人口減少社会「出生数90万人割れへ!」

国内社会

Introduction:10月7日の日本経済新聞一面に衝撃的な記事が掲載されました。

題して「出生数90万人割れへ 今年 社会保障・成長に影」
日本の出生数が、30年ぶりの異常なペースで急減しているというのです。

2016年に100万人を下回ってから、わずか3年で2019年は出生数が90万人を割る可能性が高くなっています。

これは明らかに「日本の危機です」

想定の2年以上早く出生減少が加速している

記事によれば2019年の1~7月の出生数は前年同期に比べ「5.9%」減少し、このまま推移すれば2019年は90万人を割り込む公算が大きくなったことを伝えています。

国立社会保障・人口問題研究所が2017年にまとめた推計では、2019年の出生数は「92万1千人」で、2021年になって出生数「88万6千人」と予測しています。
仮に、2019年で90万人を割るようなことになれば、想定よりも2年も早く90万人を割ることになり、出生減少が加速していることを伺わせます。

この出生減少の問題について、日本総合研究所は「1971~1974年生まれの ”団塊ジュニア” の出産期の終わりを示している」との見方を示しています。というのも、団塊ジュニアは2019年にはすべて45歳以上になるためです。

団塊ジュニアが高齢化したのが原因か?

統計記録のある1899年以降、最も出生数が多かったのが「1947~1949年」で、年間260万超の出生が3年間続き「第1次ベビーブーム」と呼ばれました。元経済企画庁長官であり、作家の堺屋太一氏(故人)はこれを ”団塊の世代” と命名し、以後、この呼び名が広く定着しました。

”団塊ジュニア” とは、「第2次ベビーブーム」と呼ばれた ”団塊の世代” の子供たちのことで、当然のことならこの世代の出生数も多くなると当初は予想されましたが、実際はそうはなりませんでした。

前述した日本総合研究所は「団塊ジュニア世代の出産期が終わった(だから出生数が減った)」との見立てを示しましたが、これは現実の「3分の1程度」しか言い表しておりません。

価値観の多様化した世代

団塊ジュニアはアニメ、コミック、ゲームといった「サブカル」に親しんだ世代です。また、高校や大学時代にインターネットや携帯電話といった、新しいインフラにアクセスもしており、仕事とプライベートを区別する個人主義的な傾向が強いとも言われいます。

”自分探し” といった時代のキーワードもこの世代から生まれ、マイペースで ”自分らしさ” を大切な価値観として捉えています。
そういったライフスタイルから、晩婚・晩産の傾向が強まり「第3次ベビーブーム」は起こらなかったのです。

就職氷河期に生きた ”ロストジェネレーション”

団塊ジュニアが晩婚・晩産だったこと以上に、この世代は「結婚や出産にインセンティブが与えられなかった世代」と言えます。

1995年。1月7日に「阪神淡路大震災」が、3月20日に「地下鉄サリン事件」が立て続きに起きた暗い時代、バブル崩壊の影響も広範囲に表れはじめました。また、97年には山一証券が廃業するなど、金風危機が起きたのもこの時期です。

そして、その時期に社会問題化した「就職氷河期」によって、団塊ジュニアの雇用は破壊され、彼らは ”ロストジェネレーション” と呼ばれるようになりました。

◆ 関連記事 ◆
『【悲しいお知らせ】消費税は再び増税されます ~団塊世代の利権を守る日本国家』

ロストジェネレーションでは正社員になれなかったため、仕方なくフリーターをやるケースが大半となり、また、運よく正社員になれたとしても、 採用が極めて厳しい中での就職で妥協を余儀なくされ、希望の仕事に就けなかったことから ”若者が3年で辞める” といった現象も多く見られました。

このような状況では、出産どころか結婚すら躊躇してしまうでしょう。
つまり、団塊ジュニア(ロストジェネレーション)世代は、他の世代と比べ未婚率が突出しており、そもそも子供をつくる土壌がなかったことが、今回の出生数の原因と考えられるのです。日本経済新聞の記事は、その辺の事情をうやむやにしている気がします。

安倍首相が今すぐやるべき3つの対策

エドワード・ルトワック氏

今回、日本に来る祭、私が乗った飛行機の席の近くに、赤ちゃん連れの母親がいた。この赤ちゃんが泣き始めたので、私は席を立って、彼らのそばに行った。その母親は、不満を言いにきたと思ったのか緊張したようだったが、「私にも孫がいる。赤ちゃんは私にまかせて、トイレにでも行って、リラックスなさい」と声をかけると、安堵の表情を浮かべた。ところが、私の隣に座っていた男は不満げに「俺はわざわざビジネスクラスのチケットを買ったのに、赤ん坊がうるさくてたまらん」と言うではないか。私はその男に言ってやった。「お前は馬鹿だ。赤ん坊のそばにいたくないという奴は、人生のセンスが全くない人間だけだ」と。
~エドワード・ルトワック『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』(文春新書)~

戦略思想家と評されるエドワード・ルトワック氏は、政治、経済についての幅広い知見を有し、ことに専門の安全保障分野においては、現場の実務から国家の大局まで、鋭い論評を展開しています。

日本が戦わねばならない3つのフィールド

そのルトワック氏が、2018年9月に上梓した『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』の中で、日本は今後新しいシステムを構築する必要があるとして、戦わなくてはならないフィールドを「3つ」挙げているのです。

一つ目は、北朝鮮の脅威。
二つ目は、米中対立を軸とした「地経学(ジオエコノミクス)的紛争」
そして、三つ目が、
少子社会なのです。

ここで注意したいのは、少子社会が ”何らかの対応が迫られる問題” なのではなく、”戦うフィールドである” と敢えて定義付けされている点にあります。
つまり、ルトワック氏は、少子社会を単なる「社会問題」として捉えているのではなく、国の行く末を左右する「国家戦略」と認識しているのです。

この辺の温度差が、巷に溢れれる日本の凡百の政治家と、彼との決定的な違いとなります。


安倍首相の少子化政策、安全保障政策はちぐはぐだ

北朝鮮との安全保障問題と、日本の少子化問題を同列に扱うことに違和感を感じる方もいるかもしれませんが、考えてみれば、それも当然と思われます。

 日本は長年、少子化問題を議論しながら、人口減少という国家にとって真の危機を間近にしても、思い切った施策を打ち出そうとしていない。そもそも将来の納税者が減少すれば、近代国家は衰退するしかないのだ。

 もうひとつ、子どもがいなければ、安全保障の論議など何の意味もないことだ。人間の人生には限りがあり、未来は子供の中にしかない。当然、国家の未来も子どもの中にしかなく、それを守るために安全保障が必要なのである。どんなに高度な防衛システムを完成させても、国内の子どもが減り続けている国が戦争に勝てるのだろうか? 未来の繁栄が約束されるのだろうか?
~エドワード・ルトワック『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』(文春新書)~

この下りは全て、現在の安倍首相に対するアンチテーゼになっています。
ご存知のように、安倍首相はアメリカから必要かどうかも定かでない兵器を大量に購入し、最近ではイージス・アショアの必要性やF35戦闘機の ”爆買い” なども大問題となりました。

そして、安倍首相が進める少子化対策はまるで実効性が伴っておらず、待機児童の問題や、子どもを産んだ後の社会環境の整備、さらには子供の7人に1人は貧困に陥っているなど、ルトワック氏が指摘するように ”子どもの未来にはまるで関心がなく、高度な防衛システムを買うことで日本を滅ばす” 方向に舵をきっているようにしか映っていないのです。

ルトワック氏は、日本が本当に戦略的な施策を打ち出すのであれば、日本人が得意とする包括的なチャイルドケア・システムは必要であると説いています。
スウェーデン、フランス、イスラエルは実際にそのようなチャイルドケア政策を次々と打ち出しています。

ちなみに、イスラエルは不妊治療を100%無料で行っているようです。
まさかルトワック氏からこのような発言が出るとは思いませんでしたが、なるほど、確かにこういうことであれば日本がやるべきこと、やれることは数多くあるように思われます。

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