Introduction:産経新聞によれば「立憲民主党」と「国民民主党」が合体して ”左傾化” した政党が出現するようです。
実に興味深い見方ですが、実際にはそんな事にはなりません。
「左」をキーワードにするのであれば、左派ポピュリズムを体現する「れいわ新選組」であり、それを率いる山本太郎です。
だいたいにおいて日本では「ポピュリズム」が誤読されているので、今回はそれを解説いたします。
ちなみに「立憲民主+国民民主」は支持がさらに降下し、その役割を終えます。
民主党が左傾して帰ってくる?
立憲民主、国民民主の両党などが合併協議に入り、旧民主党勢力が1つの政党として再結集する可能性が高まってきた。安倍晋三政権に対抗できる野党の誕生は政治に緊張感を取り戻すうえでも必要だが、今回の再結集は、旧民主党がそのまま復活するわけではない。かつて政権を担った旧民主党よりも、ずっと重心が「左」に傾いた統一野党として戻ってくる可能性があるのだ。
~2019.12.18 産経新聞 THE SANKEI NEWS
「【野党ウオッチ】民主党が左傾して帰ってくる」~
12月18日の産経新聞に興味深い記事が掲載されました。最近の立憲民主党、国民民主党の合併協議に入り、旧民主党が一つの政党としてまとまる可能性が見えてきたためです。
この動きを受けて、産経新聞は野党の「左傾化」の匂いを嗅ぎ取ったようですが、その根拠として次の3つを挙げています。
- 共産党との共闘に忌避感がなく、過去3回にわたって国政選挙で候補者調整などの協力関係を築いてきた。
- 外交・安保分野で、リアリズム志向の保守系有力議員が次々に離脱していった(細野豪志、長島昭久など)
- 統一野党は立憲民主党が主導権を握ると見られ、これに社民の議員らが加わると、益々左傾化すると考えられる。
社民党については衆議院2名、参議院2名の勢力であることから統一野党に対して影響力は限定的と考えられ、「左傾化」ということであれば、やはり共産党の動向が大きなカギを握っているのではないかと思われます。
共産党はれいわ新選組に活路を見いだしている
その共産党は今年の9月、志位委員長がれいわ新選組の山本太郎と野党共闘をめぐり、共同記者会見を開いていることは見逃せません。
その記者会見での、志位委員長の発言には3つのポイントがありました。
- 野党連合政権をつくるために協力すること。
- 安倍政権が進める憲法9条改憲には反対すること。
- 消費税増税の中止、消費税の廃止を目標にすること。
この3つのポイントの中でとりわけ重要なのは、何と言っても「1.野党連合政権」に他なりません。そして、これに合わせ志位委員長は過去の野党共闘について重要な発言をしています。つまり「国政での野党の選挙協力はこれまで3回積み重ねてきたが、政権の合意はなかった。政権構想を明らかにしてこそ本当の野党共闘の力を発揮できる」と断言したのです。
日本共産党は現存する政党の中で、政権に就いたことのない最も古い政党ですが、今や共産党は本気で政権を欲しているものとみて間違いないでしょう。よって、共産党と共闘するには必ずや政権交代を旗印にしなければ、共産党は本気モードにならないのです。
その点、日頃から「首相になる!」「政権を取る!」と公言して憚らない山本太郎はうってつけです。
よって共産党は、次は「政権交代」を賭けた総選挙になることを志向していると考えられます。
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『2019年「政権交代」は山本太郎と共産党によって起こされる』
立憲民主、国民民主は永田町の理屈で動いているだけ
2017年の衆院選において、大方の予想を裏切り大健闘したのが「立憲民主党」でした。
若者たちの「枝野立て!」の掛け声により、野党第一党の党首となった枝野氏は一見すると彼らの代弁者のように見えましたが、その支持は日を追うごとに尻つぼみになりました。
というのも、枝野氏の動きは国民民主党との主導権争いといったように、従来の永田町の理屈の範疇を出ておらず、”僕らの声を聞いてくれる人ではない” といったことに若者が気づいてしまったからだと考えられます。
事実、立憲民主党の支持母体は今も「連合」ですし、連合の手を借りて政治活動を行ってもいます。それを今さら国民民主党と一体となり、近々行われるであろう衆院選を乗り切る腹積もりであっても、求心力が高まろうはずもありません。
立憲民主党と国民民主党の合併は、それが左傾化云々では全くなく、永田町の理屈で行われる選挙対策であって、それ以上でも以下でもない、それはいつもの政治風景。有権者にはかつての「民主党」に先祖返りしているように映り、支持はむしろ失ってゆくのではないでしょうか?
「左傾化」という言い方はダサい
「左傾化」という言い方は、もちろん「右傾化」に対する言葉ですが、では「右傾化」が一般化したのはいつ頃であったかを考えるに、それは小泉政権まで遡る必要があろうかと思われます。
当時の小泉首相によって展開された ”小泉劇場” は、新自由主義経済を日本に流布させることで、若者を雇用や結婚といった生活設計で深刻なリスクを背負わせ、「勝ち組」「負け組」といった社会風潮を生み出しました。
そして、そのリスクは「自己責任」の名のもとに、個人の生き方によって私的に解決することが要請されました。多くの若者は椅子取りゲームのような社会で右往左往した挙句に「負け組」という弱者となり、そんな弱者であっても彼らが連帯することはありませんでした。
しかし、そのような「負け組 ≒ 弱者」も小泉劇場のようなメディアのヒートアップに晒されると、熱狂的な連帯を生み出すことがあります。普段は公的な事柄に無関心な彼らが忽然として ”過政治化” し、熱狂的な盛り上がりをみせるのです。
小泉政権時に一般に認識されるようになった ”右傾化” とはこのようにして生み出され、その過激分子は例えば ”在得会(在日特権を許さない市民の会)” のような形に姿を変え、現在に至っているわけです。
こうしてみると、産経新聞が形容する「左傾化」という言葉は実態に即していないばかりでなく、「右傾化」と並んで古臭く、ダサい言葉であることが分かります。
左派ポピュリズムが日本で台頭する?
もし山本の登場が数年早ければ、ポデモスに期待した SEALDs の学生たちにとっての最良のパートナーは山本だったのではないか。スーツを着るのは国会の中が中心で、街頭には颯爽とデニムジャケットで登場し、コンバースのスニーカーを愛用する。主張だけでなく、ファッションをとっても彼らが求めていたスタイリッシュな政治家を体現している。
~Newsweek日本版 2019.11.5号 『山本太郎 = ポピュリスト?』(石戸諭)~
スペインの左派ポピュリズム政党「ポデモス」
ポデモス(PODEMOS)とは、2014年にスペインで結成された政党で、政治思想としては急進左派と評する向きもありますが、現在においては「左派ポピュリズム」という評価で問題なさそうです。
党首はパブロ・イグレシアス( Pablo Iglesias )
現在41歳の彼は、かつては大学で政治学を教える教員をしており、著述活動やテレビでの政治討論番の組司会もこなすと言います。長髪で大衆の前にジーンズ姿で登場するあたり、現代的で若者受けするクールな雰囲気があります。
党名の「ポデモス(PODEMOS)」とは、英語で言えば「We can」であり、日本語では「私たちはできる」という意味。
ポデモスは、スペイン上院において17議席(定員208)、下院においては48議席(定員350)を占めるなど、3番目の政党としての位置付けです。2014年の結成からすれば、これば大躍進です。
左派ポピュリズムとは何か?
さて、この「ポピュリズム」について、私たちはどのように捉えるべきでしょうか?
日本ではポピュリズムを「大衆迎合主義」といったように批判的な捉え方をされていますが、本来はそのような意味ではなく、政治学でもネガティブなものとしては見なしていません。
ポピュリズムとは、一つには「人民重視」または「大衆ファースト主義」
二つには「反権威主義」
つまり、誰かが独占している富や支配構造を打ち破る、という思想です。
よって、この思想には「右」も「左」もありません。産経新聞の言う「左傾化」では語れないのです。
ここであらためて「左派ポピュリズム」を定義しましょう。
ポピュリズムとは、社会が「汚れなき人民」と「腐敗したエリート」という敵対する二つの陣営に分かれると考え、政治とは人民の意志であると主張する柔軟で、政治的ダイナミズムを生み出すイデオロギー。 |
上の例で言えば、「汚れなき人民」を山本太郎とするならば 、「腐敗したエリート」とは、紛れもなく自民党と官僚組織となるでしょう。
そんな対立する二者に対して、人民である私たちが ”緩やかに” 繋がって山本太郎を支援する。まさに山本率いる「れいわ新選組」の構図そのものなのです。
立憲民主党や国民民主党が一体となり「左傾化」するとは、何ともお笑い草です。彼らは一体化することで、かつての「民主党」の記憶を人々に呼び起こし、さらに支持を下げることになります。
代わりに台頭するのは左傾化ではなく、「左派ポピュリズム」のフラッグをとった山本太郎になるはずです。
次の総選挙では、間違いなく山本太郎が台風の目となることを、ここで予言しておきます。
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