Introduction:なぜゆえに日本のPCR検査はこうも少ないのか? 安倍首相はこの根源的かつ基本的な疑問に全く答えられません。
PCR検査は数が多ければ良いというものではありませんが、日本の場合、あまりに検査数が少なすぎて科学的なジャッジができないでいます。
実は、PCR検査の重要性は10年も前から警告されていた事なのです。しかも、安倍政権はそのことについて行動計画を策定しておきながら、いざ緊急事態の段になると頓珍漢な行動を取り続けました。
結局、政府によるコロナ対策の不手際は ”身から出た錆”、安倍首相の ”一人相撲” だったのです。
尾身茂氏は10年前の警告を無視した?
なぜゆえに日本のPCR検査はこうも少ないのか?
専門家会議はこのことについて3つの理由を挙げています。
- 保健所が業務過多で多忙である。
- 陽性者の収容先の確保が困難になる。
- 防護服が不足している。
つまり、80年代から始まった公衆衛生の行政サービスの見直しや、90年代の法改正により機能が半減している「保健所」に政府の準備不足のしわ寄せ襲いかかり、ただでさえ業務過多の保健所がパンクした状態(医療機関で言えば ”医療崩壊” の状態)にあるということ。
そして、仮に検査を増やせば陽性者が増えるのは眼に見えており、その場合、陽性者を収容する医療機関やホテル等の確保が大変だ。それにそもそも、検査しようにも防護服が足りない、といったところなのでしょう。──要するに、(これは最も基本的なことですが・・・)この期に及んでもPCR検査の体制が整っていないのです。
しかし、このことは実は10年前から「警告」されていたことが、ここにきて明らかになっています。
2010年6月、厚生労働省の有識者会議は、
『とりわけ、地方衛生研究所のPCRを含めた検査体制などについて強化するとともに、地方衛生研究所の法的位置づけについて検討が必要である』
といった文書を公表していたことが分かったのです。
地方衛生研究所(地衛研)とは、都道府県や政令指定都市が持つ保健衛生研究機関で、今回の新型コロナ感染ではPCR検査のほどんどをこの機関が担ってきました。そして、上記の文書ではこの地衛研の体制拡充を強調しているでのです。
この有識者会議には、現在の新型コロナに関する専門家会議副座長の尾身茂氏も、メンバーの一人として名を連ねていました。
しかし、5月4日の専門家会議では、PCR検査が広がらない理由について何点か見解が表明されたものの、10年前の警告については意図的かどうか定かではないのですが、無視された格好になっています。
加藤厚労相の発言は噴飯ものである!
PCR検査の体制については、これまでどのような経緯を辿ってきたでしょうか?
- 3月下旬:1日約7,000件の検査能力に対し、実際の検査件数は1日約2,000件
- 4月下旬:1日約15,000件の検査能力に対し、察際の検査件数は1日約8,000件
安倍首相は4月6日には「1日20,000件の検査体制」を謳いましたが、PCR検査能力は5月になっても1日7,000~8,000件レベルに留まっています。
また、イギリスのオックスフォード大学の研究者らによる ”Our World in Data” によれば、5月6日時点の人口1,000人当たりの累計検査数では、各国と比較しても日本が群を抜いて低い水準にあることが分かります。
- 日本:2.42件
- アメリカ:23.52件
- イタリア:38.22件
そんな中で出てきたのが、加藤厚労相の言葉です。
『目安ということが一つの基準のように捉えられた。我々から見れば ”誤解” でありますけれども・・・』
”目安として示しただけで強制ではなく、4日間自宅待機というのは国民が勝手に考えたことで、これは ”誤解” ですよ” と、加藤厚労相は言いたいのでしょう。
しかし、いわゆる「4日間ルール(37度5分以上の熱が4日間続いて──)」は広く知れ渡った共通認識になっていました。そして、実際に4日間の自宅待機を要請された場合もあり、それが原因であると思われる死亡者もいるわけです。
「国民が悪く解釈するのがいけなかった」とする加藤厚労相の発言は、そのような犠牲者に対する不見識極まりない発言と言う他なく、本来はこの10年間しっかりと対応してこなかった政府の不作為を含め、謝罪するべきところでしょう。
PCR検査の能力不足は安倍政権の能力不足を映し出している
検査件数が検査能力に及ばない理由は、技術者や検査キットの確保に手間取り、採取された検体の輸送も難しいためだ。分析機関に輸送する際は、保冷剤とともに密閉して3重の梱包(こんぽう)をすることが必要。48時間以内の輸送が困難な場合はマイナス80度以下の冷凍保存も求められる。対応できる業者は限られ、手配がスムーズにできないという。
~2020.05.11 毎日新聞『PCR、「警告」生きず 企業や病院、自衛試み 「検査強化必要」10年前に文書』~
80年代から公衆衛生サービスの合理化が始まり、1994年(平成6年)に「保健所法」が全面改正されたことで保健所の数は激減しました。現在は法改正前の半分程度の水準まで落ち込んでいます。
このようにして起こった保健所機能の後退が、上記の毎日新聞の記事に示す保健所の人的パワーや、基本的な検査体制を著しく削いだ原因と考えられます。そして、10年前にこのことが指摘されても改善されることはなかったのです。PCR検査の能力不足の原因の全てがここに濃縮されています。
実は、2010年6月の厚生労働省の有識者会議の報告を受け、当時の民主党政権は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を国会に提出、2012年に成立させた経緯があります。
そして、2012年12月には安倍晋三総裁率いる自民党が政権奪取に成功、第二次安倍政権は翌2013年6月に「行動計画」を策定。この計画の中に、PCR検査体制に関する記述があるのです。
- 未発生期
- 海外発生期
- 国内発生期
- 国内感染期
- 小康期
この「行動計画」では──
「1.未発生期」段階で、国は自治体にPCR検査等の実施体制を要請し、技術支援を行う。
「2.海外発生期」段階で、国は自治体との連携を強化し、PCR検査体制を速やかに整備する。
──といった事が定められています。
しかし、実際に安倍首相が行ったことは、日本が「3.国内発生期」の段階に突入した2月1日になってようやく、「2.海外発生期」の指示を出していたということ。ここでも対応が後手後手になっているのです。
そして、この時期に安倍首相がやっていた事と言えば、中国人観光客の日本への熱心な誘致でした。
つまり、中国国内で多くの感染者や死者が出てもなお、安倍首相は中国人観光客の日本への誘致にご熱心、外務省のHPを通じ中国人観光客を ”広く募っていた” のです。
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法案を可決したり、計画を策定したりすることは愚かな首相であってもできることです。愚かでないことを証明するには、行動でもって結果を出さなくてはなりません。そして、その結果が広く国民に認められることこそが首相の「指導力」となります。よって、「指導力がない」とする世論調査による安倍首相への評価は、その意味でまったく正しいと言えます。
結局のところ、安倍首相は自ら策定した行動計画のことなど、まるで忘れたかのようにコロナ対策で不作為を繰り返しています。これこそがまさに ”身から出た錆” 、愚かな安倍首相による無様な ”一人相撲” だった、ということです。
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