Introduction:30分の予定を大幅に超え、2時間24分もの間しゃべりにしゃべったカルロス・ゴーン被告。

これは記者会見というよりも『独演会』、あるいはゴーン氏による ”ライブ・パフォーマンス” と言うべきものでしょう。

つまり、彼の犯した罪はともかく、それほどまでに彼の日本の検察に対する怒り、恨み、憎しみは私たちの想像を絶するほどに根深いということ。非常にプライドが高い彼だけに、自身が受けた仕打ちをいかにして晴らそうか?――そんなゴーン氏の腹の中が透けて見えるような会見でした。

しかし、これはあくまで第一幕に過ぎません。今後彼はどのような手を打ってくるのでしょうか?

「日本で死ぬか、出て行くかだ」

さすがの雄弁家、ここに炸裂!といったところでしょう。
「菅話法」なる木で鼻を括ったような会見しかできない官房長官がおり、事前に質問を貰わないと会見すらしない、できない首相がいる日本。

それに比べれば、2時間24分もの間、変幻自在に言葉を並べ自身の主張を叩きつけたカルロス・ゴーン被告は、やはり並の人物ではありませんでした。しかも、記者会見のほぼ全てを一人で取り仕切る剛腕ぶりで、8日の22時から開始された記者会見は完全に彼に吞まれた格好になりました。

とはいえ、出席できるメディアは予めゴーン氏によってセレクトされていたこともあり、この会見は正式には「記者会見」ではなく、「記者懇談会」という位置づけです。ゴーン氏はこれまで溜まりに溜まったストレスを、ある程度気が知れたメディアを相手に一気に発散させたかった、そう思わせる会見でもありました。

日本から出席できたメディアは「朝日新聞」「テレビ東京」そして、なぜか「小学館」

彼に言わせれば、事実を正確に分析できるとして選ばれたのが日本の3社のメディアだったということ。ここにNHKが含まれていないのは何とも意味深です。

それほどまでに日本のメディアは彼に信用されていないということなのでしょうが、それ以上に信用されていない、激しい憎悪の対象となっているのが日本の検察のようです。

これについては多方面で詳しい報道が為されているので、ここでは詳細に触れませんが、端的に言えば、今回のゴーン氏による記者会見は、日本の検察に対し怒り、恨み、憎しみをぶつけるために企画されたものだったと思われるのです。

隔靴掻痒の感は拭えない記者会見

Video by : abemaTV

記者会見が終了した今になって思うことは、結局のところ、今回の記者会見は政府関係者の名前が出るか否かが最大の焦点だったということです。しかし、いざ蓋を開けてみれば、ゴーン氏はレバノンの国益に反することはできないとした上で、事件に関与した政府関係者の名前を挙げることはしませんでした。

まさに隔靴掻痒(かっかそうよう)の感が拭えない会見となりましたが、代わりに彼は日産自動車の関係者については3人の名前、「川口 均氏(前副社長)」「今津 英敏氏(元監査役)」「豊田 正和氏(社外取締役)」を挙げてみせたのです(▲動画)

また、「西川 広人氏(前社長)」についても会見で頻繁に名前が登場していることから、事件に関与した日産側の人間であることには違いないでしょう。

ゴーン氏は、今回の逮捕劇が日産自動車や日本政府が自らを引きずり落とすための陰謀、あるいはクーデターであることをしきりに強調していましたが、「では、この陰謀は日本政府のトップ(安倍首相を始めとする首相官邸の人間)にまで及んでいると思うか?」との英BBC記者の質問に対しては、「トップまで関与しているとは思っていない」と答えています。

しかし、ゴーン氏が答えなくとも、上述した名前が出ただけで事は足りているのです。

すなわち、川口均氏はゴーン氏逮捕の翌日には首相官邸を訪れ、事件の経緯を菅官房長官に説明した ”日産と首相官邸のパイプ役” ですし、豊田正和氏は元々は経産省の出身で ”日産と経済産業省のパイプ役” であることは明白だからです。

つまり、首相官邸と経済産業省は事件に何らかの形で関与しているだろうということです。

首相官邸はレバノン政府と ”手打ち” した?

これ程までに日本の検察をdisってしまったら、二度と日本の地は踏めないでしょうし、日本とレバノンとの間には犯罪人引渡し条約も結ばれていなければ、レバノンには国民の身柄引き渡しを禁じる法律すら存在しています。

ゴーン氏は「正義から逃れたのではない。不正な政治的迫害から逃れたのだ」と言い、公正な裁判であればいかなる裁判でも応じるつもりでいると主張。ブラジル、フランス、レバノンなら公正な裁判を受けられると思ったといいます。

しかし、ゴーン氏に対しては今後も裁判は開かれることはなく、死ぬまでレバノンに釘付けとなるでしょう。米CNN記者が見事な突っ込みを入れたように、ゴーン氏については「日本の小さな独房から、レバノンの大きな独房に器が変わっただけで、結局はどこへも行けない」身の上なのです。

このような ”現実” を踏まえると、日本政府の対応としては一つしかありません。それは「カルロス・ゴーンについては目をつむるから、日本の政府関係者の名前だけは絶対に表に出すな!」ということです。

つまり、安倍政権はレバノン政府と ”手打ち” をしたものと考えられます。
森友・加計学園疑惑を乗り切り、したたかに存続している政権ですが、ゴーン氏の口から政府関係者の名前が出た日には、さすがの安倍政権と言えども一発で吹き飛んでしまいます。

よって、レバノン政府からゴーン氏へ口止めが掛かり、それが「レバノンの国益に反することはできない」とのコメントに表れたものと思われます。

さて、カルロス・ゴーン氏をめぐる今後の動きはどのように推移してゆくのでしょうか。ゴーン氏は自身の嫌疑を晴らすために、これから多くの書類を公開してゆく構えを見せています。彼の意図するように、日本の検察の後進性を存分にアピールできたという意味において、第1ラウンドはゴーン氏側に軍配が上がったと言えるでしょう。

しかし、闘争はまだ始まったばかりです。ゴーン氏はレバノンに腰を据えて今後も日産自動車、日本の検察に対して攻撃を仕掛けてくるに違いなく、その模様はインターネットを中心として世界に拡散してゆくでしょう。よって、日本のメディアは従来の忖度や印象操作といった手法が効きにくく、ここでも日本の後進性を世界に晒すのではないでしょうか。

記者会見でのゴーン氏は感情的に沸騰しており、彼が今回の騒動のゴールをどのように想定しているのかは依然として不明のままです。
「カルロス・ゴーン事件」とは、誰も勝利することができない ”不毛な” 闘争になるかもしれません。

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