北朝鮮が ”核保有国” として黙認されるこれだけの理由

Introduction:北朝鮮は、非核化をめぐる実務者協議を行うと発表したばかりの10月2日、その発表をぶち壊すかのように ”飛翔体” を発射しました。
翌3日、それが潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)だと分かると、世界の耳目はトランプ大統領の Twitter に集まりましたが、この時ばかりはさすがのトランプ大統領も ”ぐうの音も出ません” でした。北朝鮮の究極の瀬戸際外交に屈した形です。
これまでトランプ大統領は、単距離型のミサイルについては問題視しない姿勢をとってきましたが、SLBMとなると話は別です。アメリカを射程に入れる長距離型と同等の能力を有するからです。
10月5日、スウェーデン・ストックホルムで開かれた米朝の実務者協議では、北朝鮮側が「決裂した」と発表する一方で、アメリカ・ポンペイオ国務長官は「これからの対話の道筋をつくるよう望んでいる」といったように、両者には奇妙な隔たりがあります。
これらの経緯は一体何を意味しているのでしょうか?
そして、北朝鮮の非核化は実現するのでしょうか?
残念ではありますが「非核化は実現しない」と考えます。
実は、今や北朝鮮は各主要国と経済的・技術的交流を深めてしまっているからです。北朝鮮は、もはや私たちが知る北朝鮮ではありません。
今回はメディアでも取り上げられることもなく、ほとんど知られていない北朝鮮の素顔を紹介し、今後の北朝鮮の行方について考えてみたいと思います。

DHLの宅配車が走る首都平壌!

平壌市内を走るドイツの物流会社DHLの宅配車とタクシー。平壌では車の通行量は年々増え、交通ラッシュの時間帯もある。昔は黄色い車はかなり目立つ存在だったが、最近はタクシーも含めてカラフルな営業車も増えている。
Photo by : JIJI.COM
『 北朝鮮・平壌の風景2014 写真特集 』

安倍首相の北朝鮮に対する姿勢は、彼が官房長官だった頃からほとんど変わっておりません。ワールドワイドに ”経済制裁” という名の圧力をかけ、加えて ”人権問題” を大義名分とした国際包囲網を形成するというものです。

だから安倍首相は ”外遊” するたび、北朝鮮へ強硬な姿勢をとるようお願いして回っているのです。

これは、「北朝鮮が閉ざされた、世界から孤立した国」という前提に立脚しているのですが、現実的には北朝鮮は閉ざされてもいないし、孤立してもいません。
実は、北朝鮮には多くの主要国が参入しており、北朝鮮の経済的・技術的発展を促す結果をもたらしています。

例えば、首都平壌の空港にはドイツの国際宅急便「DHL」のカウンターがあり、平壌市内では実際にDHLの宅配車が走るところを見ることもできます。

観光客は年間20万人を超えている!

北朝鮮観光を専門としている旅行会社「株式会社ジャエイエス・エンタープライズ」では、北朝鮮の軍人と記念撮影ができる「板門店観光 モデルコース」(写真)なども用意されている。

意外にも北朝鮮は、欧米では人気のある観光地となっており、年間20万人以上もの観光客が北朝鮮を訪れます。
数では中国人が最多ですが、欧米には専門の旅行会社もありますし、敵対しているはずのアメリカからの観光客もいます。

実は、日本にも北朝鮮を専門としている旅行会社があります。(「株式会社ジェイエス・エンタープライズ 」
北朝鮮を観光できると思っていない日本人が多い中で、年間300人以上もの日本人が実際に北朝鮮を訪れています。

イギリスが北朝鮮の地下資源開発に大枚をはたいている!

中国、ドイツ、ロシアなどの主要国が、北朝鮮に対し多額の投資をしているのが分かっていますが、その中でもイギリスの投資額が突出していると言われています。

彼らの最終目的は、北朝鮮に眠る地下資源です。

2000年12月にイギリスと北朝鮮が国交を樹立し、翌2001年にロンドンと平壌にそれぞれ大使館が設けられています。イギリスはこの頃から北朝鮮への投資を進めてきました。

 2006年には英国の金融監督庁が北朝鮮向けの開発投資ファンドに認可を与えた。その結果、アングロ・シノ・キャピタル社は5000万ドルを投資し、北朝鮮で鉱山の開発に着手。

 なぜなら、北朝鮮に眠る地下資源の価値は6兆ドルと見積もられているからだ。そのため、投資家の関心は高く、瞬く間に1億ドルを超える資金を調達した。

 また、英国の石油開発会社アミネックスは北朝鮮政府と独占探査契約を結び、1000万ドルを投資し、朝鮮半島西岸域で油田開発計画を進めている。
~SmartFLASH『北朝鮮を支援する英国「メイ首相」来日の裏で脱出者が急増中』

スイスのグローバル企業が北朝鮮に軽水炉を売った!

スイスも北朝鮮と関係が深いことで知られています。
実は、2000年にスイスのグローバル企業「ABB」が、原子力発電に使われる「軽水炉」を北朝鮮に売却したことが分かっています。

北朝鮮が軽水炉を手に入れ、プルトニウムの抽出が可能となったことで北朝鮮の核技術が急速に発達するようになったのですが、このことを非難する国は皆無です。

実は、この2000年の段階でABBの取締役として名を連ねていたのが、ドナルド・ラムズフェルド氏でした。その翌年の2001年、彼はブッシュ政権の国防長官になっています。

※ラムズフェルド氏をめぐる経緯については
「CNN Money Rummy’s North Korea Connection What did Donald Rumsfeld know about ABB’s deal to build nuclear reactors there? And why won’t he talk about it?
に詳細な記事が掲載されています。

ブッシュ大統領は2002年、演説の中で「北朝鮮」「イラン」「イラク」を名指しで非難し、「悪の枢軸国」とまで言ったことは世界中に衝撃を与えましたが、お膝元では自分の閣僚が北朝鮮へ軽水炉を売りこんでいたとは、「悪の枢軸国」以上の衝撃と言う他ありません。

2000年にスイスのABBが北朝鮮に軽水炉を売却して間もなく、ABBの原子力事業部門は、なんとイギリスの原子燃料公社に買収されています。

3.イギリスにおける原子力産業の変遷
BNFL( 英国原子燃料公社 )は世界の原子力産業再編の動きに呼応し、1999年3月には米モリソン・クヌーセン社とともに米ウェスチングハウスの原子力部門を、2000年5月にはABB社の原子力部門を買収し、ウラン濃縮施設、燃料加工、発電、再処理、エンジニアリング、輸送、廃棄物管理、除染・デコミッショニングなどの部門を擁する世界最大の総合原子力企業となった。
~資料出典:国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構『イギリスの電気事業および原子力産業 (14-05-01-06)』

そして、この2000年とは、上述した通り「イギリスと北朝鮮の国交が樹立された年」であり、以後、イギリスは北朝鮮への投資に邁進するのです。
どうでしょうか?
見事なまでに話が ”ぐるり” と回っていますね。

実は、北朝鮮の最初の外貨銀行についても、HSBC(香港上海銀行)出身のイギリス人によって設立されました。

このイギリス人は北朝鮮政府高官を何名か役員に引き入れ、その北朝鮮の外貨銀行の子会社がミサイルや核技術を闇で販売している、といった疑惑がイギリスの大手新聞でも取り上げられたことがあります。

北朝鮮は宝の山だ!

かつては ”悪の枢軸” であった北朝鮮ですが(今もそうでしょうが・・・)、現在のトランプ大統領は頻繁に金正恩と会うようになりました。結局、アメリカもイギリスや他の主要国と同様、北朝鮮の地下資源が欲しくてたまらないです。

安倍首相は北朝鮮に対し、制裁一辺倒の思考しか持ち合わせていないようですが、主要国の面々はそんな安倍首相を尻目に、表向きは強弁な姿勢を見せつつ、裏では北朝鮮へ接近し利益を虎視眈々と狙うといったような、ダブルスタンダードを展開しているわけです。

当然、北朝鮮への制裁はどうしても腰砕けになるほかなく、いずれ北朝鮮は核兵器についても技術や運用方法を確立すると考えられます。残念ながら、現実世界は安倍首相の想定を遥かに超えています。

おそらく、今後の北朝鮮はパキスタンのように、核兵器保有を ”事実上黙認された” 国家となるでしょう。

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