「自粛警察」安倍政権の分断工作に踊らされる日本人

国内社会

Introduction:「自粛警察」の正体とは何か? ここには非常に深い問題が隠されています。

中途半端で緩い「緊急事態宣言」では、当然自粛に従わない業者も出てきます。

そんな状況を尻目に ”倒錯した正義” を発露し、ストレス発散をしている輩が「自粛警察」である。多くの方がそのように考えているかもしれませんが、「自粛警察」は我々の想像とは全く違った存在なのかもしれません。

「自粛警察」は、本当に国民の中から自然発生したのでしょうか?
私たちは安倍政権の分断工作に踊らされているのかもしれません。

エドワード・スノーデンは何を暴露したのか?

映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』(監督:ローラ・ポイトラス)には、エドワード・スノーデン本人が出演している。第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞。

圧政的な国家は大量監視活動こそが最も重要な支配ツールのひとつだと考えるようになる。いつも冷静沈着なドイツのアンゲラ・メルケル首相でさえ、NSAが何年にもわたって彼女の個人携帯電話の盗聴をしていたと知ったときには、オバマ大統領と直接話し、アメリカの監視活動をシュタージ ──彼女が生まれ育った旧東ドイツの悪名高い国家保安省── にたとえて猛烈に批判した。メルケルは、アメリカはコミュニストの支配体制と同じだと言ったわけではないにしろ、NSAでも、シュタージでも『一九八四年』のビッグ・ブラザーでも、パノプティコンでも、威嚇的な監視国家にとって最も重要なのは、眼に見えない権力によって常に見られているかもしれないという意識を人々に植えつけることに変わりはない。

グレン・グリーンウォルド『暴露 スノーデンが私に託したファイル』(新潮社)〔263ページ〕
※太文字は筆者による

アメリカが ”自由の国” であることは今となっては ”都市伝説” です。ジョン・エドガー・フーヴァーがFBI長官であった時代(もっとも、それは1930年代から1970年代まで続きましたが)は、共産党員でもない限り一般人は監視の対象とはなりませんでしたが、現在はテロ対策の一環として普通に市民の日常生活は監視されていますし、治安維持の効果もあるとして一部の市民の間では、むしろこれを歓迎しているふしもあります。

そのような中、エドワード・スノーデン(※)による数多くの暴露の一つが、例えばアメリカ国家安全保障局(NSA)による海外要人への盗聴だったりするわけです。特にドイツのメルケル首相への盗聴騒ぎは大きな波紋を呼ぶことになりましたが、その背景にあるのは彼女が旧東ドイツで英才教育を受けており、彼女の父親も熱心な ”共産主義者” であったから、──そんな話もまことしやかに囁かれました。

”赤狩り” といった言葉に代表されるように、ここにアメリカの基本的なメンタリティーが横たわっていると見て、まず間違いはないと思われます。

エドワード・スノーデン(1983.6.21生)
アメリカ国家安全保障局(NSA)、中央情報局(CIA)の元局員。アメリカ合衆国政府による情報収集活動に従事していたが、その後、NSAによる国際的監視網の存在を暴露。これにより監視国家アメリカの恐るべき実態が明らかとなり、世界的なセンセーションを巻き起こした。現在はロシアに亡命中。

シュタージは何を監視していたのか?

メルケル首相が生まれ育った旧東ドイツは ”監視国家” としても広く知られていました。エスカレートした監視社会は、西側諸国に通じたスパイ摘発と西側への逃亡を防ぐため国民に ”密告” を奨励。実に国民の7人に1人がこれに協力しました。

親しい隣人の盗撮や、夫婦が互いに監視し合うなど、兄弟はおろか親子同士であっても監視し合い、実質的な ”秘密警察” である国家保安省、通称『シュタージ(STASI)』へ密告するケースが相次ぎました。ここでは人間性の破壊が進行していたのです。

東ドイツが崩壊し、それまで隠されていた情報が暴露されたとき、国家の犠牲になっていた人々は、実は自分を売ったのが自分の友人だったり、挙句の果てには自分の身内だったことを知るに至ります。この冷酷な事実に呑み込まれ、耐えきれなくなった人々は自ら命を絶ちました。

分断して統治せよ!

戦略思想家である奥山真司氏に言わせれば、覇権国が他国に対して影響力を保持しておきたいと考えた場合、採用される典型的な戦略が「分断統治(divide and rule)」であり、それは他国の内部勢力同士を分断し戦わせておくことで弱体化を図る手法だと指摘しています。

例えばイギリスが実際に採用した戦略として、アイルランドをカトリック(南)とプロテスタント(北)に分断する、インド(ヒンズー教)からパキスタン(イスラム教)を分離するといったことなどが挙げられます。

そして、このことは国外のみならず国内においても十分に有効なのは言うまでもありません。日本でもかつては「赤狩り」の名のもと、一般人も巻き込み共産党員に弾圧を加えた時期がありました。これなども十分に分断統治と言えるでしょう。

そして、「分断」という意味で言えば、現在の日本はこの弊害がかなりのレベルで進行しているのが分かります。

古くから低学歴者と高学歴者の分断があり、平成の ”失われた30年” で中間層が激減し、一部の富裕層と貧困層の分断となって深刻化。今では特権を有する(と思わざるを得ない)ごく一部の高学歴富裕層とそれ以外の人々の分断は、いつしか ”上級国民” といった流行語すら生み出しました。

「自粛警察」が出現する土壌は醸成されている

非常事態宣言に名を借り、嫌がらせや誹謗中傷を繰り返す連中がいます。

営業中の店舗に「非常事態なのにまだ営業ですか?」と張り紙を張ったり、「コロナ拡大防止に注意しながら営業しています」といった店側の張り紙に「×」を書いたり中傷の言葉を書き込んだりする。挙句の果てには県外の自動車に傷をつけて回るといった事例も報告されています。

この ”正しくないこと狩り” にいそしむ「自粛警察」も、言うまでもなく分断の象徴で、彼らの正しいとする行為は本質的には ”魔女狩り” であることに彼ら自身が気がついておりません。

しかし、よく考えれば、今回の緊急事態宣言は法的拘束力も限定的で、基本的には ”自粛” がメイン。欧米のような補償とセットになった強力な強制力は持ってはおらず、”大阪のパチンコ店” といったように、必ず自粛要請に従わないケースが現れるのは当初から想定されていました。

このような中途半端で緩い緊急事態宣言は、国民に負担とストレスを与えるに留まらず、不必要な「妬みや」「嫉妬」「歪んだ正義感」を生み出しても不思議ではありません。確かに、自粛警察が生み出される土壌は醸成されています。

ユビキタス監視により人々をコントロールする

それにしても「自粛警察」なるキャッチ―なフレーズは、一体誰の発案でしょうか?

日本人は簡潔で短いキャッチ―なフレーズに感化されやすい傾向があります。先ほどの ”上級国民” しかり、夏になれば ”クールビズ” といった言葉が流布しますし、最近のコロナ禍では ”三密” です。

つまり、日本ではキャッチ―なフレーズが流行し社会に定着すると、得てして日本人の行動パターンにも大きな影響を及ぼすことがあるということ。これは海外でも見られる現象ですが、日本の場合は特にそれが顕著であるように思われます。流行語が時代の気分を言い表すだけでなく、行動原理の根拠にすらなり得る場合が見受けられます。

先ほど紹介したエドワード・スノーデンの暴露本『暴露 スノーデンが私に託したファイル』には、現代思想家ミシェル・フーコーの著作を引用した興味深い記述があります。

フーコーは著書『監獄の誕生──監視と処罰』ではさらにこう分析している。ユビキタス監視は監視機関に権力を付与し、人々に服従を強制するだけでなく、個人の内に監視人を生み出す効果がある。コントロールされていることにも気づかず、人々は無意識のうちに監視人が望むとおりの行動を取るようになる

グレン・グリーンウォルド『暴露 スノーデンが私に託したファイル』(新潮社)〔262ページ〕
※太文字は筆者による

フーコーの著作に関しては若干の説明が必要です。しかし、これは「百聞は一見に如かず」の世界です。つまり、「ユビキタス監視」とは何かが分かれば、この文面は理解できます。

「パノプティコン」の一例

ユビキタス監視とは、上述した「パノプティコン」のことです。そして「パノプティコン」とは、最も効率的な監獄であると言えます。それは要するに、看守小屋が中央に位置しており、囚人の部屋は看守の小屋を円状にぐるりと取り巻くような建築設計になっているのです。

これにより、看守は360度ぐるりと見渡せば囚人を一望することができますが、本当に囚人を監視しているかについては大きな問題ではありません。ここで重要となるのは、囚人に対し「常に看守によって監視されている」と錯覚させることができることです。

この効果により、実に興味深いことではありますが、”囚人の内面に監視人を出現させ、囚人は看守が望むような行動をとってしまう” という現象が起きるのです。

自粛警察の正体とは?

日本人の基本的メンタリティーの一つは何かと言えば、それは「常に自分は人目に晒されている」という感覚でしょう。会社員は上司の顔色を窺い、同僚からどのように見られているかを気にしますし、小学生ですら ”いじめ” の標的にならぬよう、場の空気を読むことに必死です。

今現在、世間を騒がせている「自粛警察」とは、必要以上に周囲の目を気にする自意識過剰者が担い手なのかもしれません。そんな連中が、危機的状況において世間の目を振り切り、自身の存在価値を発露したいと思うのであれば、それは ”正しくないこと狩り” といった彼らなりの ”ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)” にすがるしかありません。

そして、こういう言い方もできます。
「自粛警察」を気取る自意識過剰者は、誰かが始めた「自粛警察」を真似て自分も「自粛警察」になったのだろう、ということです。

映画『新聞記者』での内調の役割とは?

藤井道人監督、松坂桃李、シム・ウンギョン出演の映画『新聞記者』では、内閣情報調査室(内調)の職員が Twitter を使って特定の個人を誹謗中傷するといったネガティブキャンペーンを張るシーンが出てきます。これにより、特定の個人に対するイメージを変え、世論をミスリードしようとする企てです。

実際の内調はそのような活動はしませんが、このシーンは一つの可能性を示唆しています。つまり、政府の情報機関の工作員が実験的に「自粛警察」を行ったらどうなるか? といった点についてです。

おそらく、模倣犯が次々に現れるのではないでしょうか?

安倍政権の分断工作に踊らされている!?

「自粛警察」は、本当に国民の中から自然発生したのでしょうか?

  1. 政府機関が密かに「自粛警察」を行う。
  2. メディアに「自粛警察」を報道させる。
  3. 「自粛警察」模倣犯が次々に出現する。

上記1.~3.は仮説に過ぎませんが、それでもこのことによって、これまで自粛に応じない店なども最終的には自粛に応じざるを得なくなります。つまり「国民を自粛させる」効果は確実に高まるのです。なぜなら、日本人は世間の目を非常に気にするからです。

つまり、中途半端で緩い「緊急事態宣言」しか出せず、補償もろくにせず企業や店が倒産しても責任を取らない政府にとって「自粛警察」は実にありがたい存在なのです。

なぜならば、「自粛警察」が政府の意向を ”忖度” し、命令しなくとも自主的に活動してくれるからです。まさにこれは森友問題・加計問題で見せつけられた官僚の ”忖度” と構造は全く同じであることが分かります。

まるでパノプティコンの囚人のように、看守(=政権)が望むような行動をとっている哀れな存在。これが「自粛警察」の正体です。
もしかしたら、私たちは安倍政権に踊らされているかもしれません。

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