「テレビから逃げ回る小池百合子」と「攻めまくる山本太郎」

国内政治

Introduction:小池百合子・東京都知事は、現職の知事でありながら極めて ”卑怯” です。

小池都知事はいくつかのインターネット討論会にはかろうじて参加するものの、なぜかテレビの討論会からは逃げ回っています。

一方、山本太郎は都知事選に際しては攻めの選挙戦を展開しており、小池都知事にも遠慮なく食らいついてきます。彼は「15兆円」のコロナ対策費を主張しています。

情勢予測では相変わらず現職の小池都知事が有利であるものの、都知事選の議論を深めることなく ”やり過ごそう” とする彼女の姿勢は、あまりに不誠実に映ります。

テレビ討論が全く行われない摩訶不思議

東京オリンピックの延期が決まるや否や、突如としてこれまでの沈黙を打ち破り、メディアでの発言の場を一気にMAXにまで高めた小池百合子・東京都知事。

そこでは「ロックダウン(都市封鎖)」「オーバーシュート(感染爆発)」といった得意の横文字を多用することで周囲を撹乱し、世間の耳目を集めることに成功。都知事選が本格的に始まるまでの一時期、新型コロナを伝えるメディア世界は彼女の独断場でした。

しかし、都知事選が告示されるや小池都知事の存在感は薄れ、時にダンマリを決め込むようになりました。”東京アラート” が解除された後、皮肉なことに東京都の感染は連日多くの感染者が報告され、直近1週間の感染者は50人を超えるなど高止まりが続いています。

それでも小池都知事は有効な手立てを打つわけでもなく、ひと頃とは打って変わって消極的な姿勢に転じています。

加えて、現在は完全に都知事選モード一色のはずですが、テレビ討論が全く行われようとしないのも違和感を禁じ得ません。前回2016年の都知事選の際は告示前に日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビが生討論番組を放映。告示後もやはり日本テレビ、フジテレビが生討論番組を開催してるにも関わらずです。

今回はテレビ討論が企画されていないどころか、テレビで都知事選を扱うことすら従来よりも減少しているとの指摘が後を絶ちません。前回の都知事選では、テレビによる報道が「78時間」にも及んだと言われていますが、今回はその「3分の1」程度になると予測するテレビ関係者もいます。

小池都知事に忖度するメディア

テレビ討論会が行われないことに不満を持っているのは、何も視聴者だけではありません。候補者の一人である山本太郎もそのような不満を持つ一人です。彼は「テレビは、小池さんに突っ込ませないよう、小池さんを守っているのではないか?」と憤りを隠しません。

つまり、舌鋒鋭い山本太郎の突っ込みを警戒し、そうさせないようにテレビ業界は討論会を行わないことで小池都知事を守っているのだと、彼は言いたいのです。

確かに、小池都知事は都庁記者クラブを完全に手なずけており、記者会見では気に入った記者しか指名しませんし、普段から「メディアは私のお友だち」と自慢するぐらい、メディアとはズブズブの関係にあることは周知の通りです。

もし、山本太郎が指摘するように小池都知事が論争を拒んでいるようであるならば、本来ならばその事実をメディアは報道する義務と責任があるのは言うまでもありません。

「いや、小池都知事はインターネットの討論会なら既に3回も出演しているので、メディアが小池都知事を守っているとか、小池都知事が討論を避けているとの指摘は当たらない」
といった意見も一方であるかもしれませんが──

テレビは ”女帝 小池” の本性を映し出す

このことについては、29日の『日刊ゲンダイDIGITAL』が非常に興味深い記事を発信しています。

プロのテレビマンなら、“女帝”の表情を追うためにカメラをスイッチングしたに違いない。28日夜に開かれた都知事選7候補のネット討論会(主催・東京JC)は、最終盤に“事件”が起きた。司会者が参加候補に「2分以内」で発言を求めると、低調ムードを一変させるように、れいわ新選組公認の山本太郎、日本維新の会推薦の小野泰輔両候補が、現職候補の小池都知事を激しく批判したのだ。

6月29日 日刊ゲンダイ「小池都知事“馬耳東風”…ネット討論会が映さなかった本性」

6月28日、「公益社団法人 東京青年会議所(東京JC)」の主催で行われた「東京都知事選ウェブ討論会」の最終局面で、新型コロナの災害救助法の認定をめぐり、山本太郎氏が次のように小池都知事に対して食って掛かりました。

『どうして都がやらなかったんですか、小池さん。おかしいでしょ!
国に対して(災害救助法の認定を)厳しく求めました?
どうして都民の生活守ろうとしなかったんですか?
国と本気で対峙したくなかったからじゃないですか!?
東京都のトップの当たり前の仕事をやらなかったことに凄く憤りを感じます!!』

そして、日刊ゲンダイが言うには、山本太郎が激しい口調で小池批判を展開していた時であっても、小池都知事はまるで無視するかのように、自分が非難されている最中に表情を見られるのが余程嫌だったのか、一人グレーのマスクをし、山本氏の方には一切視線を動かすわけでもなく、ただ手元の資料に目を落とすのみだったというのです。──まさに ”馬耳東風” というやつです。

この日刊ゲンダイの指摘については、食い入るように討論会を見ていても全く気づかないでしょう。インターネット討論会では、発言者の顔しか映してくれないからです。

このエピソードなどは、小池都知事の本質を如実に表していると言えます。あるいは、これは今回の都知事選における彼女なりの ”戦略” なのかもしれません。いずれにしても不誠実な印象は否めず、日刊ゲンダイも冒頭で《プロのテレビマンなら、“女帝”の表情を追うためにカメラをスイッチングしたに違いない》、要するに、不誠実な小池都知事の態度を画面に映し出したに違いない、と指摘しています。

そして、これこそが小池都知事がテレビ討論会を拒否している、テレビ討論会から逃げ回っている理由であると考えられます。

小池百合子は山本太郎を最も恐れている

山本太郎は、向かって右側の隣に座っている小池都知事に対し、常に鋭い質問や批判を放っていた。

小池都知事は、2017年衆院選直前の9月にやらかした ”排除発言” のような致命的な失言を絶対に避けたいと考えているでしょう。

しかし、山本太郎の出現によって、下手をすれば彼の言論空間に巻き込まれかねない状況が生み出されています。そんな中で小池都知事がうっかり失言しないためには、山本氏の批判や突っ込みに対し心が揺らいだり感情的になってはならず、そのために不誠実なまでに無関心を装い無視を決め込む戦略をとるようになったと考えられます。

それでも、いわゆるテレビ討論ではこのような不遜な態度をとっていては、さすがに画面に映し出されてしまい、”排除発言” のような失態を招きかねない。よって、小池都知事はテレビ討論を拒み、逃げ回っているというわけです。

そのことを山本太郎氏もよく分かっているものと見えて、小池都知事に食って掛かった後、すかさず『小池さん、テレビの討論とか、ぜひみんなでやりましょうよ! 議論を深めるべきですよ! これから何をしていくべきか、皆さんに示す必要があります』と、小池氏を挑発する手を緩めません。

インターネット討論では、基本的に発言者の表情がアップで映し出される場合が多く、そうなると他者の仕草はまるで分らなくなります。
しかし、テレビ討論では熟練したプロのスイッチャーが存在し、発言者に関わらずその時々の参加者全員の表情仕草が次々に切り取られてゆくため、油断している余裕などありません。(それこそが、落ち目のテレビの唯一の ”価値” であり、未だテレビが一定の影響力を持つ理由もここにあります

ネット配信では見られない ”都合の悪い質問は聞く耳持たない” といった ”女帝 小池百合子” の本性を、テレビはまんまと写し取ってしまう。その意味でテレビ映像は成熟しており、インターネット動画は発展途上であると言えるでしょう。

そして、「インターネット討論」と「テレビ討論」とは全く別物であることを、キャスター出身の小池都知事は熟知していますし、俳優出身の山本太郎もまた熟知している。その意味で、山本太郎の小池都知事に対する一連の突っ込みは、実に的を突いているのです。

よって、小池都知事がテレビ討論を拒み、逃げ続ける主たる原因は『山本太郎』の存在。彼女は山本太郎を恐れています。

山本太郎「たりないのは愛とカネ!」

ここで、山本太郎にも少し触れておきましょう。

最近の山本氏は、非常にアグレッシブに真面目に政治に取り組んでいますし、誰よりも勉強してます。この4年間でまるで実績を残せなかった小池都知事など、今、山本太郎と政策議論など行おうものなら勝てる見込みは1ミリもなく、完全に論破されるのは火を見るよりも明らかです。

山本氏も都知事選に際しては掲示板用のポスターを作成し掲示もしておりますが、彼の行動で興味深いのは、公示を過ぎてからポスターのデザインを変更し、張り直しを行っていることです。
(上の写真)

この奇行ともいえる行動には、2つの意味があると筆者は考えています。

れいわ新選組はボランティアの行動が全ての起点になっている

新ポスターは「たりないのは愛とカネ」「15兆円」といったように、よりカネに特化したスローガンへと変更が加えられていますが、これはインパクトのある文言によって訴求力をさらに高めたい意図があるのは言うまでもありません。

しかし、ここで大切なのはポスター張り替えのために、ボランティアを動員することです。

東京都内には「約1万4千箇所」にも及び選挙用掲示板が設置されています。公示後、一斉に選挙ポスターが張り出されますが、自民党のような大組織ならまだしも、れいわ新選組のような弱小な組織にはこのポスター張りですら大仕事です。今回は途中でポスターが変更されたことにより、この大仕事を2回やる羽目になります。

当然、ボランティアが大量に動員されポスター張り替えにいそしむことになるのですが、奇妙なことに、実際に現場でこの作業に当たっているボランティアは皆、嬉々として楽しそうでもあります。

このことは、れいわ新選組のボランティアの行動が、政党としての活動の全ての起点になっていることを示しています。れいわを支持する、より多くのボランティアが集まり彼らが行動すればするほど、国勢政党としてのれいわ新選組もより活性化するといった循環が生じるというわけです。

ボランティアはれいわ新選組にとって「血液」のようなもの。その血液を活発に循環させるために、山本太郎はあえてポスター変更という奇策に出たのではないでしょうか?

安冨先生は「山本太郎はカネを配れ」と言った!

Video by :一月万冊「東大教授と語る【都知事選】小池百合子さん・山本太郎さん・宇都宮健児さんの選挙戦略。安冨歩教授電話出演。一月万冊清水有高。」

「たりないのは愛とカネだ」さらに「15兆円であなたを底上げ」とは生々しいスローガンでもあります。

端的に言えば、都民に金を配り、個人事業主・中小企業の損失分を補填し、融資だって行う。これを15兆円規模の地方債によって賄うと言っているのです。

つまり、『山本太郎はカネを配る!』──これが彼のスローガンです。

そして、このスローガンには一つの原型があります。
それは、昨年れいわ新選組から参院選に出馬した東京大学教授、「安冨歩」先生の言葉です。
(上の動画)

安冨先生は、清水有高氏の YouTube チャンネル『一月万冊』の中で、
「山本太郎の政策はひと言、”山本太郎はカネを配る!” でええやん!?」
と問い立てをしました。

安冨先生としては、山本太郎が出馬するのは一向に構わない。ただ、宇都宮健児氏と政策が被っているところもあり、その辺は一般の有権者には分からないだろうとした上で、政治にまるで関心のない無党派層の票を取りにいかなければ勝てないので、”困っている人にカネを配る” といったシンプルなフレーズが良いのではないかと提案したのです。

新型コロナが深刻化してからというもの、世界中の人々が息が詰まるような生活を強いられてきました。特に東京都内では、満員電車の中など息を潜めるようにして乗車している有様です。

そんな中、都民は心が明るくなるようなことを求めているわけで、お金が入ることで少しでも心が明るくなるのであれば最高。明るくなるのに根拠などいらないと、安冨先生は語っています。

さて、そんな山本太郎と小池百合子都知事が、テレビ討論の場で火花を散らす日は果たして来るのでしょうか?
このまま一度もテレビの討論をやらずして投票日を迎えるようでは、テレビ局の存在価値など無いも同然。テレビ局にとっても、これは自殺行為であることを肝に銘じるべきです。

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