国会バリアフリー化へ! ~国会は障碍者と共生できるのか?

国内政治

Introduction:体に重度の障碍がある舩後康彦氏、木村英子氏が「れいわ新選組」から参院選へ向け立候補し、晴れて当選したことは今や日本中で広く知られるようになりました。

そして、この二人が当選したことを受け、7月26日、毎日新聞と東京新聞が国家の「バリアフリー化」について、早速1面で取り上げています。

二人は今後、どのような形で国会議員として活動してゆくのでしょうか? そして、どのような問題が待ち受けているのでしょうか?

国会議事堂の入場については対策不十分

8月1日に臨時国会が召集されますが、この日が舩後・木村両氏を始め、今回の参院選で当選した議員にとっての初登院の日となります。

二人とも24時間の介護が必要な重度の障碍者で、また、使用している車椅子も通常よりも大きなタイプとなっていますので、国会に受け入れるにはそのような状況に即した対応が求められています。

登院1日目、国会議事堂の中央玄関には専用のスロープが設けられ、舩後・木村両氏は玄関をくぐり、自分の氏名の表示板のランプをつけてもらうことになります。そして、その後はいったん外に出て、国会議事堂の向かって右側にある参議院議場の、さらにその裏口から国会内に入ることになります。

Photo by : 2019.7.26
毎日新聞

このことについて、一旦「中央玄関」を通って国会に入ることは大きな意味を持ちます。

中央玄関が開かれるのは国会の召集日初日、当選議員が初登院する場合や天皇陛下をお迎えする場合、また国賓の来訪時に限られているからです。
つまり、新人議員にとっては感慨深く、それだけ大きな意味も持つために、このような配慮がされたようです。

ただし、中央玄関を入った先にある階段や、議員が普段入場する際に使われる「正玄関」については、現在のところスロープの設置が困難と判断されたため、上述したように舩後・木村両氏は ”裏口入場” を強いられるわけなのです。

結論を言えば、今回の臨時国会では、障碍者の入場について対策が施されることはなく、今後の検討課題となっています。

重度障碍者に寄り添わない法律と、足を引っ張る政治家

Photo by : 2019.7.26
東京新聞

参議院本会議場の座席については、出入り口に近い三人分の座席を、大型の車椅子に合わせた二人用の座席に改修されることになり、初登院となる8月1日までには回収作業が終わる予定です。

それでも、課題はまだ残っています。
例えば、国会内の廊下の切れ目には数センチの段差があり、そこを車椅子で通過する際にはある程度の衝撃を受けますし、床に敷かれた「赤い絨毯」は毛足が長く、車椅子を取りまわすのに負荷が掛かります。

また、参院本会3階に多目的トイレを設置することや、公用車に福祉車両を用いることなどは検討課題となっており、対応が決まっておりません。

そして、さらに大きな問題が取りざたされています。
舩後さんも木村さんも、寝起きから水飲み、食事、排せつ、入浴、外出といったあらゆる日常生活の局面において24時間の介助が必要な方々です。

参院選での当選により、 舩後・木村両氏は晴れて政治家としての「職業」を得たことになったわけですが、障害者総合支援法では本人負担最大1割で日常生活の介助を受けられるところ、ひとたび「職業」を持ってしまうと、仕事中に受ける介助費は全額本人負担か雇用主の負担になるというのです。

国は障碍者が社会に参入することを後押しすると謳っておきながら、実に摩訶不思議な制度設計をしたものです。
幸いにも、二人に必要な介助費用を参議院が当面負担することに決まったようですが、このことに噛みついた政治家が存在します。

日本維新の会の松井一郎代表は、7月30日に次のようなツイートをしています。

舩後・木村両氏のような方々が、職業を持った場合、介助費は雇用主の負担となる。国会議員である彼らの場合、雇用主とは紛れもなく主権者である国民なのですから、国会議員として活動する際の介助費は税金から賄われたとしても、法解釈としては十分に成り立つはずです。

本来は、松井氏のような政治家がその辺を議論し、制度を確立してゆくべきなのですが、「一部の障碍者だけが優遇されるのはおかしい」といった短絡的な思考しか持ち得ないことが、松井氏の政治家としての資質のなさを十二分に物語っているかのようです。

8月1日、舩後・木村両氏は登院しないかもしれない?

重度の障碍をもつ舩後・木村両氏は、参議院は介助費用を負担する特例措置により、これまで通りの介護サービスを受けながらの議員活動が可能になりました。

しかし、彼らの本来の願いは、国が介助費用を負担する抜本的な制度の改正です。
そのようなこともあり、8月1日については臨時国会に出席しないことも検討しているようです。

また、二人の政治家としての活動については、現在、次のようなツイートが物議を醸し出しています。

このツイートについては「いいね」の数が8/1時点で約5万件、リツイートの数も約2万3千件で、7月30日の東京新聞「こちら特報部」でも大々的に取り上げられるなど、その波紋は今も広がっています。

政治家が障碍者の ”代弁者” の役割をまるで果たしていない中で、では、障害者が議員となり、実際の「政治のプレイヤー」になることは、果たして ”迷惑行為” なのでしょうか?

日本で普通選挙が行われたのは1925年(大正14年)のことでしたが、女性に参政権はありませんでした。当時の男性たち、特に権力層は女性を能力が低い者として蔑視し、上記のツイート主のように女性が政治に関わるのを ”迷惑” だと考えていたのでしょう。

障碍者の声を代弁するのが政治家であるという考えに異論はありませんし、それは ”善意” であるかのように見えますが、ひとたび障碍者が政治家になってしまうと、それは ”迷惑行為” と見なす人間が、確かに一定数存在するのです。

しかし、そのような考えは上述した松井一郎氏も含め、 ”正義を振りかざす偽善” なのではないでしょうか?

舩後・木村両氏をめぐる事例には、今後も様々な意見が噴出するでしょう。大切なのは、障碍者が国会議員も含めた社会進出する意味を考え、社会整備を進めてゆくことだと確信しています。

コメント

    • 陸奥雷
    • 2019.09.20 5:24pm
    二人が政治家として、どれだけの成果を出すかは置いといて。あの二人が、毎回国会中継に出る、毎回他の議員が目視する機会ができる、というそれだけで、先ずは第一歩進んだと言って良いかと。記事にある課題問題を、表出させただけでも成果と思ってる。

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