イラン革命が再び起きる! ~アメリカの必勝パターンにハマったイラン

Introduction:アメリカがイランのソレイマニ司令官を殺害し、イランが報復攻撃を開始した時、Googleでは「第三次世界大戦」の検索ワードが急激に増えるといった現象が確認されました。

世界の視線は緊迫する中東に釘付けとなりましたが、アメリカのトランプ大統領は意外にも自制的に立ち振る舞い、目下のところ事態は平穏を取り戻したかのようにみえます。

しかし、これで事が収まったと思うのは大きな誤りです。むしろ事態は風雲急を告げており、イランでは再び「革命」が起きるかもしれません。

アメリカの必勝パターンにハマってしまったイラン。中東における本当の意味での ”場外乱闘” は、これからなのかもしれません。

戦争以上に複雑で困難な状況になる

イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガゼム・スレイマニ司令官が殺害され、イランはすぐさま報復攻撃「殉教者ソレイマニ」作戦を開始。しかし、それは弾道ミサイル十数発による精緻に計算されたピンポイント攻撃でした。

イラン国営テレビは1月8日、「米軍部隊の80名が死亡し、200名が負傷した」と発表しましたが、イラン国内はさておいても、国際社会でこれを信じる者はほとんどおりません。実際のところはトランプ大統領が声明で述べたように、アメリカ側の死者はおらず、事前にミサイル発射の早期警戒情報を入手していたことから、米軍兵士らは防空壕などに身を隠すための時間は十分に確保できていた模様です。

アメリカとしてもソレイマニ司令官は殺害したが、それ以上の戦闘の拡大は望んでおらず、イラン側としてもソレイマニ司令官の報復はやりたいが、世界一の軍事大国との戦乱は避けたい。

イランの報復に対するトランプ大統領の発言は、私たちの想定を裏切り自制的なものとなったことにより、事態は沈静化の方向に向かっているかに見えますが、それは本当なのでしょうか?

Googleの検索では、世界情勢がきな臭くなるたびに「第三次世界大戦(World War 3)」の検索件数が上昇する傾向にあり、過去にもイスラム国の台頭や、シリア情勢に端を発し、中東情勢が極めて不安定となった2015年、2017年にも第三次大戦の検索が急上昇を見せたことがあります。

そして、アメリカイラン両国が戦争の瀬戸際まで最接近したという本質は何ら変わることなく、とはいえ今後は「戦争」ではなく、より複雑で困難な状況へと事態は推移してゆくことが考えられるのです。

ウクライナ機撃墜が大きな転機となる

1月8日、イランの首都テヘラン。離陸直後のウクライナ国際航空の旅客機が墜落され、乗員乗客176人全員が死亡する痛ましい事故が起きました。

カナダやアメリカの政府当局は、当初からウクライナ機の墜落にはイランが関与していたことを示唆していましたが、イラン政府はこれを否定。しかし、11日にはイランの統合参謀本部が人為的ミスによりウクライナ機を撃墜してしまったことを認め、イランのロウハニ大統領も公式にウクライナ政府に謝罪しました。

ここで問題となるのは、その後のトランプ大統領の発言です。
彼は1月13日に Twitter で「ペルシャ語」も交え、で次のようなツイートをしています。

《訳》イランの指導者たちに告ぐ -(イラン政府への)抗議者たちを殺すな。既に数千人もの人々が殺されてしまったか、投獄されており、それを世界は目の当たりにしている。さらに重要なことは、アメリカ合衆国がこれを注視していることだ。インターネットを再び使えるようにし、ジャーナリストの自由な活動を認めよ!あなた方の偉大なるイラン人の殺害を止めるのだ!

これは極めて重要な発言です。
実はイラン国内は必ずしも一枚岩にはなっておらず、経済制裁により国民生活は疲弊し、加えて政権の腐敗や革命防衛隊の傍若無人な振る舞いにより、国民の間には厭世観が漂っています。そのような中、各地では反政府デモが頻発、今回のウクライナ機撃墜がこの動きに対し ”火に油を注ぐ” 格好になっています。

トランプ大統領の発言は、反政府イラン人を明確に後押しする意図があります。

イラン軍がウクライナ機を撃墜したことで、イラン国内の反政府デモが過熱したことを奇禍とし、トランプ大統領は「私は大統領就任の時からあなた方と共にあり、私の政権は支持を続けていく」と Twitter で表明するなど、反政府デモを支持する立場を示していますが、これはあからさまなイラン人に対する反政府への ”煽り” です。

つまり、トランプ大統領は戦争以外の手段で、イラン政府の転覆を目論んでいるということなのです。

アメリカが仕掛けた ”カラー革命”

『カラー革命』とは、2000年代に複数の旧ソ連国家で起こった、独裁政権打倒を求める民主化運動のことを指し、非暴力の象徴として花の名を関していますが、その実態は、石油や天然ガスといった資源を狙うアメリカによる ”親米反ロ” の傀儡政権の樹立にありました。

具体的には、
「2003年のグルジア(ジョージア)の ”バラ革命”」
「2004年のウクライナの ”オレンジ革命”」
「2005年のキルギスの ”チューリップ革命”」のことを指しています。

2003年 グルジア(ジョージア)の ”バラ革命”

2003年11月、グルジアで議会選挙が実施され、シュワルナゼ大統領を輩出した与党「新しいグルジア」が勝利しました。しかし、野党側は「不正選挙」だとして大規模デモを開始。最後には力で議会を不法占拠し、大統領を辞任に追い込んでしまいました。

この時、シュワルナゼ大統領は、政変の背後に世界的投資家であるジョージ・ソロス氏とアメリカの諜報機関CIAの存在があったと指摘。このことは当時の時事通信でも報道されました。

つまり、ソロス氏は自身の「オープン・ソサイエティ財団」の支部をグルジアの開設。この支部から反政府系のNGOに資金を還流させて反政府活動の資金としてバックアップすると共に、アメリカCIAは水面下で反政府活動を統括し、陽動、扇動活動に邁進していたわけです。

バラ革命の背景は非常に複雑ですが、突き詰めれば石油パイプライン(BTCパイプライン)をめぐる、アメリカとロシアの対立がそもそもの原因となっています。

2004年 ウクライナの ”オレンジ革命”

ウクライナでは2004年11月に大統領選が行われ、親ロシア派のヤヌコヴィッチ氏が勝利しました。ところがここでグルジアの「バラ革命」と同じことが起こります。

対立候補のユシチェンコ陣営から「選挙に不正があった」と声が上がり、彼を応援する欧州安全保障協力機構やアメリカ共和党国際研究所もこれに同調する動きを見せ、不正選挙を糾弾する大規模デモも起こるようになりました。

こうなっては、一旦は勝利したはずのヤヌコヴィッチ大統領も再選挙に渋々と同意。そして結果はと言えば、ユシチェンコ氏が52%の得票率で逆転勝利したわけです。

「東」に大国ロシアが控え、「西」にはEU陣営の一国であるポーランドに隣接。ウクライナは地政学的に絶妙な位置付けにあります。NATOとEU側は既に旧ソ連諸国のバルト三国を加盟させることに成功しており、ロシアにしてみれば喉元までに敵が迫ってきたことを意味します。

そんなウクライナは西欧諸国とロシアにせめぎ合いの場と化しており、ここでもアメリカが中心となってウクライナの政府転覆を画策したわけなのです。

2005年 キルギスの ”チューリップ革命”

最後はキルギスです。2005年3月の議会選挙は、現職アカエフ大統領率いる与党「進めキルギス」の圧勝で幕を閉じました。しかし、ここでもグルジアの「バラ革命」、ウクライナの「オレンジ革命」と全く同じことが起きてしまうのです。

案の定、野党側が選挙のやり直しと大統領退任を求め、大規模デモを引き起こしました。

しかし、キルギスの場合はグルジアやウクライナの場合と少し様相が異なり、アカエフ大統領は背後にアメリカが居座っていることを十二分に理解していました。したがって、このまま選挙を闘っても勝ち目はないと早々に見切りをつけ、ロシアに亡命したことで「チューリップ革命」は異例のスピードで成就してしまったわけです。

イランは ”カラー革命” と同じ運命を辿る

2000年代に立て続けに起こった「カラー革命」の背後には必ずアメリカが絡んでおり、ロシアとのエネルギーをめぐる利権争いや、安全保障をめぐる複雑な闘争があります。

そして、これらの革命にはすべてにおいて決まったパターンが存在するのです。

・大統領選や議会選挙で反米勢力が勝利する。
・野党は「不正選挙」だと主張し、市民による大規模デモが起こる。
・デモを沈静化させるため再選挙が行われる。
・再選挙で親米勢力が勝利する(⇒ 革命成就!)

これこそが、アメリカが他国に対し「革命」を誘発させ、親米政権を打ち立てるための ”必勝パターン” です。

つまり、選挙で反米勢力が勝利したのを見計らい、諜報機関(CIA)が反米市民らを懐柔、陽動、扇動し大規模デモに発展させる。
その際、親米NGOなどを隠れ蓑にして多額の金を反米勢力側に還流し、世論をさらに親米勢力側に傾け、再選挙を行わせるといったやり方です。

そして、これと全く同じ状況がイランでも起きています。

経済的に困窮したイランでは、ソレイマニ司令官が殺害される前から反政府デモが頻発するようになりました。そして、実際に司令官が殺され、しかもウクライナ機を誤って撃墜したことから、それらのデモはにわかに勢いを増しました。

これらの動きにアメリカの諜報機関が関与しているのは明白です。上に示したトランプ大統領のツイートが何よりの証となります。

1953年 イランのクーデターにアメリカが関与

しかも、イランに関してはアメリカには ”前例” があります。
1953年にイランでは軍事クーデターが起こり、これによりモサデク首相は失脚、その後の親米であるパーレビ国王が実権を掌握する礎となりました。

この一連のクーデターに関し、今ではアメリカの中央情報局(CIA)とイギリスの秘密情報部(SIS)が関与していたことがアメリカの公文書でも明らかになっており、2009年にオバマ大統領もクーデターの関与を認めているのです。

◆ 出典記事 ◆
『イランの53年政変はCIA主導、初の公式文書確認 米大学』

~2013.8.22 CNN~

今後、イラン国内ではこれまで以上に反政府デモが頻発し、その規模は我々の想定を遥かに超えるものとなるでしょう。つまり、「イラン革命」が再び起こる可能性が極めて高い状況になっているということ。

アメリカとイランの関係は緊迫した状況が続いていますが、いわゆる戦争は起こらないと考えられます。イランは民衆ではなく、アメリカに仕掛けられた「イラン革命」によって政権が崩壊する可能性があります。

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