習近平初訪朝 チェスのような国際政治が始まった

Introduction:プレイヤーはアメリカのトランプ大統領、そして中国の習近平ですが、このところ習近平は劣勢に立たされています。

そのような中、習近平が6月20日、21日の2日間、北朝鮮を公式訪問することが電撃的に発表されました。

現在展開されている米中貿易戦争、そして、今後再開するかもしれない米朝首脳会談の行方について、世界中のギャラリーが注目しています。

天王山は、6月から大阪で開催される「G20」です。

中国は事態を複雑化している

習近平の北朝鮮公式訪問は、国家主席に就任後初めてとなります。
6月28日、29日の日程で、大阪でG20の開催が予定されていますが、その前に北朝鮮の後ろ盾であることをアピールし、アメリカを牽制しようとする意図が透けて見えます。

米中貿易戦争では、中国は米トランプ大統領の想定外の集中砲火に防戦一方の状態ですが、同時に、香港で起こった逃亡犯条例改正をめぐる未曽有の大規模デモに直面し、中国はかつてない譲歩をしてしまいました。このことは中国当局にとって極めてショッキングな事態となりました。

”面子” は丸つぶれです。

加えて、この事態を伺っていたトランプ大統領は、香港問題もG20の場で議題にすることを示唆し、中国に対して更なる揺さぶりをかけています

中国にしてみれば、香港問題は内政問題以外の何ものでもなく、これをG20といった国際舞台の俎上に載せられることは、極めて不愉快千万であることは言うまでもありません。

北朝鮮も危険な差し手を選択している

そのような事情もあり、中国にしてみれば、アメリカが行き詰まっている北朝鮮問題に世界の耳目を振り向けることで、自国の存在感をアピールするのが狙いであるように思われます。

中国がアメリカに対して、ようやく軽いジャブを返したことになります。
ただし、今回の習近平による北朝鮮訪問が功を奏するか否かは、また別の問題となります。

北朝鮮は目下のところ、トランプ大統領に手紙などを送っているようですが、明確に妥協する姿勢は見せておりません。

北朝鮮にしてみれば中国、ロシアを巻き込みアメリカを牽制することを図っておりますが、とはいえトランプ大統領とはやはり「会談したい」と思っている。よって、習近平は北朝鮮の出方を予想し切れていないと思われます。

一方、アメリカは米朝会談が不調に終わった後、北朝鮮の非核化をめぐっては強硬な姿勢で臨んでいることもあり、今回の中国の北朝鮮訪問については苦々しく感じているでしょう。

結果として、アメリカと中国の溝はさらに深掘りされかねず、中国はリスキーな差し手を選択したのは間違いなく、無論、このことは北朝鮮にとってマイナスに作用しても、プラスになるとは思われません。

習近平の北朝鮮訪問は、かねてからの北朝鮮の要望によって実現したとはいえ、このタイミングにはいささか迷惑しているかもしれません。

トランプは新型大国関係(G2)を拒否している

ニクソン政権やフォード政権で、政府のアドバイザーや国務長官を務めた親中派でもあるヘンリー・キッシンジャーは、覇権を米中で2分割する「新型大国関係」、すなわち「G2体制」を模索し、中国もそれを目指しているように思われます。


しかし、キッシンジャーが現在、アドバイザーの役割を担っているにも関わらず、トランプ大統領はG2体制は気に入らないようです。それが、過剰なまでの「アメリカ・ファースト」主義に見て取れます。

その背景には、アメリカの国民感情がある。アメリカ国民は、ソ連や中国のような国との「G2」を、どのような状況の下でも受け入れない。自国を独裁国家と同じにされることを嫌うからだ。これがイギリスとの「G2」であったら、相手は民主主義国家なので受けいれられるかもしれないし、フランスでも大丈夫であろう。ところがソ連や中国との「G2」だけは絶対に無理なのである。
~エドワード・ルトワック『中国4.0 暴発する中華帝国』(文春新書)~


先般のイランに対する核合意の脱退、さらなる経済制裁の強化と並び、トランプ大統領の中国政策は次回の大統領選を意識しているとの見方をする向きもあります。その意味では、彼は明らかにアメリカ国民の感情に沿っていると言えるでしょう。

6月のG20で、トランプ大統領はどのように出てくるでしょうか?
前回のG20では首脳会議の共同宣言でかなり手こずった経緯もあることから、今回の大阪ではどのような合意がなされるのか、あるいは、なされないのか、国際政治というゲームの行方が気になるところです。

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