ピーター・フォンダを悼み、『イージー・ライダー』を語ろう

映画『イージー・ライダー』のオープニング・シーン

「アメリカ人は自由を証明するためなら殺人も平気だ。
個人の自由についてはいくらでもしゃべるが、自由な奴を見るのは怖いんだ」

巨大ギャンブルと化した現代のハリウッド映画

映画の進化とは、現代においては特撮技術の進化にすり替わっているようにも見えます。この技術により、映画はこれまでになかった映像世界を私たちに提供するにいたりましたが、同時に、技術そのものが途方もない金食い虫に成長してしまいました。

つまり、映画がどれだけ成功するかは、どれだけの大金をつぎ込んだかが一つのバロメーターになってしまったということです。

これは、映画が巨大なショービジネスに生まれ変わったというより、無謀なギャンブルになったと言った方が、むしろ本質的かもしれません。そして、このような潮流をリードしているのが言うまでもなくアメリカ、ハリウッドです。

「アメリカン・ニューシネマ」とマリファナの香り

しかし、1960年代後半から70年代のアメリカ映画界はそうではありませんでした。ハーレーダビッドソン、ヒッピー文化、そしてベトナム戦争。

マリファナの香りが漂ってきそうですが、当時の世相を色濃く反映し、主流となっていたのは『イージー・ライダー』のような反体制・反権力を真髄とする「アメリカン・ニューシネマ」です。

登場人物は、巨大組織や国家権力に立ち向かいます。そこにハッピーエンドは望むべくもなく、熱いカタルシスもありません。象徴的、時に哲学的シーンが織り交ぜられ、悲劇的な結末を迎えます。

事実、『イージー・ライダー』は、ピーター・フォンダ演じる ”キャプテン・アメリカ” が、ライフル銃を手にした行きずりの農民に、いきなり射殺される結末で幕を閉じます。

言わば自暴自棄によって生まれた作品

Video by : Krzysztof Zajkowski
”Easy Rider – Intro – Born to be wild!”

『イージー・ライダー』の監督は俳優としても名高い、デニス・ホッパー。
彼は既に2010年5月に亡くなっていますが、役者として駆け出しの頃、映画監督と諍いを起こし、映画界から干されていた時期がありました。

彼としても極めて辛い経験でしたが、そのような閉塞した中で、起死回生を図る意味で世に送り出したのが映画『イージー・ライダー』です。

金も無い、機材もない、役者もあまり揃わないといった中で、半ば自虐的に自作自演してしまったのがこの作品。
いかにもアメリカ的な泥臭さと、当時の若者の実態をストレートに叩きつけたことで、完成度の高い作品に仕上がりました。

ステッペンウルフの「Born To Be Wild」によるオープニングは、映画史の名場面の一つと言っても過言ではありますまい。
そして、ラストはあまりに過酷であり、アメリカの醜態を見せつけています。

実はアメリカとは、当時から本質は何ら変わっていないのかもしれません。

※ピーター・フォンダ氏は8月16日に逝去されました(享年79歳)

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