札幌「大覚寺」の除夜の鐘、苦情を受け中止の ”謎” を解く

「曹洞宗 金龍山 大覚寺」

Introduction:札幌市内にある「大覚寺」が、大晦日の「除夜の鐘」の中止を決定したことが話題となっています。

市民からは「やめないで欲しい」といった声も多く、作家の百田尚樹氏も Twitter で疑義を呈するなど、事態は大きな波紋を呼んでいます。

そして、中止の理由はなんと、市民からの「うるさい」といった苦情によるものだというのです。

住職によればこの数年で数十件の苦情があったとのことですが、実際のところはどうなのでしょうか?
今回は「除夜の鐘」中止問題の謎を解きます。

声の大きい少数派が、静かな多数派を圧倒し、伝統行事を容認しない社会?

今年になって初めて除夜の鐘の中止を決定したのは、札幌市内にある「曹洞宗 金龍山 大覚寺」

建立は1907年(明治40年)の由緒あるお寺ですが、住職の荒木道宗氏(47)によれば「数年前から数十件、”うるさい” といった匿名の苦情が届いていた。継続を望む声も同じくらいあったが、やむを得ない」とのこと。

作家の百田尚樹氏による「声の大きい少数派が静かな多数派を圧倒する典型的事例・・・」とは、なかなか言い得て妙です。
もっとも、これは静かでおとなしい日本国民を首相官邸が統制する日本の政治構造そのものでもあるのですが・・・。

それはさておき、荒木住職が言うように「伝統行事を容認しない社会の空気は戦時中と似てきているのかも」しれません。除夜の鐘が中止になったのは過去に一度あり、それは戦時中に軍需物資製造のために鐘を差し出した時だったわけですから。

お寺の前には「除夜の鐘」中止を周知する立て看板が、既に設置されております。

近隣のお寺に苦情はあったのか!?

「大覚寺」周辺の地図

今回、大覚寺は市民からの ”うるさい” という匿名の苦情により、除夜の鐘の中止を決めたわけですが、このことについては腑に落ちない点があるのも、また確かです。

大覚寺は札幌駅からも比較的近く、周囲は住宅や商業施設が立ち並ぶ市街地の一角に位置しています。
ちなみに、上の地図からも明らかなように、大覚寺から直線距離にして500m程度の所に2つのお寺、「浄土真宗 法国寺」「日蓮宗 本龍寺」があるのが分かります。

もし仮に、大覚寺に匿名の苦情が寄せられたとしたなら、これらのお寺にも同様の苦情があるはずです。大覚寺が除夜の鐘を中止にしても、他の2つのお寺が鐘を突いてしまったら、やはり ”うるさい” と感じるはずだからです。

よって、当ニュースサイトでは早速「浄土真宗 法国寺」「日蓮宗 本龍寺」に電話取材をしてみることにしました。

そして、そこで分かったことは、

「2つのお寺には、これまで除夜の鐘が ”うるさい” といった苦情はまったく無かった」

という事実なのです。

浄土真宗 法国寺の証言

これまで除夜の鐘が ”うるさい” といった苦情はまったくない。
・今年も予定通り除夜の鐘を行う。

日蓮宗 本龍寺の証言

これまで除夜の鐘が ”うるさい” といった苦情はまったくない。
実は、除夜の鐘については6,7年前からやめている。

私たちは除夜の鐘を分かっていない!?

「日蓮宗 本龍寺」の住職から伺った話は、実に興味深いものでした。
除夜の鐘の苦情がなかった点については法国寺と同様ですが、本龍寺の場合は6,7年前から除夜の鐘をやめているというのです。

一つには、酔った参拝客が力任せに鐘をついたりすることで、鐘つき棒(橦木:しゅもく)が壊れてしまうということが頻発していたためです。この修理にはかなりのお金が掛かるとのこと。

二つ目の理由としては、参拝客の大半が除夜の鐘の本来の意味を理解しておらず、大晦日の行事が「レジャー」や「イベント」になってしまっているからです。住職は、むしろ二つ目の理由を嘆いているように思われました。

百田尚樹氏を引き合いに出すまでもなく、私たちは除夜の鐘を「伝統」と言っては何かあるごとに尊ぶ傾向にありますが(まさに今回のように!)、では本来の意味を知っているのかと問われれば、筆者も含め即答できる人は少数派だと思われます。

そして、調べてみて初めて「大きな音で鐘をつき、108存在すると言われる煩悩を振り払う」という本来の意味に気づかされるのです。

なぜ大覚寺は除夜の鐘をやめたのか?

市民からの苦情はなかった!?

問題となった「大覚寺」に話を戻します。
まず、最初に申し上げたいのは、中止の引き金となった市民からの苦情などなかっただろう、ということです。

近隣のお寺にはそのような苦情は皆無でしたし、数年で数十件というレベルで除夜の鐘をやめるというのは、理由としては甚だ不自然です。

では、どういった理由なのかと言えば、おそらくは上述した「本龍寺」と同じような事が大覚寺でも起こっていたからだと考えられます。

除夜の鐘は単なるレジャー、イベントなのか!?

確かに、除夜の鐘は今では単なるレジャー、イベントでしかありません。
大晦日という休日モードになったハイテンションの酔っ払いは、力任せに鐘を突きますし、ゴミや酷いときは吐しゃ物まで周囲に撒き散らします。

そして、私たちが正月気分が抜ける頃には、お寺は備品設備の修理や敷地の清掃などに頭を痛めているかもしれないのです。

このようなことが毎年繰り返されるのは、当事者にとっては不毛なことでしょう。大覚寺の荒木住職は、この不毛なスパイラルにウンザリしてしまったのかもしれません。

大覚寺の除夜の鐘を復活させるには、私たちはもう一度「伝統」について振り返る必要があるのかもしれません。伝統を継続するのは、結局は私たちの「意識」であるということを、この問題を通して気づかされました。

Last Updated on 2020-04-03 by この記事を書いた人:白坂和哉

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