Introduction:「緊急事態宣言」について油断は絶対に禁物です!
なぜなら緊急事態宣言には恐ろしい「裏メニュー」が存在するからです。このことは大部分の国民には知らされておりません。
その意味では、今回の安倍首相による宣言は、安倍強権政治を実現するための ”観測気球” だったと考えられます。
やはり安倍首相は憲法に「緊急事態条項」を実装させ、国民を統制する方向に舵を切るための憲法改正を目論んでいるのかもしれません。
最後には多くの人が緊急事態宣言を待ち望んだという奇妙な現象
4月7日。夜の首相官邸では記者会見が開かれ、安倍首相は「緊急事態宣言」を発令しました。対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県。期間は5月6日までです。
既に多くの方が認識しているように、この緊急事態宣言については法的強制力というのは限定的で、もちろん欧米各国で展開されているようなロックダウン(都市封鎖)はできません。
公共交通機関についても日常通り動いていますし、人々の行動についても強制的に制限することはできず、基本的には自粛を ”お願い” するといった形をとっています。
当初、緊急事態宣言については、自民党が平成24年に公表した日本国憲法改正草案に盛り込まれている「緊急事態条項(第98条、99条)」とオーバーラップしてしまったことで、緊急事態宣言による人権侵害や権力の乱用といったことが危惧され、多くの反対の声が上がったのは事実です。
しかし、実際に蓋を開けてみると法的な強制力を持つのは医療施設開設のための建物や土地の強制接収、医薬品の調達や保管に関するケースに限られ、その他については強制力はないことが分かりました。むしろ当初の思惑とは裏腹に、野党の方からは「宣言が遅すぎる」といった声も上がるなど、奇妙な逆転現象が起きました。
国民の中にも「緊急事態宣言とはこの程度のものか」といったように安心し、さらには油断している向きも少なくないと思われますが、それはいささか危うい認識かもしれません。自民党がこの程度で矛を収めるはずがないからです。
緊急事態宣言の「裏メニュー」
一般の人々はほとんど目にすることがない出版物の一つに「官報」が挙げられます。「官報」とは、政府が一般国民に知らせる事項を編集し、毎日刊行する国家の公告文書です。
そして、3月26日付の官報(号外)に、興味深い記述がありました。
この官報の「目次」を見ると〔政令〕の改正として次のような記述があります。
〇 新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(六〇) |
前述した通り、緊急事態宣言ではロックダウン(都市封鎖)をすることはできませんでした。しかし、安倍政権は「政令」を改正することにより、実はロックダウンすることができる権限を手にしていたのです。
それが、官報に記された感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の改正だったわけです。
例えば、改正対象となった感染症法 第33条は、元々次のような条文でした。
第33条(交通の制限又は遮断) |
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都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。 |
ちなみに、条文にある「一類感染症」とは、ペスト、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱など、最も毒性の強い病原体を指し、国際的にもバイオセーフティーレベル4(BSL4)の研究施設でしか取り扱うことができません(※)
※「バイオセーフティ」とは、病原体を取り扱う研究施設のランク付けです。人に対する病原体の危険度をレベル1〜4段階(BSL:バイオセーフティレベル:1〜4)に分類し、レベル4を最高危険度の病原体として位置づけています。
なお、日本国内のバイオセーフティーレベル4を有する研究施設は「国立感染症研究所」の1箇所のみです(理化学研究所もバイオセーフティーレベル4の資格がありますが、現在の運用はレベル3に留まっています)
そして、今回の感染症法の改正について、官報には次のように記されています。
官報の記載方法は分かりにくい面もありますが、今回の場合は感染症法で定める「一類感染症」に「新型コロナウイルス」を含めるという内容になります。そして、先に紹介した33条の他にも下記の条文が改正対象となっています。
第32条 | 生活用水の使用制限 |
第32条 | 建物に係る措置(建物の立入制限等) |
第33条 | 交通の制限又は遮断 |
第44条の2 | 実施する措置等に関する情報の公表 |
第44条の3 | 感染を防止するための協力(健康状態の報告、外出自粛等の要請) |
第44条の5 | 都道府県による経過報告 |
ロックダウン(都市封鎖)が可能になっている!
【改正後はこうなる】
- 第31条:生活用水が新型コロナウイルスに汚染された場合、政府は給水の制限、または停止することができる。
- 第32条:特定の建物が新型コロナウイルスに汚染された場合、政府は建物の立入を制限、または禁止することができる。
- 第33条:新型コロナウイルス汚染され消毒でも防ぎきれない場合、政府は72時間以内であれば周辺地域の交通網を制限、または停止することができる。
第31条~33条の改正後の補足については上記記の通りですが、実はこれらの政令の改正により、政府がひとたび新型コロナウイルスに感染していると判断すれば、水道水を止め、建物への侵入を禁止し、道路や鉄道そして空港も含めたあらゆる交通網を遮断することが可能となるのです。
そして、このことはロックダウン(都市封鎖)の権限を政府が手中に収めたことを意味しています。これこそが、今回指摘する緊急事態宣言の「裏メニュー」なのです。
しかも、この政令には罰則まで設けられています。これに従わなかった場合、50万円以下の罰金が科せられます。
でも、仮にロックダウンできたとしても、第33条では72時間(3日間)という制限もあるし、騒ぐほどの問題なのかしら?
それはもっともなご指摘です。
しかし、結論を言えば「大問題」であると言わざるを得ません。
確かに感染症法の第33条を見る限りでは72時間という縛りもあるし、この法を一般的に解釈するならば、延長をするのは困難なはずです。
しかし、ここで注目していただきたいのは、感染症法「第44条の4」です。
第44条の4 | 国は、新型インフルエンザ等感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため、特に必要があると認められる場合は、二年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより、当該感染症を一類感染症とみなして、第二十八条及び第三十一条から第三十三条までの規定並びに第三十四条から第三十六条まで、第十二章及び第十三章の規定(第二十八条又は第三十一条から第三十三条までの規定により実施される措置に係る部分に限る。)の全部又は一部を適用することができる。 |
2 | 前項の政令で定められた期間は、当該感染症について同項の政令により適用することとされた規定を当該期間の経過後なお適用することが特に必要であると認められる場合は、一年以内の政令で定める期間に限り延長することができる。当該延長に係る政令で定める期間の経過後、これを更に延長しようとするときも、同様とする。 |
感染症法では、仮に都市をロックダウンした場合、「第33条」によって「72時間(3日間)」までといった制限があります。
しかし「第44条の4」ならびに「2」に目を転じてみると、ロックダウンは「2年間」もの期間にわたり適用することが可能になっており、しかも必要であると認められれば更に「1年延長」することが可能なのです。驚くべきはこの再延長は何回でも可能になっていること。
──つまり、ロックダウンは理論的には「無限に延長することが可能」という建付けになっているのです!
国民に知らせず隠れて政令改正を実施!
政令改正については、ビデオジャーナリスト 神保哲生氏が主宰する『ビデオニュース・ドットコム』に詳細が紹介されている。
驚くべきは、政令改正に至るまでの経過です。
今回の政令改正については国民に知らされることなく、しかも国会で審議されることもなく、”閣議決定” により改正が決まってしまったのです。
しかも、この閣議決定が開かれた3月26日は元々閣議は予定されていなかった日でしたが、わざわざ閣議を行い、そして翌日の27日は施行させている。──そこまでして政府が急ぐ理由は一体何でしょうか?
安倍首相は「緊急事態宣言では欧米のようなロックダウンはできない」といった旨をことあるごとに ”しおらしく” 語っていたことを思い出します。しかし、裏では国民に隠れ、いかにも早急に怪しげな過程を経て政令の改正を行っている。何かしらの明白な意図があるのは間違いなく、それは日本国憲法に緊急事態条項を実装させるための「憲法改正」以外にあり得ないのです。
毎日新聞は8日、社会調査研究センターと共同で緊急世論調査を実施した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて安倍晋三首相が緊急事態宣言を発令したことを「評価する」との回答が72%を占め、「評価しない」は20%だった。発令時期については「遅すぎる」70%、「妥当だ」22%。政府に対し、より迅速な対応を求める声が強いようだ。
~2020.04.09 毎日新聞 『新型コロナ 緊急宣言「評価」72%、「遅すぎる」70% 毎日新聞緊急世論調査』~
国会の安倍首相による緊急事態宣言は、憲法改正への ”観測気球” だったのではないでしょうか?
以前から悪評が高かった緊急事態宣言の内容をあえて緩めの内容に設定し、国民を安心させることにより国民の意識面でのハードルを下げておく(実際、世論調査ではなかなか評判が良かった)その後、感染症が蔓延する中、社会のどさくさに紛れて憲法改正への道筋をつける。いかにも安倍首相ならびに、その周辺が考えそうなストーリーではあります。
この期に及んでもなお安倍首相は、国民の救済というよりは自身のレガシー作りに余念がないように見えます。
今回はウイルス感染といった社会不安を背景に、日本国民は安倍首相の思惑にまんまと騙されかねないのではないかと非常に危惧しています。
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