「駆けて、駆け、駆け抜けよう・・・」 安倍ポエムはどこから湧いて出てきたのか?

国内政治

Introduction:「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。
これまでも安倍首相による演説や発言は、各方面で物議を醸してきましたが、このロシア・ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」での演説ほど珍妙で、かつ馬鹿馬鹿しく、周囲をこれでもかというほど呆れさせたものは他にありません。
Twitterを始めとするインターネット界隈では ”ポエム” とまで揶揄され、嘲笑の的になりました。
このような演説とも言えない演説は、果たして安倍首相自身によるものなのでしょうか?
あるいは他に草稿を練った者がいるのでしょうか?

”スピーチライター” 谷口智彦・内閣官房参与

今回の珍妙なる ”安倍ポエム” の作者は、谷口智彦・内閣官房参与です。

東京大学法学部を卒業し、『日経ビジネス』記者、編集委員を経て外務省に入省。外務副報道官、広報文化交流部参事官を務めました。
現在は慶応義塾大学大学院で教授を務める傍ら、2014年より内閣官房参与の任に就いています。

つまり、登場したのはまたしても首相官邸の住人、”官邸官僚” である訳なのです。谷口氏は安倍首相のスピーチライターとしても広く知られ、今回の「駆けて、駆け、駆け抜けよう・・・」は彼の最高傑作と言えるでしょう。

その他にも、安倍首相が東京五輪招致のために行ったプレゼン「福島第一原発の汚染水は完全にコントロール下にある・・・(The situation is under control・・・)」や「Buy my Abenomics(アベノミクスは ”買い” です)」も谷口氏の ”作品” であると言われています。

確かに、谷口氏はコピーライターとしての才覚はあるかもしれませんが、首相のスピーチライターとしては実態とかけ離れた作為に走り過ぎる感は否めません。
しかも、「汚染水は完全にコントロール・・・」においては、安倍首相の発する ”嘘” に加担したと言うより、まさに当事者そのものであったということは、谷口氏の大きな罪であると言っても過言ではありますまい。

ちなみに、今回の「駆けて、駆け、駆け抜けよう・・・」については、その原型とも言うべき記事が存在していることが分かりました。

ヨイショするだけの見事な提灯記事

『月刊 Hanada』(2018年11月)に掲載の記事、「安倍総理は残り三年駆けて、駆けて、駆け抜ける」が、珍妙なる安倍ポエムの出典と見て間違いないと思われます。

この記事が面白いというか、くだらないのが小川榮太郎氏が谷口智彦氏をしきりにヨイショする箇所です。

・・・余談ですが、私が初めて谷口さんの存在を知ったのは、安倍総理が第二次政権に就いて一、二年目でしたか、食事の席で谷口さんのお話を聞いた際です。
「谷口さんのスピーチ原稿はうまいんだよ。外務省に書かせるとお役所的になっちゃうけど、谷口さんのは違う。練習で読み上げているときに、自分でも思わず涙ぐんでしまうんだ」と総理が仰った。

~ 『月刊 Hanada』(2018年11月)「安倍総理は残り三年駆けて、駆けて、駆け抜ける」 ~

読んでいるこちらの方が馬鹿馬鹿しく、涙ぐみたくもなる文面ですが、当然のことながら小川氏は安倍首相へのヨイショも忘れません。

その点、安倍総理は戦後初めて「対等な日米関係」を明確に打ち出しています。谷口さんのお仕事でもある、安倍総理の一連の外交スピーチにも、その姿勢がよく表れている。たとえば、アメリカ上下院合同会議での演説。私自身、この演説は何度か取り上げてきましたが、あれほど巧みに「敗者」「属国」という語り口を廃しながら、反省は歴史的高所から語るという演説は類を見ない。アメリカとの関係性において、安倍総理のスタンスは独創的であり、同時に日本の基盤にすべきものだと思います。
~ 『月刊 Hanada』(2018年11月)「安倍総理は残り三年駆けて、駆けて、駆け抜ける」 ~

このように、安倍首相のお友だちやインナーサークルの人間は、安倍首相と会食し、安倍首相を忖度し、そして、恥じ入ることなくヨイショを続けるようになるのでしょう。

日本とロシアの歴史を変え損ねた安倍外交

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この記事は安倍首相の ”お友だち” とも言うべく文芸評論家の小川榮太郎氏と、”官邸官僚” である谷口智彦氏との対談記事ですが、ロシア・プーチン大統領の「今、思いついた!年末までにいかなる前提条件もなしで、平和条約を締結しよう!」といった ”爆弾発言” 後に掲載されたのが大きなポイントです。

プーチンのこの発言もまた、2018年にウラジオストクで行われた経済フォーラムの席上で起爆したものですが、もし仮に、安倍首相がこの時に返す刀で「ウラジミール・・・2人で駆けて、駆け、駆け抜けよう・・・」と言ったなら、日露外交史は大きく変わっていたことでしょう。さすがのプーチンもこれに切り返すことは絶対不可能だからです。

ところが実際はそうはなりませんでした。

安倍首相はまるで知恵足らずの子供のように、ニヤニヤするほか術がなかったわけです。そして、1年も経った同じ経済フォーラムで「なあ、プーチン、俺と駆けて・・・」と持ち掛けたとてプーチンが反応するはずもなく、プーチンのみならず関係者や国民の大多数を白けさせて終わってしまったのです。安倍首相は馬鹿の見本のようです。

今やアメリカはいうに及ばず、対ロシア、対韓国、対北朝鮮といったように、安倍外交は無限後退を続けているにも関わらず、特に小川氏は安倍外交を評して、「戦後初めて主体的な外交を展開している」とまで言っています。
記事の中で、そんな安倍首相をしきりにヨイショする谷口、小川のご両人もそれに輪をかけた馬鹿と言う他ありません。

『月刊 Hanada』がダメな雑誌と言うつもりはありませんが、「安倍総理は残り三年駆けて、駆けて、駆け抜ける」は得ることの何もない、実につまらない安倍首相への提灯記事でした。

こういった記事を珍重する保守層は、一体何が良くて読んでいるのか分かりません。筆者には到底理解できない ”アナザーワールド” を垣間見た気分です。

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