Introduction:結論から先に言えば、東京都知事の小池百合子氏はカイロ大学を「首席」で卒業していないばかりか、卒業すらしておりません。

5月30日に出版された石井妙子『女帝 小池百合子』は、あまりに衝撃的です。これまで世間に流布されていた漠然とした「点」の情報が、この本により一気に一本の「線」として繋がった手ごたえを感じずにはいられません。

そして、そこから立ち上がるのは、これまで私たちが想像もしていなかった「小池百合子氏の正体!」──

しかし、残念ながら、今回の学歴詐称疑惑で彼女を追い詰めるのは極めて困難かもしれません。

『女帝 小池百合子』の衝撃!

この本の存在を知ったのは『週刊文春』(6月4日号)の記事、『小池百合子 カイロ大首席卒業の嘘と舛添要一との熱愛』でした。

この記事には、小池氏の学歴詐称疑惑を探る上でのキーパーソン、カイロ時代に小池氏と同居していた早川玲子さん(仮名)の証言が綴られています。そして、これらの決定的証言と数々の資料、そして独自の取材を通して描かれ、文春の記事の元になったのが石井妙子氏による『女帝 小池百合子』なのであります。

これまで、小池氏の学歴詐称問題については、まるでオリンピックのように定期的に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返したいましたが、この疑惑に止めを刺したのが『女帝 小池百合子』と言っても過言ではありません。

  • 序章  平成の華
  • 第一章 「芦屋令嬢」
  • 第二章 カイロ大学への留学
  • 第三章 虚飾の階段
  • 第四章 政界のリアリーダー
  • 第五章 大臣の椅子
  • 第六章 復讐
  • 第七章 イカロスの翼
  • 終 章 小池百合子という深淵

今回取り上げる学歴詐称疑惑については、「第二章 カイロ大学への留学」に詳しく書かれています。そして、この第二章だけでも書籍代(1500円+税)を払うだけの価値は十分あるほど、細密な内容に仕上がっています。

そして、全体を通して読むことで、これまで私たちが認識している小池百合子氏とはまるで別人の小池百合子氏が現れることに読者は気づいてしまうでしょう。『女帝 小池百合子』は、小池氏に対する驚愕、恐怖、哀しみ、憎悪といったあらゆる感情を掻き立て、巷のホラーよりも遥かに恐ろしいホラー作品のようでもあります。

と同時に、小池氏が何だか可哀そうにもなり、「彼女もある種の犠牲者なのではないか?」といった同情の念も沸き起こるかもしれません。しかし、そのようなナイーブな感情は彼女には全く無用であることが、読了した方には分かるはずです。

この本の出現により、小池百合子という ”政治家” を、果たしてどのように定義すべきか、もうしばらく時間が掛かるかもしれません。

※ちなみに、舛添要一氏との交際の下りは、なかなか興味深いものがあります。

カイロ大学入学すら不正入学だった可能性がある

小池百合子氏は「1972年10月にカイロ大学文学部社会学科 」に入学し、留年することなく4年後の1976年に「首席」で卒業したことになっています。

しかし、それは誤りです。

というのも、
第一に、首席ではない。
第二に、4年間で卒業できたが怪しい。
第三に、下手をすると卒業すらしていない。
──からです。

まず最初に、小池氏はカイロ大学に入学したとされる1972年の前年、1971年9月頃にエジプトにわたり、カイロ・アメリカン大学東洋学科でアラビア語を1年間学んでいます。
※カイロ・アメリカン大学は、エジプトのカイロにある私立のアメリカのミッション系の大学。

そして、その1年後の1972年10月に晴れてカイロ大学に入学したことになっていますが、それは誤りです。

上述した早川玲子さん(仮名)の証言によれば、早川さんと小池氏が初めて出会ったのは1972年4月のことです。当時は二人の住居を探すことで多忙だったことに加え、小池氏は現地の日本人と遊んでいることが多く、また突然1カ月ほど短期留学と称してフランスに渡ってしまうなど、ほとんど勉強している様子は見られなかったといいます。

それが災いしたのか、1972年の10月、彼女はカイロ大学に入学することができなかったのです。

入学を逃した小池氏でしたが、彼女は実に悠々と構えていました。彼女に言わせれば「”ドクター・ハーテム” に任せてあるから、大丈夫」とのこと。

ちなみに、この通称ドクター・ハーテムとは、本名が「ムハンマド・アブドル・カーディル・ハーテム」といい、かつての軍事クーデターの際、エジプト情報省を創設し、エジプトの情報、文化、メディアのすべてを掌握していた大統領直属の要人です。

つまり、中東との貿易などを行っていた小池氏の父、小池勇二郎氏が上手いこと立ち振る舞い、ハーテム氏とのコネクションをつくることに成功していたわけです。

エジプトは当時もそして現在も、基本的には腐敗した軍事独裁政権であるために、政府要人の庇護があればカイロ大学の入学も十分に可能となります。しかも、カイロ大学はエジプト軍の情報部配下にある大学です。

小池氏も「カイロ大学の入学式に ”ほふく前進” をさせられた」と言っていますが、実際にそのようなことはなかったものの、軍部が深く関与している様子からそのような脚色に至ったものと推察されます。

かくして、小池氏は翌年の1973年10月、ドクター・ハーテム氏の ”口利き” で晴れてカイロ大学に入学できましたが、なんと驚くべきことに2年生に編集しての入学だったのです。これは通常ではあり得ない、破格の待遇だと言われていますし、これを「不正入学」と指摘するジャーナリストもいます。

◆ 出典記事 ◆
 『徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈4〉「不正入学」というもう一つの疑惑』

 ~2020.01.15 JBpress~

カイロ大学入学から帰国までの足取り

  • 1971年9月頃:カイロ・アメリカン大学東洋学科入学。アラビア語の語学留学。
  • 1972年4月:早川玲子さん(仮名)と知り合い、その後に同居。
    • 10月:カイロ大学の入学に失敗。
    • 12月:早川玲子さん(仮名)と別居。
  • 1973年10月:カイロ大学に入学(2年生からの編入)
  • 1974年10月:カイロ大学の3年生に進級??
  • 1975年10月:カイロ大学の4年生に進級??
  • 1976年 1月:再び早川玲子さん(仮名)と同居。
    • 7月:進級試験に落第⇒ つまり、この時点では4年生ではなかったということ
    • 9月:日本に一時帰国(サダト大統領夫人のエスコートで注目を浴びる)
    • 11月:同居中のカイロの早川玲子さん(仮名)のもとに帰宅。
    • 12月:日本に帰国

カイロ大学入学から帰国までの大まかな足取りは上記の通りですが、最も重要なのは赤字で記した1976年7月に起きた進級試験の落第です。4年生であれば追試を受け、これに合格すれば晴れて卒業なのでしょうが、3年生以下は追試が受けられない規定がありました。

「あなたは最終学年ではないから、追試を受ける資格はないと教授に言われた」との小池氏の発言を早川さんが聞いたことから、この時点で小池氏はまだ2年生か3年生であったことが判明したのです。
※なぜ、ドクター・ハーテム氏の ”口利き” で卒業できなかったのかについては分かっていない。

そして、次に重要なのは、落第が決まった後の小池氏の動きです。
彼女は1976年9月に日本に一時帰国します。急遽、父親に呼び寄せられたためですが、彼女を待ち受けていたのはエジプト・サダト大統領のジハン夫人来日に伴う、彼女の通訳といった大役でした。

もちろん、正式な通訳や接待役はおりましたが、そういった何人かのアテンド役の末席に、父・勇二郎の売り込みが功を奏して、潜り込むことに成功したのです。

ジハン夫人は当時40歳を過ぎてから娘の通う「カイロ大学」に入学したという特異な経歴を持つ方でしたが、このことが小池氏にとって凄まじい追い風となります。

当時、日本ではカイロ大学を卒業したばかりの若く美しい女性などいるはずものなく、おまけに首席ときたものですから新聞を初め、日本のメディア沸き立ちました。

一九七六年十月二十二日の「サンケイ新聞」は紙面の四分の一、七段を使って写真入りで小池を大きく紹介した。見出しは二つあり、「エスコート役に芦屋のお嬢さん」、「小池百合子さん 令嬢とは同級生 カイロ大新卒、唯一の日本女性」。
リードの文章は以下のように始まる。

「二十五日に、”世界のファーストレディー” の一人、エジプト大統領夫人、ジハンさんが来日する。その夫人に影のごとく付き添ってエスコートするコンパニオンは──アラビア語ができて、優雅な女性で、エジプトをよく知る人。そんなむずかしい条件にぴったりの女性がみつかった。この人、関西のお嬢さんで、小池百合子さん(二四)。女ひとりの四年間、エジプトのカイロ大学に学び、日本人女性として初めて同大学で学士号を獲得。ちょうど十月十一日に帰国したばかりだ。在学中、大統領夫人の長女とクラスメートで、婦人とも面識があり、まさにうってつけの適役だ」

石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋)〔P107~108〕

彼女が、卒業していない大学を卒業したと学歴を詐称し、公の場に姿を現したこれが最初の時でした。

日本での大活躍の後、1976年11月に小池氏はカイロの同居中の早川さんのもとに一旦帰ります。そして、いよいよ日本に帰国するとなった前日、そこで早川さんに語った言葉は決定的と言えましょう。これは「今後も詐称した人生を送る」といった、小池氏の宣言のようにも聞こえます。──つまり、小池氏は学歴詐称において「確信犯」です。

「あのね。私、日本に帰ったら本を書くつもり、でも、そこに早川さんのことは書かない。ごめんね。だって、バレちゃうからね
早川さんが黙っていると、小池は身を寄せて、下から早川さんの眼を覗き込んできた。
「いい?」
早川さんは頷くよりなかった。
翌日、小池は日本に向けて旅立っていった。

石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋)〔P112〕

エジプトの政治マターと化した小池百合子の学歴詐称疑惑

小池百合子・東京都知事の学歴詐称疑惑については、驚くべきことにエジプトのカイロ大学が在日エジプト大使館の facebook を通じて「1976年10月にカイロ大学を卒業したことを証明する」との学長の声明を公表。合わせて、「遺憾なことに、日本のジャーナリストが幾度もカイロ大学の証書の信憑性に疑義を呈している。これはカイロ大学及びカイロ大学卒業生への名誉棄損であり、看過することができない。本声明は、一連の言動に対する警告であり、我々はかかる言動を精査し、エジプトの法令に則り、適切な対策を講じることを検討している」と、かなり強い口調で怒りを露にしました。

このことについては、舛添要一氏が Twitter で語っているように、極めて ”胡散臭い” と言う他なく、小池氏の学歴詐称疑惑が政治マターに変遷したことを意味しています。

小池氏が仮に本当に卒業したのなら、カイロ大学としては舛添氏が言うように卒業に関するデータを出せば事足りるはずで、そうせずに敢えて政治マターとしたには、そうする理由があるはずです。

エジプトにとって、日本は2016年で言えばフランスに次ぐ世界2位のODA(政府開発援助)実施国になっています。

そんなエジプトにとって、長らく日本の国会議員を務め、現在は首都東京の知事に上り詰めた小池氏が、実際はカイロ大学を卒業していないからといって「はい!小池さんは卒業してません!」と言えるでしょうか? という問題です。

現在のエジプトはシシ大統領による軍事独裁政権となっており、シシ大統領がカイロ大学の学長、各部長の任命権を持っています。そして、歴代のカイロ大学の学長らはその後、大統領の意向によって知事に天下ったり、軍閥関連企業の社長に天下っているわけです。

「忖度」とは何も日本固有のものではなく、「政治的思惑」といった形に姿を変え、世界中いたるところで見受けられる現象です。よって、カイロ大学の学長もエジプト国家、つまりシシ大統領の意向を「忖度」し、「小池さんはカイロ大学を卒業した」と言ったのです。これがエジプトの日本をめぐる「政治的思惑」です。

◆ 出典記事 ◆
 『カイロ大「小池氏は卒業生」声明の正しい読み解き方』

 ~2020.06.12 JBpress~

つまり、小池百合子氏がエジプトで頼った「ムハンマド・アブドル・カーディル・ハーテム」氏とは、2015年に亡くなるまで、副大統領や副首相を初め、様々な閣僚経験のある文字通りエジプト屈指の有力者でした。

このハーテム氏の庇護のもと、小池氏が不正まがいでカイロ大学に入学し、卒業すらしていないにも関わらず、今回こうしてカイロ大学の学長の声明が出たということは、「小池百合子氏がカイロ大学を卒業した」ことがエジプト国家としての公式表明であり、そうである以上、これを覆すにはエジプトの軍事独裁政権を転覆し民主化する以外に方法はありません。

これが、学歴詐称疑惑で小池氏を追い詰めるのは極めて困難だと考える理由です。

小池百合子氏の父、小池勇二郎氏は貿易商として中東にも手を伸ばしていましたが、とにかく評判が悪く、時に詐欺まがいのやり方で多くの人に迷惑もかけ、最後には破産してしまいました。同時に無類の政治好きでも知られ、自身も衆院選出馬の経験もありますが、あえなく落選しました。

ただ、そんな勇二郎氏に実績があるとするならば、それはただ一つ。「ハーテム氏とのコネ」でしょう。このコネが後に小池百合子氏をして東京都知事までの原動力となったのですから──

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