菅義偉が首相になるのではない!「安倍院政時代」が始まるのだ!

国内政治

Introduction:なぜゆえに菅義偉のような男が首相になれるのか? かねてから大いなる謎でした。

安倍首相よりも老けており、ビジュアル的にも冴えることなく、下手をすれば安倍首相よりも活舌悪く、喋りも下手かもしれない小男が、なぜ首相になれるのか?

実は、自民党総裁をめぐる一連の動向は「安倍院政時代」の始まりを意味していたのです。

したがって菅政権は本当に1年限定で終わり、その後も安倍晋三の息のかかった政権が続く可能性があります。

「安倍院政時代」が始まった!

『院政』とは?
天皇が皇位を後継者に譲って上皇となり、政務を天皇に代わり直接行う政治形態のこと。1086年に白河天皇が譲位して白河上皇となり、1185年の平家滅亡まで政務を取り仕切った「院政時代」が特に有名。
ひるがえって現代では、政治権力者が首相の座などを後継に譲り、陰で政治権力を行使する様を「院政」と呼ぶ。
「闇将軍」と呼ばれた田中角栄も典型的な「院政時代」を築いた。

菅義偉氏が岸田文雄氏、石破茂氏をいとも容易く振り切り、自民党総裁選を圧勝した9月14日から一夜明けた15日、早速、党内人事や次の「菅政権」の閣僚の顔ぶれもちらほら見え始めています。

起用が固まった自民党の執行部の顔ぶれは──

  • 幹事長:二階俊博(二階派)
  • 総務会長:佐藤勉(麻生派)
  • 政調会長:下村博文(細田派)
  • 選対委員長:山口泰明(竹下派)
  • 国対委員長:森山裕(石原派)

──といったように、今回の菅総裁誕生の立役者となった二階氏を始め、菅氏擁立に群がった各派閥の意向を反映した陣営になっていますが、問題は各閣僚の顔ぶれにあります。

まず最初に、最も注目されている官房長官については加藤勝信・厚生労働相(竹下派)が就任する見通しになっています。

加藤厚労相といえば、2014年(平成26年)5月30日に創設された安倍政権の官僚人事掌握の要である「内閣人事局」のスターティング・メンバーで、初代・内閣人事局長を務めた安倍晋三氏の側近として知られる人物です(写真上)

菅氏としては官房長官に政治の師匠の一人、故・梶山清六氏の息子である梶山弘志・経済産業相を推すつもりでしたが全く叶いませんでした。

また、官房副長官の杉田和博氏を再任するなど、菅政権で再任すると目されている閣僚は次の通りです──
※2020年9月15日18:00時点

  • 麻生太郎 副首相兼財務大臣(麻生派)
  • 茂木敏允 外務大臣(竹下派)
  • 橋本聖子 五輪担当大臣(細田派)
  • 赤羽一嘉 国土交通大臣(公明党)
  • 萩生田光一 文部科学大臣(細田派)

※その後、翌日16日の朝刊には起用の固まった新閣僚の顔ぶれが早速報道されました。

このように自民党執行部、そして再任される閣僚の面々を見て気づくことと言えば、それは全て安倍晋三氏の意向にそって人事が進められているだろう、ということです。

また、経済産業相のポストには岸田文雄氏が起用されるとの噂も流れています。経済産業省は安倍政権の政策に大きな影響を与える官邸官僚、今井尚哉氏の出身官庁です。当然、安倍氏としても重要視しています。

これまで安倍晋三氏は後継として岸田文雄氏を指名し、自身は岸田政権の下で「院政」を敷くものと思われていました。

しかし、岸田氏は目下のところ次期首相としてインパクトや知名度がまるで足りておらず、時期尚早であることは誰の眼にも明らかです。さらに、今回の菅義偉氏の勢いに押されて安倍氏の院政の夢は潰えたかのように映りましたが、「プランB」として安倍氏は菅氏を総理に立てて院政を敷くことに決めたということです。

衆議院は解散されない!?

こうして考えてみると、今後の総選挙の行方もおのずと見えてくる気がします。

現在は安倍政権の支持率、そして菅氏への支持も異様なまでに高い状態にあります。巷間言われているように、今だったら衆議院を解散し総選挙に打って出れば自民党の大勝は間違いないでしょう。麻生太郎氏も「衆院選はすぐかもしれない」と語っています。

しかし、安倍氏が菅氏を傀儡に仕立てて院政を敷く気でいるのであれば、衆議院は解散されないはずです。なぜなら、菅政権の下で解散・総選挙を行い自民党が大勝すれば、菅政権の権力が強化され正統性も高まり、菅首相が言うことを聞かなくなるからです。よって、安倍氏としては菅氏を首相と認める代わりに、解散総選挙を封印したと考えられるのです。

結局のところ、日本の政治の主流は政治家二世三世による「門閥政治」です。
岸信介の系列で父親も政治のメインストリームだった安倍晋三氏や、吉田茂の系列で家系は天皇家にすら繋がっている麻生太郎氏などは、家系と生まれが門閥政治を司る条件に当てはまっていると言えます。ただし、家系が備わっていなくともメインストリーム政治家の二世三世であれば、政治の中枢部に食い込むことは十分可能です。

そんな中で、菅氏のような東北の農村に生まれ、まるでバックボーンがない状態での叩き上げ(というよりは ”成り上がり”)が官房長官にまで上り詰め、しかも安倍首相同様に憲政史上最も長く官房長官を務めたことは、彼のような政治家にしてみれば100点満点どころか120点です。

そんな菅氏が無能な首相の政権投げ出しに乗じ、「首相にさせてください」と手を挙げて奇跡的にも頂点に上り詰めることができたわけです。当然、首相を務めた後は政界の重鎮として長く居座りたいでしょうから、菅氏が大きなリスクを冒してまで衆院解散に踏み切るとは到底思えない。

菅氏は ”粛々と” 首相を務める中で東京オリンピック中止が決定され、新型コロナも終息しないまま経済の回復も当面は小幅な状態に留まります。1年も経てば菅政権に対する不満が鬱積する中で、来年9月に再び自民党の総裁選は行われます。

この時に安倍氏は何をするのかと言えば、今度は岸田氏を首相に推し院政を継続するか、あるいは再び自ら出馬して「第三次安倍政権」を構想するかもしれません。菅氏の役割はそこまでの ”つなぎ” ということになります。

それでも、菅氏が解散に踏み切るようであれば、それは菅氏が安倍氏に反旗を翻し ”賭け” に出たことを意味します。

つまり、今後の政局の動向は衆議院解散の有無によって明らかになるでしょうし、菅氏のどのような人間で何を考えているのかもこれによって判明することになります。

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