Introduction:10月31日の未明に起きた「首里城の大火災」は、沖縄の方々を始めとし耐えがたい記憶として、長く心に刻まれることでしょう。
忘れてならないのは、首里城は紛れもない「国の所有物」であり、国は沖縄の文化遺産を速やかに復元する義務を負うということ。
間違っても「普天間基地」の ”取引材料” などにしてはなりません。
今後の政府の動きには警戒が必要です。
ちなみに、首里城はきちんと「火災保険」に加入していたようです。
完全復元された矢先の悲劇
10月31日の未明、午前2時40分頃から上がった火の手は瞬く間に「首里城」を包み込み、同日午前11時頃になってようやく鎮火に向かいました。
この大火災で沖縄県那覇市にある首里城は正殿や北殿、南殿といった主要7棟が焼失。東京ドームの敷地に匹敵する約4,800㎡が一晩のうちに焼失したことになります。
首里城は建立された14世紀以来、何度か焼失の憂き目に遭っていますが、直近では太平洋戦争中の1845年、米軍の攻撃により焼失した経緯があります。
その後は小規模な復元工事が進められてきましたが、1989年(平成元年)に正殿を始めとする北殿、南殿、番所、奉神門などの再興プロジェクトが立ち上がり、合わせて復元工事も着手されました。
これらの工事が完了したのが1992年(平成4年)で、同年11月3日に国営の「首里城公園」として一般公開されたことで大きな節目を迎えました。
そして、復元工事はその後も継続され、実は、完全に工事が完了したのは今年2019年2月だったのです。
つまり、今回の大火災は、首里城が完全復元された矢先に起きた悲劇だったわけです。
「首里城」は誰の持ち物か?
実は、首里城の所有者は「国」です。
復元工事が完了した2019年2月に運営・管理が沖縄県に移管され、沖縄県の指定を受けた一般財団法人「沖縄美ら島財団」が実際の管理を行っています。
「首里城」は火災保険に加入していたのか?
「首里城公園」を管轄する沖縄県・土木建築部・都市公園課に電話取材したところ、「首里城公園」はきちんと火災保険に加入していたことが分かりました。
ただし、現在は火事の原因について調査中でもあり、具体的にどれほどの保険金が給付されるのかは確定していないとのことです。
首里城を ”取引材料” にするな!
11月1日、午前の定例記者会見の席上、菅官房長官は首里城の大火災についての記者の質問に対し、
「首里城は沖縄にとって極めて重要なシンボルであり、私自身も大変心を痛めている。首里城は国営沖縄記念公園の施設であり、再建に向けて政府として全力を挙げて取り組んでいく。財政措置を含めて、国としてやるべきことは責任を持って何でもやりたい」
――といった趣旨の回答をしています。
一見すると、菅官房長官にしては珍しく前向きな回答とも受け取れるのですが、記者の質問は、
「(首里城の)具体的な支援策として、再建に向けた費用を今年度の補正予算に盛り込んでゆくのか?」なのです。
菅官房長官は、首里城再建に向けた具体的な費用については一切言及せず、上記に示したような ”抽象的やる気” を醸し出しただけで、質問に対しては煙幕を張ってしまいました。今後も警戒すべきと考えます。
首里城は国の持ち物であり、国が整備するのは当然のことです。
平成の初めから終わりまでの約30年間、首里城の復元工事のために国が出してきた費用は「260億円」に上ることが、今回の沖縄県・土木建築部・都市公園課への電話取材で分かりました。
よって、国も首里城再建のために相応の費用を負担し、火災保険の給付金を防災設備の強化に割り当て、残りを再建のための費用の一部とするのが本来の筋であると思われます。
現在、沖縄県では普天間基地建設をめぐり、国と地元住民が長期にわたり対立していますが、首里城再建の費用をバーター(取引材料)に、普天間基地の建設を進めるようでは本末転倒ですし、そのようなことを安倍政権はやりかねません。
首里城は持ち主である「国」が地元住民のために速やかに再建に着手し、基地問題は別の次元の問題として今後も協議を進めるべきです。
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