昔に決着がついているのです。
それは、1948年(昭和23年)12月24日に最高裁判所判決で明確になっています。
◆ 出典記事 ◆
『市長選挙罰則違反』昭和23年12月24日 最高裁判所第二小法廷
この裁判で争われた状況は以下の通りです。
被告人は、市長候補者の政権演説の会場入り口で、弁士B、Cの演説に対し大声で罵声を浴びせていた。 被告人は、これを制止しようとした弁士Aと口論となり、罵声を浴びせた後押し倒し、頭を数回殴るなどの暴力行為に及んだ。 これらの一部始終は当然聴衆の目を引き付けることになり、被告人は選挙演説を妨害したとして有罪判決が下された。 |
この裁判の判決理由に目を通すと、公職選挙法で言うところの演説の妨害については、2つのポイントがあることが分かります。
- 演説が聞き取れないほどの大声(あるいは音量)で罵声を浴びせたりするのは演説の妨害と見なされる。
- 暴力沙汰を起こすなどして、聴衆の注意を引き付けるのは演説の妨害と見なされる。
ちなみに、選挙演説の妨害については、1954年(昭和29年)11月29日に大阪高等裁判所で似たような判決が下されています。( 「一般聴衆がその演説内容を聴き取り難くなるほど執拗に自らも弥次発言或は質問等をなし一時演説を中止するの止むなきに至らしめるが如きは公職選挙法第二百二十五条第二号に該当する」
)
Video by :HTBニュース
『「安倍帰れ!」ヤジの市民を警察が排除 札幌』
では、大杉さんの事例をあらためて見てみましょう。
大杉さんが警官から排除された時、彼は拡声器なども使わず、たった一人で「安倍辞めろ!」を連呼していたに過ぎません。
その一方で、当の安倍首相は高い壇上から拡声器を使って、しかも大音量で演説を行っていました。
そんな演説に対し、聴衆が聞こえない程に大杉さんの声はうるさかったでしょうか?大杉さんのせいで演説が中断したでしょうか? という話になるのです。
筆者の目から見れば、ヤジっている人間に対し、複数の警官が威圧的に排除している様子の方がむしろ不自然に映りました。職権乱用の見本のような行為です。
よって、今回の件では大杉雅栄さんは公職選挙法に抵触していない、というのが結論となります。法の裁きを受けるとしたら、むしろ北海道警察の方でしょう。どのような判決が下されるのか、実に興味深い事例となりました。
長いこと政治をウォッチしてきましたが、首相の演説にヤジを飛ばすことがあっても、その首相側がヤジった者を排除するなど、見たことも聞いたこともありません。
このような前代未聞の行為に及んだ安倍首相は、いかに自分が人々から支持されず忌み嫌われているかを、真摯に反省すべきでしょう。
もっとも、安倍首相のことですから、「あれは北海道警察が勝手にやったことだ」と言うに違いないでしょうが・・・
コメント