Introduction:台風19号の被害は、関東甲信越から東北地方にかけて10月17日現在、全国で77名もの死者が確認されています。
特に、筆者の暮らす福島県では死者が28名にも上り、全国の都道府県の中で犠牲者の数が最多となりました。
その福島県の中で、最も多くの犠牲者を出したのが「いわき市」そして「本宮市」で、死者は7名を数えています。
これは、台風19号により被災地となった本宮市の、現在の厳しい状況を伝えるレポートです。
本宮市街地では「バックウォーター現象」が起きていた
今回取材したのは、本宮駅前の商店街、ならびに住宅区域です。
(上図、四角枠箇所)
画像にもあるように、本宮駅周辺の特徴は、近くに大規模河川「阿武隈川」が東北本線と平行に南北に流れ、加えて東西に流れる「安達太良川」が阿武隈川に直行する形で流れ込んでいることです。
このような地理的要因により、本宮駅周辺では「バックウォーター現象」が起きていたと考えられます。
つまり、本流である阿武隈川が台風により著しく増水し、支流である安達太良川の流れが本流の増水にせき止められる形で水位が急激に上がり、最後には堤防が決壊してしまうといった状況です。
時間軸で言えば、安達太良川では12日の夕方頃から水位が急激に上がり、阿武隈川との合流地点から約500m上流で堤防が決壊。川の北側の市街地に濁流が一気に流れ込んだと考えられています。
また、阿武隈川では13日の午前0時時点で氾濫危険水位を超え、午前1時頃に水があふれ、JR本宮駅前周辺の商業街や住宅区域に濁流が流れ込みました。
JR本宮駅前の状況
筆者がこの地を訪れた10月16日現在、停電のためと考えられますが、駅前の一部では信号機が作動しておらず、道行くドライバーは皆慎重に車を運転していたことが印象的でした。幸いにも大きな交通トラブルは起こっていない模様です。
駅前の道路はだいぶ泥も流されたようですが、未だ茶色の痕跡は多く残されており、また泥が粉塵となって舞っているため、マスクは必需品となっています。
災害廃棄物の仮置き場の状況
未曽有の被害となった台風19号においては多くの建物が濁流に浸かってしまったために、家庭、企業、小売店などから非常に多くの災害廃棄物が発生しました。
本宮市のHPによれば、これら廃棄物の仮置き場となったのが「本宮運動公園」の東側敷地です。
現在は駐車場となっており、その隣接地は原発被害者のための仮設住宅が設置されていた場所ですが、ここに連日大量の廃棄物が運び込まれています。
起伏に富む街、本宮市
福島県の中央に位置する本宮市は、元々は農業・林業・畜産業が盛んな地域で、駅から車で5分も走れば田園風景や山並みを見ることができます。
また、周囲を山々に囲まれ、阿武隈川や安達太良川が貫くといったように、非常に起伏に富んだ土地でもあります。
このような地理的な特徴もあり、一見平地であっても微妙なアップダウンがそこかしこに存在し、そのことが濁流被害があった地域と、そうでない地域のコントラストが浮き彫りになった感は否めません。
また、今回氾濫した阿武隈川についても、その堤防の規模からとても氾濫するとは思われず、しかしながら実際に氾濫したことを考えれば、いかに今回の台風19号の勢いが凄まじかったのかを伺わせる、福島県本宮市の状況でした。
一日も早い復旧を祈らずにはいられません。
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