【シリーズAI】技術的特異点(シンギュラリティ)はやってきます

テクノロジー

『2045年問題』

つまり、人類はSFの世界でいうところのシミュレーション現実を生きるようになるのです。アニメでいえば『攻殻機動隊』シリーズに出てくる少佐こと草薙素子は肉体を捨ててネットの世界に没入しました。

シミュレーション現実の最も分かりやすいイメージは、まさに映画『マトリックス』で描かれるマトリックスでしょう。しかもそれが、肉体なしに成立できる状態です。『マトリックス』の例でいえば、エージェント・スミスにとってのマトリックスがまさにそうです。

カーツワイルは、巨大なコンピューターができ、希望する人は意識を全部その中に入れて、そのなかで生活するようになるというのです。これを「マインド・アップローディング」と名づけています。

意識をコンピューターにアップロードしておけば、その後、肉体が死んでも、コンピューター上では行き続けることができます。肉体をもたないので、不死身の存在になれるのです。

ただし、死ぬ直前の意識では朦朧としているかもしれませんので、若いうちにアップロードしておくようにします。すると、肉体が生きている間は、肉体に付随した元の意識も残っていますので、コンピューターと肉体の2ヵ所に、ふたつの意識が存在することになります。この時、ふたつの意識が別々に経験を重ねると、人格もそれぞれ別のものになってしまいます。

たとえば、自分のクローン人間をつくったとして、元の自分とクローンではその後の経験の違いによって別の人間になるのと同様です。同時にふたつの人格が存在すると混乱をきたすので、コンピューターのほうの意識は、肉体が死ぬまでは保存しておき、死後にそのデータを起動するとよいかもしれません。

松田卓也『2045年問題 コンピューターが人類を超える日』(廣済堂新書)

技術的特異点はやって来る!?

技術的特異点」(シンギュラリティ)とは、コンピューターに象徴されるテクノロジーが人類全体の能力をはるかに超え、それ以降の歴史の進歩を予測できなくなる ”地点” のことでした。

未来のある地点でコンピューター技術が爆発的に発展し、それより先はコンピューターの行く末を人間が予測できなくなる。つまり、人間の予測がつかなくなるほどにコンピューターの能力が人類の知能を凌駕してしまう地点のことです。

前回の記事(『技術的特異点(シンギュラリティ)はやって来ない!?』)では、そのようなシンギュラリティはやって来ないといった説を紹介しましたが、神戸大学名誉教授・宇宙物理学者の松田卓也氏によれば、シンギュラリティは「やってきます!」。

それが「2045年」であるという意味において、冒頭に紹介した書籍『2045年問題』は衝撃的です。

松田卓也『2045年問題 コンピューターが人類を超える日』の衝撃

この『2045年問題』では、文字通り2045年頃にはコンピューターの能力が人類を超えてしまうことを示唆しています。
このことは人類にとって幸か不幸かは読者に委ねるとしても、2045年問題についてはこれを完全否定するわけにはいかないかもしれません。

人工知能が闊歩する未来社会は、必ずしも明るいとは限りません。
日本の場合、労働人口の約半数が、20年後までにロボットや人工知能(AI)と置き換えることが可能だとする調査結果もあります。
一般事務、医療事務、行政事務、経理事務のように「事務」と名の付くものは、そのほとんどが人工知能で代替が可能だというのです。

逆に医師、教員、芸術家といった、人間固有の技術と意思と感性が必要とされる職種は代替が難しいとされます。
もっとも、アメリカの道路交通安全局は、自動車に搭載される運転のためのAIを「運転手とみなす」との見解を出したようなので、本当に人間にしかできない職業と言うのはごくわずかなのかもしれません。

このことはつまり、コンピューター(AI)と人間との境界が限りなく曖昧になることを指すのではないか、ひいてはコンピューターが人間のような ”意識” を持つことも絵空事ではないのではないか、といったある種の仮定をも我々に投げかけてくるように思われます。

つまり、AIの進化とは、取りも直さずコンピューターにも ”意識” は芽生えるのか否か、といった根源的な大命題に繋がる可能性があるのではないかということです。

コンピューターに意識は宿るのか?

コンピューターに意識や意思が宿るのかという疑問を解消するには、人間の意識や意思とはそもそも何かという定義付けが必要となります。

ちなみに、脳科学者の茂木健一郎氏などは人間の意識や意思の実体を「クオリア」と命名し、様々な角度から研究を重ねてきたようですが、彼は自分が生きているうちはクオリアを解明するのは不可能だと、半ば匙を投げている状態です。

このことは2003年に出版された彼の著書、『意識とはなにか ――<私>を生成する脳』(ちくま新書)の中で、早くも白旗を投げたとも受け取れる記述をしています。

神経細胞の活動パターンとして記号のように安定して存在するものを成立させることは、構造的に見ても、ダイナミックスという観点から見ても、本来むずかしい。一〇〇〇億の神経細胞は、お互いに数千のシナプスで結合しあっており、ある神経細胞の活動は、それと結合しているきわめて多くの神経細胞の活動に依存している。

このような、強く結びついて影響を与え合う素子からなるシステムにおいて、まず要素として記号の表現を確立し、それらの組み合わせでシステムを構築することは本来困難だと考えられる。

茂木健一郎『意識とはなにか ――<私>を生成する脳』(ちくま新書)

将棋やチェスのコンピューター・ソフトが、その筋のプロを凌駕していますが、囲碁の場合はそれが難しいとこれまで考えられていました。
しかし、Googleが開発したAI「アルファ碁」が、2015年から2016年にかけてプロ棋士に連勝してしまったという現実もあります。

将棋やチェスにはある程度の定石が存在し、しかもルール上動かしようのない駒も存在することから、考え得る手のすべてを高速計算し、ベストな差し手を提示することは可能だと思われます。

しかし、囲碁の場合はそれに比べれば、差し手は無限大に考えられます。
通常はコンピューターの計算力がオーバーフローしても不思議ではないのですが、Googleの「アルファ碁」は盤面全体を「一つの絵画」として捉え、全体総合的に差し手を思考しているというから驚きです。
いずれ、コンピューターは人間のような「意識」を待つのではないかと思われても仕方がありません。

松田卓也教授が言及するシンギュラリティ、つまり『2045年問題』とは、コンピューターは意識を持てるのか否か、といった命題に深く結びついていると考えられます。

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