コロナを終息させる「たった1つの方法」を「公衆衛生ムラ」が阻む日本の悲劇

国内社会
PCR検査は利権まみれ

Introduction:結論を先に言えば、新型コロナを終息させる唯一の方法は存在すると考えます。

それは「無症状感染者」をいち早くキャッチアップし、それに対し適切な処置をとること。究極的にはこれしかないはずです。

そして、これを実現するために活用するのがPCR検査であり、「いつでも・どこでも・何度でも」、しかも「安価」に実施できなければ意味がない。ところが日本の場合、PCR検査数が一向に増える気配がありません。それはなぜでしょう?

実は、それを阻んでいるのが「公衆衛生ムラ」なのです。ここにも日本の硬直し、融通の利かない、旧態依然とした ”利権体制” が蔓延しています。

「世田谷モデル」崩壊の危機!

今年の8月、保坂展人(ほさか のぶと)・世田谷区長が訴えたのは、「いつでも・どこでも・何度でも」PCR検査を受けられるようにする新型コロナに対する画期的な政策で、これは『世田谷モデル』として大きな注目を浴びました。

ところが、この『世田谷モデル』がここにきて暗礁に乗り上げています。

9月中には第1弾として、世田谷区内の介護施設職員約2万3000人に対し、症状の有無にかかわらずPCR検査を行う予定でしたが、”大きな壁” が立ちはだかりました。

肝心の大量検査の前提となる「プール方式」の目途が立たず、当初の想定より大幅に時間が掛かる見通しとなったためです。

この「プール方式」とは、4人程度の検体を1つの試験官に混ぜて検査し、陽性反応が出た場合に個別に再検査する方法です。検査の手間と費用を減らし、大量検査を可能にする合理的な方法で、既に韓国や中国の武漢でも採用されておりますが、一体この検査方法のどこに問題があるのでしょうか?

実はこの検査方法、実証実験の段階を出ていないという理由で、国費負担の条件に該当する「行政検査」として厚労省が認めていないのです。そのため、世田谷区では従来通りのPCR検査をせざるを得なくなり、そのため検査終了まで年内を過ぎてしまう状況になったわけなのです。

ソフトバンクは2000円検査を可能にしたが・・・

視察するソフトバンクの孫会長
千葉県市川市にある国立研究開発法人 国立国際医療研究センター国府台病院内に新設した「東京PCR検査センター」を視察するソフトバンクの孫会長(写真右)
Photo by :ソフトバンクニュース『検査費用は1回2,000円と実費負担のみ。「東京PCR検査センター」が本格稼働

9月24日、ソフトバンク・グループは、新型コロナに対する独自のPCR検査の受付を開始しました。この検査に掛かる費用は配送料を除き「2000円」と、自費診療の相場の「10分の1」程度にまで低く抑えられているのが最大の売りです。

検査手法や検査の精度は国立研究開発法人・国立国際医療研究センターが監修しており、施設も千葉県市川にある同センターの国府台病院内に「東京PCR検査センター」として新設されました。

この施設の特徴は、新型コロナウイルスの「唾液」によるPCR検査を専門に行う点にあります。検査内容を特化させることで、検査薬の仕入れや検査スタッフの稼働を大幅に効率化しました。また、対象者が自分で唾液を採取できることで、検査費用も低く抑えることが可能になったわけです。

現在は1日4000件程度の検査能力ですが、これを年内中に1万件にまで増やす予定です。安価な大量検査がこれで可能になったわけですが、ここにも ”大きな壁” が立ちはだかります。

実は、この施設の検査で「陰性」と判断されたとしても、「陰性証明書」を発行することができないのです。
また、「陽性」と判断された場合でも、それは「陽性の疑い」であって改めて指定医療機関での検査が必要となります。
つまり、この施設での結果は暫定的な ”前さばき”、あくまで「参考」にしかならないのです。

なぜ、「正式」な検査結果として認められないのでしょうか?
日本ではPCR検査は原則として医師や医療従事者が行う「医療行為」と定められているため、医師が正式に介在しない施設での検査結果は「参考」としてしか扱われないからです。もちろん、公的保険も適用されません。

日本の場合、歯科医にPCR検査ができる特例を設けた程度で、このような「医療行為」の担い手は増えていないのが現実なのです。

無症状感染者の対応がコロナ終息への唯一の方法である

テレビなどでは毎日のように感染者数が報道され、私たちはその数が「増えた、減った」で一喜一憂するといった不毛な日々を繰り返しています。

しかし、新型コロナの情報が溢れる中で、今や多くの人々は気がついているはずです。──それは、新型コロナを終息させるには、何といっても「無症状感染者」の対応が最も大切だということ。つまり、主たる感染拡大の担い手は、年齢に関係なく「無症状感染者」だからです。

そのためにはPCR検査が「いつでも・どこでも・何度でも」、しかも「安価」に行える体制が必要であり、「無症状感染者」が判明した時点で隔離するなどの対応を迅速に行えば、新型コロナが劇的に減るはずなのです。

そして、「いつでも・どこでも・何度でも」PCR検査を行うことは、「PCR検査数を極力増やす」ことに他なりません。
つまり、PCR検査を増やし「無症状感染者」の対応を行うことがコロナ終息への唯一の方法なのです。

このことは世田谷の保坂区長、ソフトバンクの孫会長も同じ考えを共有していると思われます。それが『世田谷モデル』や「唾液による2000円検査」といった形となって表れたのでしょう。しかし、硬直し、まるで融通の利かない、旧態依然とした日本の医療制度が ”大きな壁” となって立ちはだかっています。

イギリスのPCR検査能力は一日当たり「30万件」、アメリカに至っては「50万件」にも上っています。
その一方で、日本の検査能力は未だ1日当たり「7万件」程度でしかなく(上図)、しかも、その実態は8月に1度「5万件」を超えたことがあるだけで、ここ最近は1~3万件で推移しており、少ない日では3000件程度に留まる有様です(下図)

イギリスでは個人が自宅で検体を採取することを認めましたし、アメリカではドラッグストアで薬剤師がPCR検査することを認めております。しかし、日本では上述したようにPCR検査は「医療行為」という壁が一般人を寄せつけず、それがこのような歴然とした数字の差異となって表れています。

”公衆衛生ムラ” がPCR検査を牛耳っている!

これは私たちの命にかかわる重大な問題です。
なぜ、たかだかPCR検査ごときに様々な制度の壁が立ちはだかり、一向に検査数が増えないのか?
──それは、公衆衛生ムラが存在するからです。

PCR検査を例にすると、「厚生労働省」を頂点に「国立感染症研究所(感染研)」「保健所」「地方衛生研究所(地衛研)」といった、言わば ”公衆衛生ムラ” がPCR検査を取り仕切っている、つまり、これらの組織がPCR検査を独占することを「感染症法」によって規定されているために検査数が一向に増えないのです。

PCR検査については、その中心となっているのは感染研であると言われており、感染研が「疫学調査」という名目で行うのが建前です。世界中で多くの感染者が出ているにも関わらず、日本ではPCR検査は名目上はあくまで学術調査の一環でしかありません。

それでもさすがに今となっては、民間の医師がPCR検査することを認められるようになりましたし、民間医療機関の検査でも健康保険を適用する動きが出てきています。しかし、「感染症法」の規定があるために、そうするためには民間の医療機関などは「感染研からPCR検査の業務委託をされた」という形をとる必要があり、煩雑な手順と長い時間を掛けて申請に臨まなくてはならないわけです。

もちろん、この「感染症法」については、様々な方面から改正の必要が叫ばれていますが、一向に進展する気配がありません。なぜなら、PCR検査をめぐり認可そのものが一つの ”利権” になっているからです。

結局は ”公衆衛生ムラ” 利権である!

つまりは、こういうことです。

感染症法により、PCR検査を統括し実施するのは、厚労省傘下の感染研、保健所、地衛研であるとあらかじめ規定されており、毎年国がそれぞれの機関に予算を配分しています。

しかし、今回のコロナ禍により、様々な民間機関がPCR検査を初めとする分野に参入してきたらどうでしょう?
既存の研究機関としては、おそらく心中穏やかではないはずです。なぜなら、そのことによって、これまでの予算配分に変化が生じるかもしれないからです。

感染研、保健所、地衛研の面々は、広く民間機関がPCR検査を行うことで自分たちの予算が減らされることを何よりも気にしています。よって、彼らは大きな変化を望んではおりませんし、端的に言って、PCR検査を自分たちで独占し、民間に広く実施させたくないのです。これがPCR利権の正体です。

京大の山中教授も指摘するように、PCR検査は大学でも十分実施が可能ですし、1日当たり1~2万の検査も可能であると言われています。しかし、既存組織の面々はこうした動きにも消極的です。大学は文部科学省の管轄となり、縦割り行政の壁もあることから予算配分についてもさらに面倒な問題を抱えるでしょう。このことから、大学の研究機関へのPCR検査の広がりはほとんど期待できないと思われます。実際、加藤厚労相も萩生田文科相も、この問題について歩み寄り調整した気配は見られません。

コロナを終息させる「たった1つの方法」と「公衆衛生ムラ」に関するまとめ

PCR検査を増やし「無症状感染者」の対応を行うことがコロナ終息への唯一の方法となります。そのためには「無症状感染者」の隔離場所(医療機関、ホテルなど)についての体制づくりを行い、そのための補償金も予算建てし、風評被害に対するケアも講じなければなりません。
そして何よりも、PCR検査数を可能な限り増やすのが必須条件です。

しかし、PCR検査を取り仕切る「厚生労働省」を頂点とした「国立感染症研究所(感染研)」「保健所」「地方衛生研究所(地衛研)」といった公衆衛生ムラは、”PCR利権” を絶対に手放したくないことから、日本では未だにPCR検査数が増えてゆかないのです。

そのため、現在行っているのは新型コロナ対策は決して「無症状感染者」の追跡ではなく、多くの時間とマン・パワーを費やした ”不毛なクラスター潰し” でしかありません。そして、これすらも既に限界にきていることから、テレビの前の私たちは「感染者が増えた、減った」というだけの、これまた不毛な報道を毎日見せつけられる羽目になるのです。

そんな中で、日本政府の今やっていることと言えば『GO TO キャンペーン』といった、これも利権にまみれた政策です。

日本政府が新型コロナ対策を大きく転換しない限り、これらの負のスパイラルは今後も半年、1年、あるいはそれ以上の期間にわたって繰り広げられることでしょう。

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