ブラック東京五輪は ”死のロード” を駆け抜ける!?~マラソン札幌案合意

国内社会

東京五輪は灼熱地獄の ”死のロード” だ!

ここに恐ろしい資料があります。

「総務省消防庁」が作成した『平成30年度の熱中症による緊急搬送状況』によれば、平成30年(2018年)の5月から9月まで、全国における熱中症による緊急搬送人数の合計は驚くべきことに「95,137人」に上り、その中で「160人」もの方が亡くなっているというのです。

そして、月別の緊急搬送人数では7月が最も多く「54,220人」(死者133人)、次に多いのは8月の「30,410人」(死者20人)でした。

この資料で特に気になるのは、平成30年度とそれ以外の年度の「差」です。
他の年度は4万人台から5万人台で推移しているのですが、平成30年になるとその人数がいきなり増えているのです。

この数字は、昨今の異常気象、異常猛暑と何らかの関係が危惧されるところです。確かに、昨年の平成30年も異常なまでに暑い夏が続きました。

では、昨年と同じように暑かった、今年2019年の熱中症の緊急搬送状況はどうかと言えば、総務省消防庁の調べでは下記の通りとなっています。

  • 5月:4,448人(前年比 +2,021増)
  • 6月:4,151人(前年比 +1,118増)
  • 7月:16,431人(前年比 -37,789減)
  • 8月:36,755人(前年比 +6,345増)

9月の資料は公表されておらず、また7月においては大きく減少したものの、5月から8月の合計人数は「61,785人」となっており、明らかに例年と比べ突出している様が見て取れるのです。

この事実が何を意味しているかは明白です。
日本の気温は最近では上昇トレンドにあり、特にこの数年はその傾向が顕著に現れていること。そして、この異常猛暑、灼熱地獄は下記の気象庁の資料が物語っているように、来年も引き継がれるだろうことです。

来年は言うまでもなく「東京五輪」が控えております。
開会期間は「2020年7月24日 - 8月9日」、まさに ”熱中症の被害が最も多い時期” に東京五輪は開催されるのです。

実は、今年2019年の東京都の「7月29日 - 8月4日」、つまり東京五輪と同じような時期における熱中症の緊急搬送人数が分かっております。

上記の資料を見ると、この時期、東京において熱中症で搬送されたのは「1,857人」で、なんと全国1位です。しかも、前年と比べると、その数は「612人」も増えていることが分かります。――こういう環境のもと、東京五輪は開催されるのです。

東京五輪には国内外から多くの観客が押し寄せ、それにボランティアや選手、競技関係者が加わります。この状況で東京五輪を進めれば、どれほどの人間が熱中症で運び込まれるか、まったく想像もつきません。

そして、熱中症が減る要因など何一つ見当たらず、むしろ、五輪期間中は例年の数倍、数十倍もの熱中症患者が緊急搬送されるのではないかと、今から危惧しています。

札幌案にキレた小池知事は滑稽だ

そのような中、突如として飛び込んできたニュースが「マラソンと競歩の競技会場を東京から札幌に移す」という計画案です。これは、熱中症をはじめとする真夏の暑さ対策のためです。

この案については10月16日、国際オリンピック委員会(IOC)が突然発表したもので、既に国際陸上競技連盟に伝えたようではありますが、 日本の大会組織委員会の実務担当者や、開催都市である東京都には伝わってはいなかった中、”札幌案” については翌17日には決定事項となってしまいました。

これに対しては、さすがに東京都知事の小池百合子氏もキレてしまったようで、「涼しいところでやりたければ、北方領土でやったらどうだ」と露骨に不快感をあらわにしましたが、チケットも既に売り出されてしまった中で、なんとも滑稽な話です。

というのも、「なんだって今さら競技会場を移してるんだ!?」という話に戻ってしまうからです。

五輪招致に向けた日本の大ウソ

2013年の五輪招致時、日本は世界に対して何と言ったか?
天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と、そう喧伝したのです。

もちろん、これは「福島原発の状況は完全に制御(アンダーコントロール)されている」といった、安倍首相による喧伝と同じレベルの ”大ウソ” です。

既に提示した熱中症に関する数字を出すまでもなく、ここ最近の日本の猛暑トレンドは誰の目にも明らかで、誰一人として根本的な対策をとってこなかった事が今回の ”ちゃぶ台返し” を招きました。そして、ウソを塗り重ねる日本の大会組織委員会と、それを黙認してきたIOCは、その無責任さにおいて同罪と言えるでしょう。

遮断性塗装も ”逆効果”

猛暑に対する対策について、小池知事に言わせれば様々な施策を凝らしてきたとして「かち割り」「保冷剤」「手回し扇風機」を配ることを挙げているようですが、これらなど笑う他なく、まるで議論に値しません。

また、競技の開始時間をずらしたりするといった小手先の対策も、今回の札幌案の原因となったドーハでの陸上世界選手権では、ほとんど効果がなかったことが分かっています。

そのような対策の中で、比較的有望と思われたのが「遮熱性舗装」です。
道路の舗装表面に赤外線を反射させる遮熱性樹脂を塗布したり、遮熱モルタルを充填することで、路面温度を10℃以上低減し、夜間も舗装からの放熱量を減らすことができるといった舗装工法です。

確かに、この工法だと路面温度が10度程度低下しましたが、太陽光の反射により、逆に人間の顔の高さ付近では気温「2.6度上昇」、暑さ指数「1.3度上昇」、赤外線「20倍」、紫外線「4倍」となることが分かったのです。

※参考:東京新聞 TOKYO WEB 『<東京2020>暑さ防ぐ舗装 逆効果 路面10度低下も気温は2度上昇』

東京都は、このような役立たずの代物を既に約130㎞にわたって整備してしまったようで、ここまでくると ”悲劇” と言うよりも ”喜劇” と言う他ありません。

競技と言うよりもまさに ”死のロード”

こうして考えると、マラソンと競歩の競技会場を東京から札幌に変更することは、選手の体調・健康・安全面の観点からすれば、当然と言えば当然の帰結だったと思われます。

それでも、今回の競技会場の変更に伴って、いくつかの疑問が残るのも、また確かです。

札幌は本当に涼しい環境なのか?

東京と札幌の違いについて、日本のマラソン関係者の中から鋭い提言が為されています。

それは、東京の朝6時はビルの影が多く、直射日光の約7割ほどはカバーされる反面、札幌の場合はビル影が少なく、直射日光のカバーはあまり期待できないという、経験値に基づいた事実です。

つまり、札幌へ場所を変えたことで、むしろ直射日光の暑さは東京よりも上昇する可能性があるということです。

しかも、今年2019年の札幌は 7/27~8/7 の間は軒並み最高気温が30℃を越えており、8/8 に大雨が降ったことでようやく気温が25度まで下がったという経緯があります。大雨がなければ、どうなっていたのでしょう?

なぜクソ暑い真夏にオリンピックを開催するのか?

これが最も根源的な疑問になるはずです。
ちなみに、前回1964年に行われた「東京五輪」では、「真夏は不可能である」という至極真っ当な結論が出たために、大会期間が10月に設定されました。

今回、真夏の7月から8月にかけて東京五輪が開催されるのは、アメリカのテレビ業界の都合が大きく影響しています。

つまり、アメリカでは7月にテレビコンテンツが不足する傾向にあり、多額のテレビ放映権料を支払うアメリカが、IOCに対して五輪の7月開催を強く要望している中で、ライバルの「イスタンブール」や「マドリード」に負けたくない日本が「・・・晴れる日が多く、かつ温暖であるため・・・」という大ウソをついて、熱中症の最も多い真夏に開催期間を設定したわけなのです。

こうして考えると、来年の東京五輪は、マラソンと競歩が若干涼しい ”可能性” のある札幌で競技を行うことになったというだけで、他の種目、例えば野球、陸上、ラグビー、ゴルフなどは予定通り、真夏の日中帯にプレーすることを強いられるわけで、危険であることの本質は何一つ変わっていないことに気づきます。

これは選手は言うまでもなく、選手関係者、ボランティア、その他大会スタッフにとって大きな肉体的負担になることでしょう。

来年の東京五輪は「スポーツの祭典」というよりは、むしろ ”死のロード” へと変貌するかもしれません。

そして、仮に死者が出ても、この国では誰も責任をとらないのです。
今となっては、最悪の事態にならぬよう、祈るほか術がありません。

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