Introduction:にわかには信じがたい事ですが、日本経済新聞に衝撃的な記事が掲載されました。
日本経済新聞の世論調査によれば、10月に迫った消費税増税についての賛成は実に49%に上り、反対の44%を上回ったというのです。
経済の停滞著しく、まるで先行きの見えない中で、なぜ、このような奇怪な結果が導き出されるのでしょうか?
そこには世論調査の罠とも言うべき、驚くべき事実が隠されていました。
20~60歳代はすべて賛成が上回っている!
「10月の消費税増税、賛成49% 反対44%を上回る」と題された記事は、9月1日に日本経済新聞・電子版に掲載され、翌2日は紙面にも掲載されています。
驚くべきは、20~60歳代のすべてが、増税賛成が反対を上回っていることです。
70歳以上の世代においてようやく賛成41%、反対55%で賛否が逆転しており、日経は「幅広い世代で消費税増税を受け入れる空気が広がっている」と評していますが、多くの方が違和感を抱いていると思われます。
これは、もしかしたら「世論調査」そのものに問題があるのかもしれません。
世論調査とは、一体どのように行われているのでしょうか?
RDD方式による世論調査とは何か?
数値を操作しているとは敢えて言いませんが、世論調査は無作為に対象者を選んでいると言いながら、結果的にはそうでないこともあり得ます。
新聞社やテレビ局などが行う昨今の世論調査については、多くの場合RDD(Random Digit Dialing)方式が採用されています。
コンピューターによって作り出された乱数を電話番号として無作為に抽出し、ダイヤルすることで情報を収集するやり方です。
確かに、この方法でしたら特定の世帯や世代に偏ることなく対象者を選べるように思われますが、実際はそうではなく、いくつかの問題点があります。
音声ガイダンスによって進行する場合がある
一つには、人間のオペレータがダイヤルして調査を行うとは限らず、テープに吹き込まれた音声ガイダンスにより、調査が進行する仕組みになっている場合があることです。
この場合、突然に掛かってきた電話をとると、事務的に流される音声ガイダンスを聞かされる羽目になります。
普通であれば「これは一体何事か!?」と感じるでしょうし、即座に電話を切る人もいるでしょう。
仮に、調査に協力する気持ちになったとしても、音声ガイダンスによる質問は一つや二つには収まらないため、調査全てに協力するとなればそれ相応の時間を費やすことになります。
果たして、最後まで調査につき合ってくれる方は、どれほどいるのでしょうか?
調査は平日に行われる場合もある
二つには、世論調査は平日に行われる場合もあるということです。
世論の担い手の多くがサラリーマンであり、日本の中間層の大半がサラリーマンであることを考慮すれば、サラリーマンが勤務する平日の日中帯に実施される調査では、世論の担い手の意見を正確に補足することは困難と言わざるを得ません。
どのような人々が世論調査に回答しているのか?
つまり、世論調査は「平日の日中帯に、音声ガイダンスが流れるテープに長々とつき合わせることにより」情報収集している場合がある、ということです。
問題は、このような調査につき合う人がどれほどいるのか、そして、このような調査につき合うような人々は何者か、ということです。
以上の点を考慮すれば、世論調査に回答する人々は、主に「ある程度時間の余裕がある、無職の高齢者」ではないかと推測することができます。
日本経済新聞による世論調査とは?
では、紹介した記事「10月の消費税増税、賛成49% 反対44%を上回る」において、日本経済新聞はどのような方法で世論調査を行ったのでしょうか?
9月2日の紙面には次のように書かれています。
”調査は日経リサーチが8月30日~9月1日に全国の18歳以上の男女に携帯電話も含めて乱数番号(RDD方式)による電話で実施し948件の回答を得た。回答率は46.2%。”
ただ、これだけでは調査の全体像が見えてこないこともあり、詳細を知るべく世論調査の実作業を行った「株式会社 日経リサーチ」社に電話取材したところ、次のような回答を得ました。
調査方法について
電話取材に対しては、若い女性と思しき方から丁寧な回答をいただきました。
記事にもあるようにRDD方式にて調査を行ったようですが、その際、音声ガイダンスは使用せず、人間のオペレーターが聞き取りを行ったとのことです。
調査期間について
調査については土日に限定して実施したとのこと。
よって、8月30日の金曜は準備などに割り当て、実際の聞き取りを8月31日~9月1日の土日の2日間で行ったことで間違いないと思われます。
回答年齢の偏りについて
これについては極めて重要かつ核心的な部分となります。
今回の世論調査は人間のオペレータが担当し、休日である土日に実施していることから、先に指摘した問題点をクリアしているように見受けられます。
そして、紙面にも記載があるように、948名からの回答を得ています。
ただし、そこに各世代の偏りはないのか? ということについては大きな偏りがあることが分かりました。
実は、回答を得た948名の内、20代の割合は約13%に過ぎず、また、60代以上が全体の30~40%占めるといった、実に偏向した調査結果であることが分かったのです。
結論! ――世論調査に値しない調査結果
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取材でも明らかなように、消費税の賛否を問うた世論調査は20代が約120名ほどに過ぎず、場合によっては60代以上が380名に上るかもしれないといった、実に偏向した調査であることが分かりました。
これは、母集団が1000名にも満たない世論調査が、果たして本当に「世論」を反映しているのか? といった問題をあらためて突き付けるものです。
今回の日本経済新聞による世論調査は、消費税増税の賛否以外にも「改憲について議論すべきか?」「内閣の支持率」についても合わせて問われ、結果が一面に掲載されていることから、それらの方に重点が置かれていることが分かります。
そして、”改憲「議論すべき」77%”、”内閣支持率58%(6ポイント上昇)” なる結果にどれ程の信憑性があるか、もはや説明の必要はありますまい。
このように、”主要紙” と呼ばれる日本経済新聞が、かくも偏向し信頼性に欠ける調査結果を掲載することに戦慄を覚えます。そして、このことは日本経済新聞に限らず、ほとんど全ての新聞に当てはまるのでしょう。
これは読者に対する明白なミスリードであり、大きな罪であることをあらためて問いかけたいと思います。
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