丸山穂高氏が、歴史に残るフワフワ政治家であるワケ

Introduction:北方領土をめぐる「 戦争しないと、どうしようもなくないですか 」発言(戦争奪還論?)で、日本中から大バッシングを受けている丸山穂高・衆議院議員ですが、もしかしたら彼は ”歴史に名を残す” 政治家になりそうです。ただし、”フワフワ政治家” としてですが・・・

どこにでもいる、手に負えない酔っ払い

 身を持ち崩す人間というのは、どの世界にも一定数存在します。サラリーマンの世界にも、起業家の世界にも、もちろん政治の世界にも存在します。仕事もそれなりに出来るし、人柄もそう悪くはない。しかし、特定の原因による大失態で会社をクビになったり、組織からはじき出されてしまう人間のことです。

 この特定の原因とは大抵の場合、「金」「女」「酒」と相場が決まっていますが、今回取り沙汰されている丸山議員の場合は「酒」でした。この手の人物は一旦酔うとモードが切り替わってしまうので、大言壮語したり、大喧嘩したり、セクハラしたりで手がつけられません。

 そして、酔っているその瞬間においては ”自分は今、酔っているな” という自覚が皆無であるが故に(これが最大のポイントですが)、発言については間違いなく「本音」が出るわけです。さらに、普段自分では意識していない ”潜在意識” の欲望願望すら、酔った席では口を突いて出るので、丸山議員のように ”酒に飲まれるタイプ” は注意が必要です。

 丸山議員は今回の北方領土訪問の際、訪問団事務局が禁止しているのに夜間外出しようとしたり、酔って大声でわめき散らすといったこともしたようなので、状況はあらかた想像がつきます。つまり、”どこにでもいる、手に負えない酔っ払い” ということです。結局、彼は日本維新の会を除名処分となりました。

日本の平和主義を逸脱する議員

 多くのメディアが報道しているように、戦後の日本は憲法の規定に則って国際紛争を武力で解決しない、つまりは戦争を放棄するという形で「平和主義」を貫いてきました。この考え、思想はまさに日本の国是とも言えるもので、今回の丸山発言はこの考えを逸脱する、憲法順守を義務とする国会議員として、あり得ない発言です。

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

日本国憲法 第99条 〔憲法尊重擁護の義務〕

 物事を炎上的に煽り、一部からは「よく言った!」と称賛される丸山議員の発言はいかにも ”日本維新” 的ではありますが、それでも一線を越えてしまったのは明白で、衆議院は議員辞職勧告を与野党一致で決議すると思われます。しかし、丸山氏本人はこの記事を書いている時点、辞職の意向はない模様です。

 筆者は激しい ”既視感” を覚えずにはいられません。国会議員の暴言失言は枚挙に暇がありませんが、今回のように憲法に抵触し、国家の根幹に関わるような発言として、次の事例を挙げたいと思います。

佐藤正久氏の ”駆けつけ警護” 発言

 <イラクに派遣された陸上自衛隊の指揮官だった佐藤正久氏は、当時現場では、事実上の「駆けつけ警護」を行う考えだったことをJNNの取材に対して明かしました。

 
 「自衛隊とオランダ軍が近くの地域で活動していたら、何らかの対応をやらなかったら、自衛隊に対する批判というものは、ものすごく出ると思います」(元イラク先遣隊長 佐藤正久・参院議員)  

 佐藤氏は、もしオランダ軍が攻撃を受ければ、「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだったといいます。  

 「巻き込まれない限りは正当防衛・緊急避難の状況は作れませんから。目の前で苦しんでいる仲間がいる。普通に考えて手をさしのべるべきだという時は(警護に)行ったと思うんですけどね。その代わり、日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれてやろうと」(元イラク先遣隊長 佐藤正久・参院議員)> 

2007年8月10日 TBSニュース

 「ヒゲの隊長」「ヒゲの佐藤」として有名な、自民党の参議院議員・佐藤正久氏です。上記は自衛隊の先遣隊長としてイラクに派遣された頃を振り返り、発した言葉です。

 彼の考えは ”心情的” には理解できますが、自衛官として、部隊の隊長としてはあまりにも ”感情的” 過ぎると言わざるを得ません。彼の言わんとする「駆けつけ警護」については、当時の日本の法に従えば完全にアウトです。日本国憲法の意味するところ、文民統制(シビリアンコントロール)の意味するところを、当時の佐藤氏はあまり理解していなかったのではないでしょうか?

 もっとも、日本の憲法(第9条)に照らしてみて、イラクといった海外に自衛隊を派遣して構わないかと言われれば、「違憲」と言うしかなく、そこに佐藤氏のような発言に、つけ込む余地を与えてしまうことになります。

安全保障関連法案は違憲か合憲か?

 そのようなことを踏まえ、さらに考え進めると、安倍政権で成立した「安全保障関連法案」は、果たして合憲なのかといった疑問が湧いてきます。

 2015年9月に成立した俗に言う「安全保障関連法」は、「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」で構成されますが、「集団的自衛権行使の容認」や「外国軍の後方支援の拡大」、そして、上記の「駆けつけ警護」がこの時に認められ、武器の使用範囲も拡大されています。

◆ 平和安全法制整備法

①武力攻撃事態法「存立危機事態」であれば「集団的自衛権」行使が可能になる。
②重要影響事態法周辺事態法を改訂。行動範囲の地理的制約を撤廃。
③自衛隊法存立危機事態、グレーゾーン事態への対応規定、武器使用を緩和。
④米軍等行動関連措置法米軍以外の外国軍隊も対象とする。
⑤特定公共施設利用法 米軍以外の外国軍隊も対象とする。
⑥海上輸送規制法存立危機事態へ対応する。
⑦捕虜取り扱い方法存立危機事態へ対応する。
⑧船舶検査活動方法日本周辺の海域以外でも適用可能にする。
⑨国家安全保障会議設置法存立危機事態などを審議の対象にする。
⑩PKO協力法停戦監視などPKO以外にも業務拡大、駆けつけ警護も認める。

◆ 国際平和支援法
 外国軍隊の「後方支援」等のために自衛隊を派遣可能にする。

 この法により、端的に言えば、日本は海外での「戦争」が可能になったわけです。

 いまさら憲法9条を持ち出すまでもなく、安倍政権で成立した安全保障関連法案は、どう考えても憲法との整合性を欠いています。安倍首相はかねてより憲法改正、特に憲法9条の改正に意欲的であることは周知の事実ですが、安全保障関連法案を見れば、首相の意図するところは十二分に達成されたことが分かります。

 それでも、安倍首相は今現在において憲法9条に自衛隊を明記することに躍起となっていますが、それはあくまで ”象徴的な意味” に過ぎず、つまりは首相自身の自己栄達の手段であるというのが、筆者の予測するところです。

所詮はフワフワ政治家

 丸山穂高・衆議院議員に話を戻しましょう。
 YouTubeでも既に公開されているように、丸山議員の発言はその内容以前に、話しぶりが政治家としての品位を全く感じさせないものでしたが、なぜ彼は安易に「戦争」を口に出したのでしょうか。

 答えは明白だと思います。上記の通り、安倍政権での安全保障関連法案があまりにも支離滅裂だからです。

 日本国憲法は戦力不保持を謳っている世界でも稀な憲法ですが、にもかかわらず安倍政権の推し進める安保法制は「戦争」についてどのようにも解釈可能となっており、少なくとも海外派兵については何らかの戦闘に巻き込まれた際、間髪入れずに戦闘可能、すなわち ”戦争が可能となる” セットアップになっています。

 このような状況下で、”東大卒・元官僚&イケイケどんどん” 的な若い日本維新の議員が、戦争について抑制的でいられるでしょうか? すべては安倍政権が敷いたレールの上を、丸山議員はトレースしたに過ぎないのではないでしょうか?

 であれば、今回、丸山議員が断罪されるのは当然としても、本当に断罪されるべきは、国家の設計図である憲法を捻じ曲げた安倍首相であることは間違いないと考えます。※筆者は改憲については否定していません。安倍首相が改憲したいと考えるならば、正々堂々改憲の発議をすべきと考えます。

#1:過去に佐藤正久・参議院議員が憲法を逸脱する発言をしたのにも関わらず、全くお咎めなしだった。

#2:その後、憲法改正ではなく、法改正によって佐藤議員が主張する「駆けつけ警護」が肯定された。

#3:日本は安全保障の面において「憲法」と「法」の整合性が取れなくなり、フワフワした状態になった。

#4:そんなフワフワした日本で、丸山穂高氏のようなフワフワした議員が生み出された。

 丸山議員のような ”暴言政治家” はロシアにもウジャウジャ生息しています。ロシア自由民主党の右翼政治家、ジリノフスキーは「東京に原爆を落としてやれ!」と騒ぎ立てました(笑)

 状況は極めてシンプルです。
 丸山議員は辞職するしかないですし、我々日本国民はその元凶となる安倍首相を断罪すべきなのです。

 これができれば、丸山穂高・衆議院議員は歴史に残る発言をした政治家となるかもしれませんし、これができなければ、丸山氏は議員を辞職することもなく、相変わらず丸山氏であり続けると、ここに予測させていただきます。

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