なぜ安倍首相は臨時国会を開かないのか?

国内政治

Introduction:まさに ”巣ごもり” 状態の安倍首相。安倍首相は1カ月以上も記者会見も行わず、閉会中審査にも顔を出しておりません。

そんな中、日本国内では1日の感染者が1400人を超え、日々記録を更新しています。7月31日の東京都の感染者は463人、大阪府の感染者は216人にも上っています。

このような事態にも拘らず、なぜ安倍首相は動かないのか?
考えられる理由は2つです。一つには、都合の悪いことがあると逃げ回る卑怯な性格であること。

しかし、もう一つの理由は深刻です。
もしかした、安倍首相の政治生命が尽きようとしているかもしれません。

危機的状況でも安倍首相は臨時国会を開かない

早急に臨時国会の開催を訴える東京都医師会の尾﨑治夫会長
Photo by :ミクスOnline

2020年1月20日に開催された第201回国会(通常国会)も延長されることなく予定通り6月17日に閉幕してしまい、以後、安倍首相は記者会見はおろか、毎週1回、3時間程度開催される閉会中審査にも顔を出すことがありません。

そんな首相をメディアを初めとして ”巣ごもり状態” と揶揄する声が方々から上がっており、それに呼応するかのように日本国内の感染状況は日を追うごとに深刻さを増しています。

7月31日を例にすると東京都が「463人」、大阪府「216人」、愛知県「193人」、そして沖縄県では「71人」となるなど、軒並み過去最高の感染者を記録。全国の感染者は「1482人」となり、これも過去最高の水準です。

東京都医師会 尾﨑会長は危機感を募らせている!

この状況に並々ならぬ危機感を持っている一人が、東京都医師会の尾﨑治夫会長です。尾﨑会長は7月30日の記者会見の席上、「今日は言いたいことを言わせてもらう」とした上で「今すぐ(臨時)国会を召集し、法改正をお願いしたい」と強く訴えました。そして極めつけは「今が感染拡大を抑える最後のチャンスだ」とすら言い切ったのです。

尾﨑会長は、無症状者を含め14日間感染者を隔離する体制が必要と訴え、協力金50万円だけでは家賃の足しにもならず要請にも応じないだろうと、東京都の協力金50万円に疑問を呈しました。つまり、国が法改正をして一斉に対応を進めることが日本全国に広がる感染拡大を防ぐ唯一の方法であって、休業をお願いするだけではドンドン感染の火だるまに陥ってゆくだけだというのです。

尾﨑会長の発言は極めて重要です。専門家がここまで吠えているのです。

まるで危機感の希薄な ”牧歌的” な安倍首相

これに対し、安倍首相はどのような反応を見せているのか?

安倍首相は31日の記者団のぶら下がり取材に対し──
「現在の感染状況を高い緊張感を持って注視している」
などと有効な手立てを打つことなく、まるで呑気なことを言い放ち、
「”徹底検査”、”陽性者の早期発見”、”早期収容” を進めてゆく」
といったように、できもしない、やる気もない、取って付けたような凡庸なスローガンを白々しく繰り返すだけでした。

しかも、自分は出席すらしていないのに「通常国会は閉会したが、その後は閉会中審査を行っている」と ”やっている感” だけは忘れていません。
そんな安倍首相は、野党から求められている臨時国会の召集については「与党と相談しながら対応したい」などと全く中身の薄い、詭弁を弄していることから臨時国会の召集は全く眼中にないことが分かります。

臨時国会も開かず逃げ回る安倍首相!

なお、臨時国会の開催については、次のように日本国憲法で定められています。

【第53条】
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

立憲民主党を初めとする野党各党は、この憲法の規定に基づいて臨時国会の召集を求めているのですが、与党側は「いつまでに召集するのか定めがない」ことにあぐらをかき、しかも菅官房長官などは「過去に臨時国会を開かなかった事例もある」などと言い出す始末で極めて悪質です。

菅官房長官の言う「臨時国会が開催されなかった過去の事例」とは、上の毎日新聞の画像にもあるように、小泉政権下の「2003年11月以降」と「2005年11月以降」、そして安倍政権下の「2015年10月以降」に、野党から要求された臨時国会が開催されなかったことを指しているものと考えられます。

しかし、『語るに落ちる』とはこのことです。

これら過去の事例については若干の説明が必要です。
確かに、小泉政権下の「2003年11月以降」と「2005年11月以降」は年内中に臨時国会は開催されていませんが、1年を通して見れば2回以上の国会が開催されているのが分かります。

2003年(平成15年)の国会 
※首相:小泉純一郎

国会回次召集日会期終了日
第156回 通常国会2003年1月20日2003年7月28日
第157回 臨時国会2003年9月26日2003年10月10日 ⇒解散
第158回 特別国会2003年11月19日2003年11月27日

2005年(平成17年)の国会 
※首相:小泉純一郎

国会回次召集日会期終了日
第162回 通常国会2005年1月21日2005年8月8日 ⇒解散
第163回 特別国会2005年9月21日2005年11月1日

それでは、2015年の安倍政権下における国会の開催状況はどのようなものだったのでしょうか?

2015年(平成27年)の国会 
※首相:安倍晋三

国会回次召集日会期終了日
第189回 通常国会2015年1月26日2015年9月27日

見ての通り、驚くべきことに安倍政権下の2015年、開催された国会は1年を通じて「通常国会」のただ1度きりだったのです。
実は、戦後の歴史において、1年を通じて1回しか国会が開催されなかったのは、安倍政権での2015年以外に例がないのです。

これが安倍政治の正体でもあります。菅官房長官は、まさかこの2015年を意識して「過去に臨時国会が開催されなかった事例がある」とするならば、憲法違反以上に悪質ではないでしょうか? そして、このような内閣に「正統性」はあるのでしょうか?

そして、この当時なぜ安倍首相が臨時国会の開催を頑なに拒否したのかと言えば、何と言っても2015年9月に成立した安保法制、すなわち「安全保障関連法」の影響です。この法案により「集団的自衛権行使の容認」や「外国軍の後方支援の拡大」、そして「駆けつけ警護」が認められ武器の使用範囲も拡大しました。言わば「憲法違反」により、日本が海外で戦争をすることを可能にしたわけです。

2015年唯一の国会は「安保国会」とも呼ばれましたが、当時でも議論の余地は多く残されており、安保法制について国民の理解が不十分であることは与党自身も認めておりました。よって、野党各党も議論をさらに深めるべく「臨時国会」の開催を要求したのですが、安倍首相は都合の悪いことから逃げ回るだけで、これを開催することはありませんでした。

安倍首相、体調悪化説!

安倍首相は口では威勢のいいこと、格好いいことを言いますが、都合が悪いことには逃げ回り、国会すら開催しません。2015年の安保国会後など、まさにそれを地でゆくような行動をとりましたが、同時に極めて重要な事を指摘もされています。

同じ年の2015年11月に出版された、政治ジャーナリスト・野上忠興氏による『安倍晋三 沈黙の仮面 その血脈と生い立ちの秘密』に、それは書かれています。

くすぶる健康問題
筆者の手元には、安倍の健康に関するマル秘取材メモがある。改めてめくると、2015年の通常国会延長後から、「すごく疲れているようにみえる」「イライラ感が増している」「いっぱい、いっぱいの状況だ」「もう激務に耐える体力はない」など体調不良を思わせる話が目につく。現実に、吐血や嘔吐、さらには「行きつけの寿司屋で体調がおかしくなった」など様々な情報が乱れ飛びもした。

潰瘍性大腸炎の大敵は、①ストレス、②飲酒、③脂っぽい食事・刺激物の摂取だ。
だが安倍は、体調不安説を払拭するかのように、パーティーで酒を飲み、記者らと焼き肉店に行って肉をほおばり、キムチなど刺激物を口にしたり、中華料理店で油っこい料理を食べたりしている。体調が快方に向かうはずもなかろう。

野上忠興『安倍晋三 沈黙の仮面 その血脈と生い立ちの秘密』(小学館)〔P236~237〕

政治ジャーナリスト、野上忠興氏の取材によれば、2015年の当時でさえ安倍首相の持病(難病に指定されている ”潰瘍性大腸炎”)の悪化説が方々で流布されていたことが分かります。

なぜ、安倍首相の持病がこうも俎上に載せられるのかと言えば、何も興味本位や面白半分ではありません。これは当然と言えば当然のことですが、国政が最高権力者である首相の健康状態に左右されてはならないからです。これは国益に直結する問題です。よって、一国の宰相たる者、常に自身の健康状態については万全であることを証明する義務を負うはずです。

野上氏も自著で取り上げていますが、例えば天皇陛下の健康状態についても、国民統合の象徴という立場を考えれば、心臓のバイパス手術を行った2012年に手術に当たった順天堂大学教授・天野篤医師が記者会見を行い詳細な説明を行ったのは、実に当然の結果なのです。

ところが、安倍首相ときたら天皇陛下とはまるで違うのです。野上氏は次のように書いています。

総理大臣も公人中の公人である。その健康は国民の関心事であり、国益に直結する。本当に問題がないなら、国会閉会後にも、医師団の会見があってしかるべきではないか。

現実は逆で、総理再登板後も安倍のケア・チームは筆者らの取材に重く口を閉ざし、一度たりとも表に出て安倍の体調について語らない。医師としての守秘義務は、安倍本人が許せば何の障害にもならないはずだ。安倍はそれもせず、「吐血」と書いた週刊誌を「告訴する」などと強圧的な構えをみせる。しかし告訴した形跡はないのだ。法廷に出れば困ることがあるのは安倍のほうではないのか勘ぐられても仕方なかろう。

野上忠興『安倍晋三 沈黙の仮面 その血脈と生い立ちの秘密』(小学館)〔P238〕

安倍首相は2015年の安保国会終了後、野党の要求を退け臨時国会を開くことはありませんでした。その理由の一つが「”外遊” が重なっているから」でしたが、2カ月に6回もの外遊は明らかに異常であり、実は安倍首相のケア・チーム内には体調維持を懸念する空気があったというのです。

自分に都合が悪くなると医師の制止も振り切り「外遊」に逃げ込む安倍首相。彼のメンタリティーについては想像だにできませんが、ここ最近になっても「安倍首相の健康問題」が噴き上がっているのは事実です。

裏が取れていない情報も乱れ飛んでいます。
安倍首相は潰瘍性大腸炎の特効薬『アサコール』を服用しているのは皆の知るところですが、副作用の炎症を鎮めるための各種ステロイド剤も同時に服用しています。しかし、特にステロイド剤は常用することで効き目が薄くなることが分かっており、特に最近はそういった特効薬やステロイド剤も利かなくなってきており、少しヤバい薬も使用しているのではと勘ぐる人も数多くいます。

確かに、最近の安倍首相の顔色は非常に悪く、「覇気もなくなった」と指摘する政府関係者もいます。しかも、昨今のコロナ禍によって大好きな「外遊」に逃げることも儘なりません。

安倍首相の置かれている状況は2015年と酷似しています。
おそらく彼はここ最近の中で最も健康状態が悪く、臨時国会など開く余裕もないほど静養せざるを得ない状況に追いやられているのではないでしょうか。コロナ禍が深刻な状況です。これは日本の国益に関わる問題となるため、野党も安倍首相の健康状態について、一度厳しく追及すべきではないでしょうか?

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